かんとこうブログ
2025.07.10
トランプ関税の目的はドル安誘導
先日評論家の中野剛志先生の動画を見ていたら、CEA委員長スティーブン・ミランの論文について解説されていました。このスティーブン・ミラの論文が、今回のトランプ関税の原案となっているのではないかと言われています。
https://www.hudsonbaycapital.com/documents/FG/hudsonbay/
research/638199_A_Users_Guide_to_Restructuring_the_Global_Trading_System.pdf
この論文は、投資管理会社ハドソン・ベイ・キャピタルのレポートとして2024年11月に発表されたもので、これを書いたスティーブン・ミラン氏は同社のシニアストラテジストでもあります。いろいろなネットサイトで紹介されていますが、AIによる翻訳と要旨のまとめが下記の「note」というサイト(下記URL)で紹介されたものが、一番わかりやすかったのでそこから引用させていただくことにしました。
https://note.com/pn3/n/n41e58d11f4a1
この記事を書かれた方は、AIによる要旨とAI翻訳の要約を両方載せておられましたので、項目ごとにそれらを並べてご覧いただくことにします。まずは「アメリカにとって今の世界の現状のどこが不満なのか?」からです。
ポイントは二つにまとめられます。ドルという世界の基軸通貨をもっているがために、トリフィンジレンマ(基軸通貨が直面する国際的流動性供給と自国通貨の信認性維持の両立のジレンマ)に悩まされ、常にドルが過大評価されてドル高が固定化され、輸出がのびず国内産業が衰退してしまったということ、そのことに加えて、世界の安全保障を担っていることの負担が一層増大しているという認識に立っています。
表面上、トランプ大統領の主張は、貿易の不均衡解消、国内産業の復活というように見えますが、本当の狙いは現在の世界における「グローバルインバランス」(世界的な経常収支の不均衡、経常赤字国と経常黒字国格差拡大)を解消するため、世界貿易の枠組みを変えることが本当の狙いとしています。
次のトランプ大統領が各国に突き付けている関税の狙いです。
関税の狙いは貿易収支の改善だけでなく、真の狙いは通貨調整とされています。すなわち、関税を課すことで貿易収支が改善され、その貿易収支の変化が通貨に反映されれば、為替も連動してドル安になるとしています。そして、関税による貿易収支の改善通りに為替が連動すれば、実際のアメリカ側の輸入コストは変化しないと述べています。さすがに、こうした通貨への反映が不十分であれば消費者価格に転嫁され経済全体に影響を及ぼすと書いてはいますが、あくまでアメリカの貿易収支の改善だけでなく、それに派生するドル安が目論見なのです。
さらに関税交渉は、相手国の安全保障の負担と市場開放を求めるための手段としても使えると書いています。確かにトランプ大統領は、防衛費予算をEUに対しGDPの5%、日本に対し3.5%を負担せよと主張しているようです。これまでの日米間の関税交渉では、こうした防衛費関連の話が出てきていませんが、先述したようにドル安と並ぶもう一つのアメリカの狙いは安全保障費用の軽減です。8月1日からの相互関税引き上げに対し、政府は鋭意交渉を進めるのでしょうが、果たして交渉の中で日本の防衛費の負担増は交渉材料として俎上に載っているのでしょうか?
さらに通貨政策についても書かれています。
かつて、同様な問題を解決するために、どのような政策がとられたかを振り返り、かつてはニクソンショックやプラザ合意などの多国間協調による通貨政策が採られ、局面打開が図られたが、今やそうした協調体制をとるのは困難であるを述べています。そして、それに代わるアメリカ一国主導の手段として外国が所有するドルの債権を盾にとる通貨政策が提案されています。外国の所有するアメリカの債権は、アメリカ国内に保管されており、国際緊急経済権制限法の適用を受けます。したがってアメリカ政府がこの法律を発動し、こうした外国所有の債権に利子相当の手数料を課すことが可能となれば、外国所有のドル債権を基軸通貨の呪縛から解き放つことが理論上可能となり、ドル安へ誘導することができるというのです。日本は巨額のドル債権を保有していますが、このような話を聞くと心配になります。
しかしながら、これまで述べてきた政策はすべて、市場への影響リスクのあるものばかりであり、そのリスクについても言及されています。
関税や通貨政策は急激な変化を起こす可能性があるので、慎重に行う必要があると書かれていますが、それがどれほどトランプ大統領の頭の中にインプットされているかは不明です。
結論です。
トランプ関税は、その後の世界の通貨システムの変革を狙うための最初の手段であり、これが終わりではなくグローバルインバランスの解消が最終的な目的です。。そしてアメリカにとっては、安全保障の負担軽減も同じ様に重要な藻k獣的なのです。特に後者は日本にとっては非常に困難な要求であり、選挙期間中に触れられたくない話題であろうと思われます。ですが、同盟国でありながら日本は書簡を送られてしまいました。これまで散々報道されていた対米投資や農作物輸入などでアメリカとの合意にたどり着けるのでしょうか?安全保障と通貨に対するコミットメントは不要なのでしょうか?継続中とされる対米交渉の行方が気になります。
単なる二国間の貿易不均衡の是正ではなく、世界の通貨システムを変革したいという意図が隠されているとすれば、トランプは強かです。果たしてマールアラーゴ合意(トランプによる世界通貨システムの変革)は現実となるのでしょうか?