かんとこうブログ
2024.12.26
今年更新された陸上競技の日本記録
今年もあと少しとなりました。ブログの更新も明日でおしまいになりますが、そんな貴重なラス前に個人の趣味ネタを持ってきた良いのかというご意見は承知しておりますが、これは言わば宿痾ともいうべきものゆえ、なにとぞご容赦ください。今年更新された日本記録を一覧表で示します。日本陸連のサイトから引用させていただきました。ここではオリンピック、世界選手権で実施されている種目に限定しています。
以下極めて個人的な見解に基づく解説です。
男女800mの日本記録はいずれも高校生によって更新されました。この種目の高校生による更新は、私の調べた限り、男子は前例がなく、女子は戦後では1985年の新井文子さん(群馬女子短大付属高)以来二人目です。単なる日本記録更新というだけでなく、落合選手は1分45秒の壁を、久保選手は2分の壁をそれぞれ突破という偉業を成し遂げました。このふたりが今後どこまで記録を伸ばしてくれるのか楽しみです。なお久保選手はサッカー日本代表の久保健英選手のいとことしても有名です。
男子のマイルリレーも、昨年の世界選手権の雪辱を見事に晴らしてくれただけでなく、インドに奪われていたアジア記録も取り戻してくれました。近年層が厚くなってきている印象がありますので、今後も期待できそうです。
砲丸投げの奥村選手の更新は6年ぶりの更新で初の19m台に乗せました。まだまだ世界からは遠い種目ですが、切磋琢磨してレベルを上げて行って欲しいと思います。
35Km競歩の川野選手の記録は単なる日本記録だけでなく世界記録でもあります。この種目は、おかしな思惑でオリンピック種目として今年のパリから採用されて種目であり歴史も浅いということもありますが、世界記録は無条件に立派です。川野選手パリ五輪では、個人種目で出場できず男女混合リレーで入賞しました。来年の世界選手権は個人種目でメダルを狙ってほしいと思います。
女子100mハードルの福部選手は着実にレベルを上げてきています。この種目は金沢イボンヌ選手の記録13秒00が19年間破られずに残っていましたが、2019年に寺田明日香選手が突破すると次々に12秒台に突入する選手が現れてレベルアップし、今では代表争いがとても激しくなっています。このまま切磋琢磨してレベルを上げて行って欲しいと思います。
女子円盤投げの郡選手、ハンマー投げのマッカーサー選手はそれぞれ、60mと70mの大台に乗せました。まだまだ世界には遠い種目ですが、レベルを上げて行って欲しいと思います。
女子マラソンの前田選手は、止まっていた時計の針を動かしました。2001年に高橋尚子さんが初めて2時間20分を切って以来、2004年に渋井陽子さん、2005年に野口みずきさんが立て続けに更新しましたが、その後は更新する選手が現れず、新谷選手の惜しい挑戦もありましたが、19年間時間が止まっていました。その間世界は遠くへ行ってしまった感がありますが、これを機に全体でレベルアップしていってくれることを期待したいと思います。
上表の右端は、世界陸連(IAAF)のスコア(下記接続先からWorld Athletics Scoring Tables of Athletics - Outdoorを探してクリックしてください)です。すべての種目に記録‐スコア換算表が用意されており、種目に関わらず、その記録のレベルがわかるようになっています。世界へ出て戦うためには1200以上が目安になります。今年更新された日本記録の中で、この条件に適うのは、男子競歩、マイルリレー、女子マラソンということになり、いずれも日本が期待する種目となっています。
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一方で長い間時計が止まっている種目もあります。古い順に男女5種目を書き出してみました。記録保持者にはいずれも懐かしい名前がならんでいます。
男子で最も古い日本記録は38年前の三段跳びの山下訓史さんの17m15です。これまで17m台は山下さんを含め3人しかいませんが、3人目の伊藤陸選手は2021年に17m00を記録しています。
2番目は35年前のやり投げの溝口和洋さんの87m60です。今年度ランキングトップの新井涼平選手は2014年に86m83まで肉薄したことがありますが、その後85mを超えた選手は出ていません。
続いて400mハードルの為末選手と200mの末續選手で、世界選手権の400m以下のトラック種目でメダルを獲得した日本人はこの二人だけです。いずれもスコアが1200台でレベルの高い記録ではあります。
最後は室伏選手、現在のスポーツ庁長官です。室伏選手の記録のスコアは1278でありこれまで見てきた中で最も高くレベルの高さがわかります。今から21年前の記録ですが、これが破られるのはかなり難しいことのような気がします。
女子で最も古い日本記録は走高跳の今井美希さんの1m96で23年間破られていません。今井さんの時代はレベルが高く、佐藤恵さん、太田陽子さん、福光久代さん、青山幸さんと言った選手が1m90以上を記録していました。その後はもう20年以上1m90以上が記録されていないのではないかと思います。今年1m88を跳んだ高橋選手に期待したいと思います。
砲丸投げの森千夏さんの記録も20年前に記録です。惜しくも早逝されたためこの記録に留まっていることが本当に残念です。これまで17m以上を記録しているのは森さんと豊永陽子さんだけであり、すべて20年以上前の記録になります。
女子400mも16年前の記録です。今年度ランキングトップの松本選手の52秒29は自己記録であり、歴代2位の記録でもあります。高校生で日本選手権を制して以来長い間活躍してきた松本選手が更に記録を伸ばしてくれるでしょうか?
3000MSCの早狩選手の記録も16年前になりました。9分40秒を切る選手は時々現れますが、なかなか更新できません。そして100mの福島さんの記録11秒21です。この間最も福島さんの記録に近づいたのは2022年の兒玉芽生選手の11秒24ですが、去年今年と精彩を欠きました。復活を期待したと思います。
古い女子の日本記録のスコアは1000台後半から1100台中盤が多く世界的にはさほどレベルの高いものではありません。是非早く更新してレベルアップしていってほしいと願っています。
来年は東京で世界選手権が行われます。日本選手の活躍とさらには日本記録の更新にも期待したいと思います。