かんとこうブログ
2025.01.08
うるち米ともち米の違い・・再びアミロースとアミロペクチンの話
お正月には日本人のほとんどがお雑煮を食べたのではないかと思います。餅はもち米を蒸かしたものを搗いて作られますが、うるち米ではなかなか餅にはならないようです。そこで一般に食するうるち米とどこが違うのか調べてみましたのでご紹介したいと思います。
答えを一言で言えば、今日のタイトルに書いた通り、組成の違い、より具体的にはアミロースとアミロペクチンの比率の違いということになります。このアミロースとアミロペクチンについては、昨年の今頃、わらび餅とくず餅の違いについて書いておりますので、そちらもご覧いただけると幸いです。うるち米ともち米の違いはネットで調べるとすぐに多くのサイトで紹介されており、ほぼ同し内容です。代表例としてDelishKitchenさんのサイトから引用させてもらいます。
両者の違いは、「もち米は主成分であるでんぷんのほぼすべてがアミロペクチンであるのに対し、うるち米はアミロースとアミロペクチンの比率がおよそ2:8である」ことです。アミロースが水に溶解するのに対し、アミロペクチンは溶解しないということが食感に大きな差を生んでいるのです。ここで少し化学の話を書きます。アミロースとアミロペクチンの違いを下図に示します。(これは昨年の「わらび餅とくず餅の違い」に載せた図と同じです)
分子を構成するひとつひとつの単位は同じグルコースですが、これが連なって巨大化した時の構造が直線なのか枝分かれしているのかで大きく性質が異なるということです。アミロペクチンの方は水にとけないため糊状になりますが、アミロースは水に溶けるのでサラサラになると思っていただければよいと思います。うるち米は約2割がアミロースなので、もち米に比べると餅状にはなりにくいという訳です。
話はここでは終わりません。うるち米は約2割がアミロースであるということでしたが、当然種類によって差があります。これもネットでは簡単に見つかりました。diet-safariさんのサイトから引用させていただいた内容を下図に示します。
さまざまなうるち米の種類をアミロースの含有率に従って4つの区分に分類しています。有名ブランドを赤字で表していますが、比較的低アミロース側に多いように見えます。つまりアミロースが少ない方がうまいのかと思われるかもしれませんが、物事はさほど簡単ではありません。お米の「うまさ」は食感や味など多くの要素がありますが、アミロース含有率が大きく影響するのは、もちもち感だけになります。味は遊離アミノ酸の種類と量、そして食感もでんぷん量やタンパク質量が関係してきます。さらにアミロース含有率自体も生育環境で左右されるとあります。「うまい米」は簡単には語れないのです。
そこで、うるち米の組成についてもう少し細かいデータを探してみました。1992年の文献で少し古いのですが、よいデータがありました。(下図)
この論文は富山県農業試験場の方が、2種類の施肥条件(生育環境)で栽培した3種類の稲のアミロース含有率とタンパク質含有率を調べたデータです。上方に赤線で示したアミロース含有率は稲の種類で異なることはもちろんですが、米粒の厚さ(大きさ)によっても変化し、大きいほとアミロースが多くなります。より粘り気がすくなくなるということになります。また中段に示したタンパク質含有率は、米粒の厚さ(大きさ)が大きいほど少なくなります。タンパク質が多くなるとパサパサしてきますので、よりもっちりしてくることになります。この両者が互いに補完するような関係にありますので、これも一概に米粒の大小で食感を論じることはできないようです。
話がもち米とうるち米の話からどんどんと逸れてしまいました。しかしながら、うるち米についてはアミロース含有率やタンパク質含有率はもちろん、生育環境や米粒の大きさでもアミロース含有率が変化することが解りました。つまりうまい米を作るというのは単なる品種だけの話ではないということです。生育環境に配慮してコメを育てておられる農家の方のご苦労に敬意を表したいと思います。