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かんとこうブログ

2025.08.25

アサヒビールのキンキンタンブラーの秘密

先日某所で行われた飲み会に参加したところ、アサヒビールのキンキンタンブラーなる容器に入ったビールが提供されてきました。このタンブラーの特徴は、唇に触れた感触がよい、保温性に優れるなどもありますが、容器に描かれた青紫の線が、温度が8℃を超えると消失するということにあります。つまり、提供された時点では青紫の線が入っていますが、飲み進むと上から徐々に線の色が消失していくのです。今日はこの「色が消える」タンブラーについて調べたことをご紹介します。なおこの仕組みは缶ビールの容器にも施されているようです。

アサヒビールのサイト(下記URL)にはこの「キンキンタンブラー」の紹介がありましたのでまずここから引用します。

https://www.asahibeer.co.jp/superdry/kinkin/


   

これは示温印刷であるとはっきりと書いてあります。さらに「缶体デザインの一部に、温度によって色が変わる特殊なインキを使用しています。本インキは日光や蛍光灯等、光を長時間受けると、色が変わらなくなる場合があります。約8℃から徐々に発色します。」と説明がされており、その缶の構造も図示されていました。

原理は温度変化により溶融凝固することで染料と顕色剤が、分解(失色)⇔結合(発色)」と説明されています。

缶の断面図からわかるのは、アルミの素地に示温インキが塗工されその上に缶用塗料が塗装されているということです。示温インキにはメラミン樹脂でできたマイクロカプセルが含まれており、動物性油の中に染料と顕色剤が浮かんでいます。冷却されて温度が8℃を下回ると油が凝固して染料と顕色剤が結合して発色し、温度が8℃を上回るとこんどは油が溶融し染料と顕色剤が分解し失色すると説明されています。どういう色素や顕色剤が使用されているのか気になりますが、さすがにそこまでは書いてありませんでしたので、示温インクで調べてみました。

パイロットインキ株式会社のサイトにサーモクロミックインクの説明がありました(下記URL)ので、次にこれを引用します。

https://www.pilotink.co.jp/metamo/ink/metamocolor.html

   

ここでは、こうした示温インクは、マイクロカプセルに発色剤(染料)、発色させる成分(顕色剤)、変温調整剤(アサヒビールの例では動物性油)を封入したものであり、通常温度があがると色が消えるというタイプが一般的と書かれています。まさにアサヒビールの「キンキンタンブラー」および「アルミ缶」の場合に当てはまります。

さらに発色⇔失色の変化温度幅によって、高感度タイプとメモリータイプに区分されています。(下記)

アサヒビールのタンブラーや容器の場合にはもちろん、高感度タイプになりますが、色の品ぞろえとして深い青色があり、かつ用途例として一番最初に、「ビールの冷え頃表示、酒の適温表示」とありました。きっとこのタイプに違いありません。しかし、ここでもどのような染料や顕色剤が使用されているかは書かれていませんでした。

こうした示温インクに関するネット情報をみていたところ、高校生の研究発表資料で興味深いものがありました(下記接続先)ので、次に紹介したいと思います。詳細不明ですが、しっかりした研究発表内容で、発表者は名古屋大学教育学部附属高等学校でした。

サーモクロミック色素の変色と構造変化

    

実験に使用した物質は下図の通りです。

染料として①クリスタルバイオレットラクトン、顕色剤として②2,2ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、変色温度調整剤として④l-メントールが使用されています。このほか③界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムが使用されています。これらの温度変化に伴う挙動と水相、有機相への移動は以下のようにまとめられています。

冷却された状態(上図左)では色素と顕色剤は結合し発色しています。一方変色温度調整剤は固体ですので、色素とは完全に分離されています。温度が上がっていくにつれ、変色温度調整剤であるl-メントールが溶融して色素と顕色剤の結合体をl-メントール中に取り込んでいきます。(上図中)色素と顕色剤の結合体は有機相内で結合が乖離され色素は失色します。この現象が進み、全体の色が消失していきます。(上図右)

この色素と顕色剤の場合には、水素イオンの受け渡しで発色、失色が行われますが、アサヒビールのタンブラーや缶の場合に、動物性油の溶融と凝固だけの作用によるものかはわかりません。しかしながら、こうしたことはすでに広く世の中で利用されていることを認識しておりませんでした。

示温材料の用途としてぜひ利用したものがあります。それは高日射反射率塗料です。冬は黒、夏は白という塗料ができれば、日本のエネルギー問題の解決に大きく貢献できると思います。こうした示温材料の耐候性は十分とは思えませんが、塗料製造者としてぜひ挑戦したもらいたいテーマであると思っています。

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