お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2020.01.27

ガン治療の救世主・・ポリビニルアルコールについて

先週、”のり”が放射線を利用した新しいガンの治療方法に使用され、驚くべき効果をあげたと報じられました。この”のり”の主成分はポリビニルアルコール(以下PVAと略します)であり、実は塗料とも多少のかかわりがありました。今日はこのPVAの話を書きます。

「多少のかかわりがありました」と過去形で書いてしまいましたが、「日本では」と但し書きがいるかもしれません。PVAの用途のひとつに、「酢ビ(酢酸ビニル)エマルションに使用される界面活性剤」があります。日本ではもう塗料に使用されることがなくなった酢ビエマルションですが、海外では、特に中国や東南アジアでは、まだ建築塗料の主力として活躍しています。

 この酢ビエマルションは、アクリルエマルションに比べて耐水性が弱く、このため日本では塗料用途に使用されなくなりましたが、ひとつだけアクリルエマルションには負けない特徴があります。それは顔料濃度を極限まで高くできるということです。顔料を多く含有しても割れにくいのです。耐水性があまり要求されない室内用途の塗料が多く使用される国では、こうした酢ビエマルションの用途がまだまだあるのです。

 ところで、今回注目されているPVAの作用は、ホウ素(B)をガン細胞内に取り込まれやすく、留まりやすくして、放射線照射の効率は高めることと言われています。そしてこの現象は小学校の理科の実験にでてくる「スライム」と同じものだと説明されていました。

 この現象を簡単に言ってしまえば、「PVAとホウ素の架橋反応」となるのですが、実はそれほど簡単ではなく、一緒に存在する物質や条件(アルコール、各種イオン、PHなど)によっていろいろと変わるようで、PVAとホウ素の架橋反応が共有結合によるものなのか水素結合によるものなのか?はたまたこの時のホウ素は四配位なのか三配位なのか、PVAの構造(タクシシティ)の影響は?というような論文がいまだに発表されています。

 水性・常温条件で容易に反応しくれるこの架橋反応を塗料に応用できないかなと思わず考えてしまいました。

コメント

コメントフォーム

To top