テレビのコマーシャルでクラレの「セントリグラス®」を見ました。なにやら素晴らしい強化ガラスができあがったような印象をうけましたので、合わせガラスについて調べてみました。合わせガラスは、二枚のガラスを樹脂で張り合わせたものと理解していましたが、正確なところは理解していませんでした。またさまざまな会社がこの合わせガラスを手掛けており、それなりに有用な情報を提供してくれているので、各社の情報を交えてご紹介することにします。
最初は積水化学のサイトから引用させてもらいます。合わせガラスとは何か?そして使用される中間膜の機能について書かれています。

合わせガラスは、2枚のガラスの間に中間膜を挟み、オートクレーブを用いて高温高圧で張り合わせ作ること、そしてその中間膜はPVB(ポリビニルブチラール)が広く使用されていること、この中間膜によってさまざまな機能が付与できることが書かれています。とりあえずこの3点だけ覚えてもらえれば結構です。
次には旭硝子のサイトから引用させてもらいます。合わせガラスの機能性と合わせガラス誕生秘話が紹介されています。


合わせガラスの機能としての「遮音」「遮熱」「着色」についての解説が書かれています。、また合わせガラス誕生秘話、ニトロセルロース被膜が内面に付着したフラスコを落としたところ、飛散するはずのガラスが飛び散っていないことがヒントになって合わせガラスが誕生したことが紹介されています。
最後にクラレに登場してもらいテレビCMで見た「セントリグラス®」を紹介してもらいます。

「セントリグラス®」とは一般的に使用されているPVBではなく、アイオノマーという素材の中間膜を使用した合わせガラスの商品名で、1998年に建築用途に特化して発売されてから様々な改良開発が行われ、幅広い分野で使用されるようになったと説明されています。
合わせガラスそのものについては以上で説明を終わり、ここかたPVBとアイオノマーについて補足説明します。
ポリビニルブチラール樹脂とそのガラスへの接着について下図をご覧ください。(図はクラレから引用しました)
左図にPVBの構造を示します。PVB樹脂は酢酸ビニル(左)、ビニルアルコール(中)、ビニルブチラール(右)の3種のモノマーの重合物の形になっています。オートクレーブ(圧力釜)内で接着される際には酢酸ビニル、ビニルブチラール部分が加水分解されてビニルアルコールとなり、ビニルアルコールのOHとガラス表面のシラノール(Si-OH)のOHとの間で協力な水素結合のペアを作り(上右図)強固に接着することがわかります。
一方でアイオノマーはと言えば、クラレのサイトでは組成情報がありませんので一般情報でしかご紹介できません。
アイオノマーとは高分子鎖に少量のイオン基を導入したプラスチック材料で、全体的に疎水性の構造の中に、イオンを抱えた親水性のイオン基が疑似架橋点を構成し、力学的性質を向上させると説明されています。具体的な例ではイオン基としてカルボキシル基、イオンとして亜鉛イオンをもつアイオノマー(上右図)を挙げておきました。ゴルフボールなどに使用されている技術です。
この合わせガラスですが、積水化学のサイトに面白いものを見つけました。それはHUD(ヘッドアップディスプレーー)よう合わせガラスです。ダッシュボードでなはなく、フロントガラスに速度や車線の情報を表示するHUDは近年採用が増加していますが、通常の合わせガラスでは映像が2重になるという問題があります。その解決策として、くさび形中間膜が提案され、そこに遮音、遮熱といった機能を多層押出形成技術とナノ分散技術による付与することに成功したと紹介されていました。
以上で合わせガラスの説明を終わりますが、タイトルの「実は塗料にも少しは関係のある」という意味を説明して終わることにします。その意味はポリビニルブチラール樹脂が、塗料に使用されている樹脂という意味です。今は少なくなってしまいましたが、防食分野の一次防錆プライマーに「ウオッシュプライマー」というものがかつては広く使用されていました。この塗料に使用されている樹脂がポリビニルブチラール(PVB)なのです。このPVB樹脂とリン酸、クロム顔料が必須成分となって特異的な防食性を発揮する塗料でしたが、今では衰退しています。このほかPVBは
無機質ジンクリッチプライマーに使用できる数少ない有機樹脂としても使用されています。
塗料では決して主たる原材料とは言えませんが、合わせガラスの世界では堂々の主役を演じているようでなんだかうれしく思いました。