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かんとこうブログ

2024.09.03

台風は左巻である、の深い話

これを書いているのは9月1日日曜日の午前9時で、まだ台風10号が紀伊半島沖にあってこれからも大雨が各地に被害をもたらすであろうと言われている時間帯です。このはた迷惑極まりない台風について何か書いてやろうと思い立ち調べてみました。予定したテーマは「台風はなぜ左巻き(北半球)なのか?」と「台風を弱体化させる方法」でした。ですが、「台風はなぜ左巻き(北半球)なのか?」は調べてみるとかなり深い?話であるように思えました。簡単に「コリオリの力によるものです」とさらりと書いて終わりにできる話ではないと思いましたので、この「台風はなぜ左巻き(北半球)なのか?」を掘り下げてご紹介したいと思います。

台風が右巻きか左巻きかがなぜ重要かと言えば、台風の風の強さが台風の右側か左側かで異なるためです。台風の進路報告に向かって右側の方が風が強いというのはよく知られていますが、どのくらい違うのかというデータが気象庁にありました。

伊勢湾台風や、室戸台風といった超有名な大型台風における風の強さの分布が書かれており、確かに右側(東側)の方が強さも強く、強風の範囲も広いことがわかります。この説明としては、台風自身の風と台風を移動させる周りの風が同じ方向に吹くので風が強まり、逆に左(西)側では逆方向に吹くので相殺されて弱まると説明されています。

気象庁には、これ以外に台風の渦の巻き方について、「はれるんライブラリー」という質問コーナーに2つ関係する質問と回答がありました。

「台風の右側はなざ風が強いのか?」については上の説明と同じですが、渦の巻き方については反時計回り(左巻き、左回り)であることとそれが地球の自転の影響によるもので、北半球では風が吹く方向に対して右に曲がる力を受けるためと説明しています。自転の影響による右に曲がる力とは、もちろん「コリオリの力」です。

とここまでは御存知の方も多いと思いますが、ではなぜ「コリオリの力」が北半球では風が吹く方向に対して右に曲がる力として働くのか、となると説明できる方は少ないのではないかと思います。

「台風 左巻き」で検索すると沢山のサイトがヒットします。代表的なものが以下のサイトで解りやすい図でしたので引用させていただきました。

赤道上、北半球、南半球のそれぞれで、(地上付近で)吹き込む風が、コリオリの力(北半球の図では緑の矢印)をうけて、方向を変化させながら上昇気流と書かれた台風の中心に吹き込む(北半球の図ではオレンジ色の矢印)かを表したものです。北半球では、常に吹き込む風に対し、風の進行方向にむかって右向きの力が働くためは台風は左巻きになります。

という説明で納得された方は次を飛ばして下へ行ってください。「何でコリオリの力が北半球では右方向に働くのか?」知りたいと思った方は、以下のサイトをご参照願います。実はこのコリオリの力があらゆる方向から吹く風に対してなぜ右向きに働くのかを説明するのには、かなりのスペースが必要であり、ほとんどを引用しなくてはなりませんので、それであれば直接見てもらう方がよいのではないかと思いました。参照いただくのは以下のサイトを推薦します。私が見た中では、「コリオリの力と台風について最もわかりやすく説明されていると思います。

https://tokinoe.net/typhoon_-coriolis-3066.html

   

以下本線から外れて脱線します。実は調べているうちに、上のコリオリの力とは異なるメカニズムで説明されているのを見つけました。以下ご紹介します。

   

   

この説明は直感的に理解しやすい説明です。地球の自転においては緯度によってその周速が異なっており、高緯度(北半球で言えば北極付近)の方が遅く、赤道付近が速い。台風においてもおの北部分と南部分で速度差が生じ、台風の中心から見ると南側では西から東へ、北側で東から西へ力が加わることで台風が反時計回りになると説明されています。南半球はその逆になるわけで一応矛盾なく説明されています。大阪市立博物館の方も同じ説明をされていました。

   

さらにもっと激しい意見で「「コリオリ力」なんて用いない」と書いている方もいらっしゃいました。以下引用です。興味にある方はご参照ください。

   

流体力学は,渦の生成を「流体内部の速度差」が元の乱流発生に帰す。「コリオリ力」なんか用いない。実際,熱帯低気圧/台風の渦 (北半球なら左巻き) は,メカニズムの本当のところはわからないが,つぎのように「流体内部の速度差」で説明できることである

http://m-ac.jp/weather/_phenomena/typhoon/counterclockwise/index_j.phtml

さらに、静止衛星から撮影した台風の写真と教科書に使用される台風の断面図から生じた疑問を気象台に問い合わせた顛末を紹介したものもありました。どういう疑問かと言えば、「衛星写真を淡々と見れば風が左回りに中心に吹き込んでいるようにも見えるが台風の断面図(右下)では、台風上空の吹き出しは右回りになっており、もう一度衛星写真を見ると上空において風が右回りに吹き出してるようにも見える」ということでした。また、「コリオリの力はあくまで地上にいるからこそ感じられるものであり、宇宙で静止している衛星からは見えないはずではないのか」ということでした。

このコラムを書かれたのは金沢こども科学館の学芸員の方ですが、これらの疑問を金沢気象台に問い合わせた答えも紹介されていました。

衛星写真については、「断面図における上空吹き出し風による雲と地上付近の積乱雲を比較するとより地上付近の積乱雲の方が濃度が高く、はっきりと写るということ、すなわち衛星写真は主に地上付近の雲の様子を表している」ということがひとつ。宇宙からもコリオリの力が見えるのかについては、「静止衛星は地球上の定点上空に留まるため、地球とともに地球上空を飛行(回転)しているので、地上と同じようにコリオリの力を観察することができる」のだそうです。

さらには、台風が左巻きになる理由については「高気圧から低気圧にまっすぐに吹き込もうとする「気圧傾度力」という力と、コリオリの力の釣り合い(合力)によって生まれる「地衡風(ちこうふう)」の向きが、風の吹き込む方向を決めるのですが、これは本来なら気圧線と平行になるはずが、地表ではコリオリの力と地表との摩擦力のためコリオリの力が弱くなり、その影響で左向きの渦になる」だそうです。

やはり左巻きになることについてコリオリの力は大いに関係していますが、それ以外にも要因がありそうです。台風は左巻きというのは実は深い!と言わざるを得ません。

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