かんとこうブログ
2025.09.05
経済構造実態調査2025年版(対象2023年)が発表になりました
8月29日に経済構造実態調査が発表になりました。今回の対象は2023年分の調査結果で、あらゆる製造業に関してかなり細かいところまで調べた結果が発表されます。例を挙げれば、日本に塗料の製造事業所がいくつかあるのか?日本で塗料製造業に従事している従業者は何人なのか?というのは、この調査でしかわかりません。
以前は同様な調査が「工業統計表」という名称で行われていましたが、2021年分からは「経済構造実態調査」という名称になりました。調査結果は、「産業版」「品目版」「地域版」という3つのExcelファイルで提供されています。今日と来週月曜日の2日間はこの調査結果の中から塗料製造に関することに一部をご紹介していきます。
最初は塗料製造事業所数と従業者数です。できるだけ長期傾向がわかるように、1999年からの工業統計表との合作でご紹介します。残念なことに工業統計表は従業員4人以上の事業所が調査対象でしたので、従業員1名以上のすべてを調査対象とする現在の経済構造実態調査とは少し齟齬がでていますが、幸い2020年に両者のデータがありますので、おおよそのところは整合性があるものと判断できます。事業所数と従業者数を一緒に示します。
1999年および2000年から見ると、2023年の事業所数も従業者数も減少しています。しかしながら、両者とも2010年台を底として2020年以降はわずかではありますが増加傾向にあります。コロナ禍以降生産数量の減少を心配していましたが、このデータでは塗料製造業は衰退傾向ではないことになります。
従業者数全体を事業所数で割ると、1事業所あたりの平均従業者数が出ますのでこの推移もグラフ化してみました。
書き忘れましたが、2011年と2015年のデータがないのは、この両年は「経済センサス」という別の調査が行われました。工業統計表より詳しい調査という触れ込みでしたが、経済センサスのデータは工業統計表と乖離しており、長期傾向を判断する材料にならないと思い除外しています。
さて、話を戻して事業所あたりの平均従業者数ですが、これはほぼ横ばいとみています。2020年以降のデータがそれ以前に比べ小さな値になっているのは、1~3人の小さな事業が統計に含まれるようになったためと考えています。
次にご紹介するのは、塗料の出荷金額の推移です。これも全従業者数で割ったひとりあたり出荷金額とともにご紹介します。
出荷金額は長期的にみて微増、2020年以降は明らかな増加、ひとりあたり出荷金額は全体的に増加で2020年以降は明らかに増加速度が上がっています。先ほどの従業員数の傾向と考え合わせると、「この間企業は生産性を向上させることで、従業者の微減を補い、出荷金額を増やしてきた」とはならないでしょうか?2020年以降の出荷金額増は明らかに原材料費の高騰によるものとしても、それまでは、生産性向上と考えて矛盾はないのではないかと思います。
しかし、ここで重大な疑問に言及しなければなりません。それは、この出荷金額が、経産省の確報(生産動態統計調査)と乖離しているということです。もちろん、調査対象が異なっている、調査機関が違うなど理由はあるのでしょうが、あまりに違います。2023年の塗料出荷金額は確報では、7381億円(暦年)となっており、本調査の1兆3512億円とは6200億円ほど差があります。この差は甚大です。以前からこれは気になっていろいろと調べていますが、依然なぞは解けないままです。この件後程もふれますので、とりあえず今はここでやめます。
この調査では、出荷金額から、人件費と原材料、電気代などを差し引いた付加価値金額を載せてくれていますので、それも紹介します。
これも出荷金額と同じ傾向にあります。特にひとりあたりの付加価値金額の増加は大きく、明らかに生産性が向上してていると言えます。これが日本全体の生産性向上の割合に比べてどうかは、検証を要しますが、生産性向上自体は明らかかと思われます。
さて今日に終わりに、先ほどの本調査と確報の差異についての話に戻ります。本調査では塗料製造業以外の塗料製造についても調査の対象となっています。具体的には「品目版」の第5表の塗料製造業以外の塗料製造金額についての統計資料があり、その要約を下表に示します。
塗料種としてはかなりの範囲をカバーしており、ほとんどの塗料が含まれます。ラッカーや無溶剤型塗料のように塗料製造業以外で製造している事業所が少ない場合は、データは開示されない仕組みになっていてわかりませんが、それ以外では、塗料製造業以外で製造された塗料の割合が示されていました。しかしながら、その数字をみると塗料はやはり塗料製造業事業所でそのほとんどが製造されており、本調査と確報の乖離を埋めるには至りませんでした。塗料製造業以外で製造されている塗料はこの調査では1割ほどであったということであり、1兆3512億円と7381億円の差は説明できないということです。
来週月曜日は、塗料種別、都道府県別のデータをご紹介します。