かんとこうブログ
2025.09.09
南極内陸部の気温上昇・・南インド洋の温暖化が南極の氷を溶かす
先月、国立極地研究所、名古屋大学、北見工業大学の共同研究として、南極内陸部の気温上昇に関する長期観測結果が発表されました。大変わかりやすい発表ですので、興味のある方は直接下記をご覧になった方がよいと思います。ここでは簡単にその発表内容をご紹介いたします。
https://www.nipr.ac.jp/info2025/20250807.html
結果概要は以下のようにまとめられています。
①の「観測空白域であった」については、下左の地図をごらんください。これまで南極において有人で長期、気象観測を内陸部で実施していたのは、南極点のアムンゼン・スコット基地(紫矢印)とヴォーストーク基地(緑矢印)の2か所しかありませんでした。一方、日本の南極地域観測隊(JARE)は、冬期の気温が-70℃以下になる厳しい自然環境でも動作する無人気象観測装置(下右図)を開発し、南極内陸域における気候変動を1990年代初頭から現在まで継続して観測してきました。今回の発表はその成果として南極内陸部における1993年から2022年までの気温上昇を解析したものです。
今回の成果の意義のひとつとして、沿岸から内陸部にかけて段階的に海からの距離が異なる地点で観測することにより内陸部と沿岸部の差異を明確にすることができました。下図をご覧ください。みずほ基地(Mizuho:緑色)、中継拠点(Relay Station:青色)、ドームふじ基地(Dome Fuji:赤色)の内陸部に加え、沿岸部の昭和基地、とMawson基地の2か所を加えたデータで解析を行っています。
1993年から2022年までの気温上昇に関しては下図をご覧ください。
左列が年間平均気温、中列が暖候期(10月から3月)の平均気温、右列が寒候期(4月から9月)の平均気温の推移です。発表では以下の文章でこの結果を要約しています。引用します。
「過去30年間にわたる年平均気温変化は、3地点ともに約0.45-0.72℃/10年という世界平均(0.2-0.25℃/10年)よりよりも早い速度で毎年気温が上昇していることが明らかになりました(上図左c-g)。さらに、南極地域の春から夏(10月〜3月)は、さらに早い速度で温暖化が進行していることが明らかとなりました(上図中h-l)。」 引用終わり
上のグラフには温度上昇値が記入されていないものがあります。おそらく統計的な有意性を考慮してのことかと思われますが、あえてわかりやすくするため、簡易的な方法でこれらの気温上昇値を推定してみました。グラフを印刷して上昇値を定規で図り目盛りから逆算するという原始的な方法です。あくまで参考値として示します。
ここまでせすとも傾向は明らかなのですが、こうしてグラフにしてみるとなお一層明らかになります。冒頭紹介した結論の②と③が明確に現れています。
