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かんとこうブログ

2024.12.24

業況観測アンケート11月の需要分野別前年比の考察

今年もブログの更新は残り4回となりました。あんまり良いネタが見つからない中で、気になっていたことを書きたいと思います。それは、業況観測アンケ―トの11月度の重要分野別の前年比の数値についてです。気が付かれた方もいらしゃるかもしれませんが、少し通常ではあり得ない数値になっています。下表をご覧ください。

11月の全体にの出荷金額前年比は99.6でした。一方、各需要分野の前年比を見るとこの数値を上回るものはひとつもありません。ここで挙げられている需要分野は、見たところ塗料需要全体のかなりの部分を占めていますので、調査の対象外となっているこれ以外の需要分野がよほど好況でないと99.6にはならないのではないかと思いました。

日塗工に確認しましたところ、「集計は間違っていない」ということでした。全体の金額前年比が、各需要分野のどれよりも高いことについては、「各社からの元データにおいて、各需要分野と全体の値とが整合していないケースがありえる」ということでした。つまり、「各需要分野の合計が全体の値と必ずしも一致するわけではなく、集計していない分野がよほど好況や不況であれば調査対象の需要分野の荷重へ陰金が全体の値と整合しないことが起こりうる」ということだそうです。

腑に落ちませんでしたので、計算してみることにしました。もちろん毎月のデータは教えてもらえませんので、概算するしかありません。幸い塗料の需要分野別の出荷金額の内訳は過去のデータがあります。2022年のデータでちょっと古いですが、これを使用することにしました。

日塗工の業況観測アンケートで集計しているのは、建築外装、自動車、船舶・重防食、電機・機械・金属、木工の5分野です。2022年の出荷金額内訳を使って、この5分野の割合を以下のように仮定しました。

建築資材と自動車補修の扱いがわからないので、2通り作ってみました。ケース1は両方とも集計の対象としないケース、ケース2は二つとも対象とするケースです。2024年11月も需要分野のシェアがこの割合だったと仮定すると、業況観測アンケートで集計の対象となっているのは、ケース1で全体の75.7%、ケース2で84.2%になります。

それぞれの分野の前年比はすでに出ていますので、上図のシェアを使えば、対象である分野だけの加重平均(需要分野の合計:①)がでますので、まずその数値とすでに公表されている業況アンケートの全体金額の数値を比較してみることにします。さらに集計の対象とならない分野の前年比の推計値(その他分野の前年比④)を計算してみようと思います。2023年11月から2024年11月までの13か月分について下式を用いて計算してみました。

計算結果は以下のようになりました。最初は需要分野の合計と業況アンケートの全体金額の数値の比較です。これはケース1,2ともよく一致しています。全体の7割、8割のデータが共通なので当然とも言えます。

次に集計していないその他分野の前年比のついての推定値と業況アンケートの全体金額の数値の比較です。

山谷の傾向は比較的よく一致するものの、集計していない分野の推定値はだいぶ業況観測アンケートの全体の値とは差があるデータであることがわかりました。特に2024年11月(グラフの右端)はその他需要が前月から増加であるのに対し、業況観測アンケートの全体の値は下降です。

とは言え、これだけでデータの信頼性を議論する根拠にはなりません。そこでケース2について、2024年1月から11月までの集計対象外のその他分野の推定値と各需要分野の前年比をグラフにしてみました。

青棒は業況観測アンケートで公表されている各需要分野の前年比で、オレンジ棒が対象外の分野の推定値です。図中少し濃い色になっているのは、各需要分野の最高値と最低値の範囲を示しています。見ていただきたいのは、オレンジの集計対象外の推定値です。これが他の分野の前年比の範囲から外れている月が4つあります。1月、3月、6月と11月です。すなわち11か月のうち4回も対象外の分野の推定前年比が、他分野の前年比とくらべて突出した値になっているということです。8月、9月も範囲外に近い数値でした。しかしながら、こうした月の中でも今回の11月の突出ぶりが最も顕著です。さらに11月のように業況の全体値(各グラフ右端の値)が、各需要分野前年比の範囲を外れるケースは他の月ではありませんでした。

以上から、やはり11月の業況アンケ―トにおける各需要分野別の前年比と全体の前年比との整合性については疑問視せざるを得ないと思います。集計作業そのものに誤りがないとすれば、提供されたデータに矛盾がある、すなわち影響力がある程度の大きさのデータにおいて各需要分野の前年比と全体の前年比が著しく乖離しているということになるのではないかと思います。

私は、この業況観測アンケートの数値は大変重要な数値と考えています。その理由は、これが最速で提供される需要分野の動向を示すデータだからです。このデータに疑念が生じるようであれば、日塗工のデータ全体の信頼性が揺らぎかねないのではないかと老婆心ながら心配しております。

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