かんとこうブログ
2025.07.17
日清オイリオのウルトラ酸化バリア製法
またまたテレビのコマーシャルの話で恐縮ですが、日清オイリオの「ヘルシークリア」という商品で「ウルトラ酸化バリア製法」なるものが紹介されていました。この日清オイリオの油の酸化防止技術については、昨年の5月30日に当ブログでご紹介しています(下記URL)が、肝心のところがよくわからずに中途半端なご紹介に終わっていたため少し気にしておりました。
https://kantoko.com/blog/2024/05/90617/
それが今回調べてみると「ウルトラ酸化バリア製法」という名前で全容が紹介されていました(下記URL)ので改めてご紹介したいと思います。
https://www.nisshin-oillio.com/healthy-clear/
「ウルトラ酸化バリア製法」は3つの技術の組み合わせから構成されると説明されています。すなわち、①オイルを脱臭工程で、低温・高真空で丁寧に仕上げるNeoナチュメイド製法 ②微細な窒素バブルを吹き込みことで油の中に酸素を追い出し、酸化の原因となる油中の酸素濃度を低減するウルトラファインバブル製法 ③油を容器に充填する時、容器のヘッドスペースに窒素を充填するこおtで酸素を追い出し容器内の酸素濃度を低減させる製法の3つの製法を組み合わせ時間の経過とともに進む油の酸化を防止する製法と説明しています。
酸化ブロックについては、昨年の当ブログで詳しく紹介しておりますのでそちらをご参照ください。
ここではあとの二つの製法について調べたことをご紹介したいと思います。
Neoナチュメイド製法については、特許番号が書かれていましたので、中身を調べました。公開日が2017年5月ですので今から10年ほど前に出願された特許です。キャノーラ油に含まれるビタミンEを壊さないためになるべき低温(と言っても205~225℃)で、においの元成分を除去するために高真空で、と説明されています。ここで?と思いませんか?この製法は脱臭のためなのでしょうか?実はこの特許で請求項には「脱臭工程」と書かれています。当初は脱臭のために開発された製法かもしれません。それがたまたま脱酸素にも効果があった、とまでは断定できませんが、可能性は否定できません。しかし高温ではより酸化が進むでしょうから、低温で脱臭した結果、酸化が抑制されるという可能性は高いと言えます。
一方のウルトラファインバブルですが、これも当ブログで以前にご紹介したことがあります(下記接続先)。微細な泡は極めて安定で長時間油中に存在可能です。一方液体中への気体の溶解度は一定量で飽和しますので、窒素の量が増えれば酸素の溶解は減少するはずです。理屈はなんとなくわかりましたが、実際どのくらいの量の微細窒素が吹き込まれたのかが気になりますので、こちらも特許を調べてみました。しかし見つかりませんでした。この理由について3つの可能性を考えました。
ファインバブルをご存知でしょうか? | かんとこうブログ | 関東塗料工業組合
① 私の探し方が不十分であった ② 新しく出願された特許であり公開前 ③ 特許としては出願せずノウハウとして秘匿することにした の3つです。
このうち①は当然ありうると自分でも思うのですが、実は正解は意外にも③ではないかと思っています。ウルトラファインバブルそのものはすでに公知化された技術でありますが、この技術を油中の酸素を低減させるために用いるにはどのような条件が最適であるかは、実際に膨大な実験を行わなかればわかりません。特許を出願すればいやでも最適条件を請求項に書かざるを得ませんので、それを避けるためあえて特許を出願せずノウハウとして秘匿するというのも一つの考え方ではないかと思うわけです。最適条件を開示すれば、それをヒントに何かの条件と組み合わせさらに最適であるとする特許を他社から出願される可能性があるからです。
以上はもちろん推測の域をでませんが、今回また取り上げた理由は、このウルトラ酸化バリア製法という考え方、とりわけウルトラファインバブル製法や酸化ブロック製法が、塗料においても使える技術ではないかと思っているからです。コストとの兼ね合いにはなりましょうが、永遠の課題である油性塗料の皮張りの解決には使えないのだろうかと思いますが・・・