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かんとこうブログ

2025.09.11

世界陸上2025東京大会の男子4X100Mリレーについて

いよいよこの土曜日から世界陸上2025東京大会が始まります。今日はその中の注目種目である男子4X100Mリレーについて各種データをご紹介したいと思います。この種目日本は過去の世界陸上とオリンピックで何度かメダルを獲得しています。世界陸上では、2017年、2019年の大会で銅メダル、オリンピックでは、2008年、2016年で銀メダル(2008年は当初の銅から繰り上がりで銀)をそれぞれ獲得しています。個々にさほど傑出した選手がいなくとも、お家芸と言われるバトンパスで上位に食い込むというイメージをお持ちの方も多いと思います。

今日の趣旨はこの男子4X100Mリレーに関して、データを使っていろいろな方向から眺めてみようというものです。最初はメダル候補各国の戦力分析です。8月25日時点での各国の上位記録者4名の合計タイムを集計してみました。結果は下表のようになりました。

字が小さくで恐縮ですが、大事なところは右端の4人のここ1年余りの期間におけるベストタイムの合計です。基本的にはこれがベースとなり、ここにバトンパスの巧拙、当日の体調などさまざまな要因が関与して順位が決まると考えられます。

この4人の合計タイムでは、アメリカとジャマイカが圧倒しており、3番手にイギリスと南アフリカ、それに日本とカナダが追随するという形になっています。ここまでが合計タイムで40秒を切っています。なんだ日本は5番目かとお思いかもしれませんが、実は今回のこのタイムと順位はこれまでの世界大会の日本チームとしては最速なのです。

参考までに直近の世界大会である2024年のパリ五輪時の同様なランキングと比較してただければと思います。パリ五輪のランキングでは、日本の4人の合計タイムは40秒25で順位は8位でした。ですが、本番では見事5位に入賞しています。

過去の世界大会について、入賞した日本チームのメンバー4名の100Mのベストタイムの合計と本番でのリレーのタイムの一覧表を作成してみました。「合計」が4人の100Mのタイムの合計、「実際」は本番での400Mリレーの記録です。

こうして並べてみると、大会当時の4人のベストタイムの合計が40秒を下回っているのは2023年の世界選手権ブタペスト大会のみで、あとは全て40秒を超えています。となると今回の東京大会ではますます好成績が期待できるということになります。

がしかし、一番最初の表に戻って日本のメンバーを見直すと少し不安が出てきます。それは一番タイムの良いサニブラウン選手が最終選考会である7月の日本選手権ではケガのため決勝に残ることができませんでした。あれから2カ月たちましたが、どこまで回復しているか心配です。ただし、サニブラウン選手は個人での100Mの代表にも選ばれました。もし、まともに走れない状態であれば辞退すると思われますので、これを根拠に順調に回復していると期待します。

仮にサニブラウン選手が外れることがあったとしても、今回はもうひとり標準記録を突破した選手がいるので安心です。高校生でリレーメンバーに選ばれている清水空跳選手も10.00をマークしており、サニブラウン選手と入れ替わっても合計タイムは39.99となって過去最高のブタペスト大会と並ぶことになるからです。

過去の世界大会における合計タイムと本番成績の差がバトンパスを行うことによる短縮タイムということになります。このバトンパスによるタイムの短縮は、通常の100Mレースは静止状態からゴールまでのタイムを計測しているのに対し、バトンパスを行う場合には、第2走者以降はバトン受け渡しの前から走りだしており、受け渡しの時点ですでに加速されていることが最大の要因です。さらにバトンの受け渡しで両者が手を伸ばして渡すので、実際に走らないですむ距離が各1M程度、時間にして3回のバトンポスで合計0秒3程度短縮されるからとされています。

これまでの世界大会でこうした短縮時間がどのくらいであったかについても上の表で計算してあります。短縮時間は最短で2秒28、最長で2秒78でした。これを今回に当てはめると4人の合計タイムが39秒95ですから、悪くても37秒67、よければ37秒17となります。あくまでこれまでの実績をもとにした予測ではこうなります。

一方世界選手権の実際のタイムについては、以下の表のようになります。

1997年以降の14回のうち、日本は2回表彰台に上がっていますが、このうちの第17回大会の記録37秒43は現在も日本記録ちなっています。また、過去の世界選手権の3位の記録としては最も良い記録となっています。

これら1位~3位までの記録と先ほどの今回の日本チームの予測タイムの範囲をグラフにしてみました。

図中、色の濃いゾーンが今回の日本チームの予測範囲です。レベルが回を追うごとに向上している中で、直近の5回の大会でも優勝または2位に相当する範囲であることがわかります。しかしこれはあくまで計算上の話で、個々のベストタイムの単純合計では、日本は5番目に過ぎません。アメリカやジャマイカが日本と同じようにうまくバトンを渡せば日本が勝つことは難しいということを忘れていけません。

以上まとめると

①今回の日本チームは過去最速メンバーが揃いました。②これまでの大会における個々のベストタイムの合計から実際のリレーの記録を引いた時間(短縮時間)は、2秒28~2秒78でした。③今回のメンバーのうち最も早い選手4人の合計タイムから②の短縮時間を引くと、37秒17~37秒67となり、過去の大会の表彰台に匹敵するタイムとなります。

実際にはすでに第4走者は、200Mの代表選手である鵜沢選手の起用が有力視されていますので、この予測は成立しなくなっていますが、今回リレーメンバーに選ばれた選手たちが如何にポテンシャルの高い選手達であり、メダルも決して夢ではないということは理解していただけたと思います。

自国開催というのは大変有利な条件であると同時に、寄せられる期待の大きさ、精神的な重圧も大変なものだと想像します。選手たちには、どうかのびのびと実力を発揮してもらいたいとだけ切に思います。

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