かんとこうブログ
2025.06.10
米の生産費を調べてみましたが・・・
米の生産費を調べてみました。農水省の統計にあるようなので、2003年以降の生産費を調べることにしました。データは1年ごとなので、推移を調べるためには1年ずつ数値を拾っていく必要があります。具体的には農水省のデータ(下記URL)から引用しました。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/seisanhi_nousan/
全国平均の米の生産費(円/60Kg)の推移は以下のようになります。最新のデータは2023年です。
上図を見て注目点は大きく見て2つです。一つは2003年以降生産費が減少していること。もうひとつは、2016年と2017年の間に段差があることです。このうち二つ目については、これら生産費の内訳を比較してみて、どこが違っているか調べてみました。
数字の羅列で恐縮ですが、赤字の項目に注目してください。これらの項目がこの2年において差異の大きな項目です。一つは自動車費と農機具費です。自動車費が増加し農機具費が減少しています。二つ目は労務費で直接労務費の構成員(家族)の金額が減少しています。三つ目は自作地地代が減って支払い地代が増えています。全部で2733円も生産費が減少しています。この額は前年比で約20%の低下になります。これらはどういうことなのでしょうか?それはこの調査結果について「利用者のために」」という文章を読むとなんとなく想像できました。
ここからわかることは、これまで見てきた米の生産費とは、米を生産するに必要な費用の積み上げではなく、農業経営調査の結果から算定したモデル試算であり、そのモデル試算の計算方法は、適宜変更されているということです。平成28年(2016年)と平成29年(2017年)では、調査方法の変更があったようで、別シリーズとしてまとめられていますので、内容は不明ながら大きな変更があったことは間違いないように思います。
「なぜこのような変更が行われたのか?」ですが、上の生産費と以前にご紹介した米の価格を同じグラフに描いてみるとわかります。
よく見ていただくと実におかしなグラフです。2004年から2016年までは2012年を除き、入札価格(全国価格形成センター入札価格)や相対取引価格、つまり農家から出荷する米の金額が生産費を下回っているのです。出荷額が生産費を下回っているというのは、農家は赤字で出荷していることになります。2017年以降は、この逆転現象が正常化されましたが、統計で示されている生産費が実態に即したものであるかについてはとよくわかりません。自給10円と言われる農家の労働対価を知りたいと思って調べ始めましたが、米の生産費と価格からでは無理と分かりました。
データを色々見ていたら面白いデータもありましたのでご紹介します。一つ目は令和5年の米の生産費分布です。下は7000円(60Kg)以下から上は50000円まで実に差があります。最多分布は10000~11000円です。中位は13000~14000円、平均は14000円ほどになります。
生産費がこれほどばらつく要因として、以下の二つの要因の影響が挙げられます。ひとつは農家の経営規模、もうひとつは地域性です。
左の経営規模別では、大規模農業の生産費が低いことが明らかであり、同時に平均がかなり規模の大きい側へ引っ張られることもわかります。また地域別の生産費も大いに異なります。全般的にみれば北低南高ですが、これは間違いなく規模の要因と交絡していると思われます。四国の生産費が高いことには、水の問題が想像されます。
以上見てくると、米の生産費(生産価格)などというものは一律に語られうるものではない気もします。今回の米の価格高騰が、生産費とどのような関係にあるのかはあと1年半は待たないと結論はだせないでしょうが、将来必ず検証してみたいと思います。