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かんとこうブログ

2025.09.25

2025世界陸上東京大会のレビュー・・持てる力を発揮できたのかという観点から

世界陸上東京大会が閉幕しました。9日間世界の超人たちの競技に心を奪われ楽しませてもらいました。このブログを私物化しているというご指摘は甘んじてうけますが、それでもなおこの陸上競技の解説は止められませんので何卒ご容赦ください。今日のレビューをどうしても書きたいと思った理由はただ一つ、選手達を順位ではなく、持てる力を十分発揮できたかどうかでも評価してほしいということです。

今回自国開催の大会として選手たちはよく健闘してくれました。日本選手の入賞数11はこれまでの世界選手権の最高記録となりました。

さて、これまで世界陸上の度に、事前のランキングと実際の順位の散布図を書いてきましたが、どうもしっくりこないところがあり、選手たちが持てる力を十分発揮できたかどうかを見る指標としてPerformance Indexなる指標を計算することにしました。計算は至って簡単で下式で計算します。

この大会の直近のシーズンのベスト記録に対し、今回の大会中の記録がどのような位置づけにあるのかを示す指標です。トラックやロードの時間を競う競技とフイールド競技のように距離(長さ、高さ)を競う競技とでは、分母と分子が逆になります。1.000がシーズンベスト記録と同じ記録だった場合になります。これより数値が大きければシーズンベスト更新、場合によっては自己記録更新、もしくは日本記録更新になる場合もあります。逆に数値が小さければシーズンベストの及ばない記録であるということになります。

それでは全選手のPerformance Indexと大会順位の一覧表を示します。順位はその選手が進んだ最高レベルでの順位を採用しています。予選通過できなかった場合には予選における全体順位を採用しました。

選手名覧が赤いのはメダル獲得者、青いのは入賞者です。PIはPerformance Indexです。PIが1.00以上は紫色、0.99以上を黄色、0.98以上を橙色で色付けしています。

まずPIが1.0を超えた選手(チーム)が5人います。男子400Mの中島選手(PI=1.009)、佐藤風雅選手(PI=1.002)、女子3000メートル障害の斎藤選手(PI=1.024今回の日本選手最高)、女子20Km競歩の藤井選手(PI=1.002)と男女混合4X400Mリレー(PI=1.009)です。このうち男子400Mの佐藤選手以外はすべて日本新記録でした。大幅な日本新記録という意味では女子3000メートル障害の佐藤選手に、3回走って3回とも従来の日本記録を上回ったという意味では男子400Mの中島選手に、この気温の中でよくぞ歩いたという意味では女子20Km競歩の藤井選手に、それぞれ大きな拍手を送りたいと思います。また男女混合リレーについては、メンバーのうち男子の今泉選手と女子の松本選手は、ともに新旧の本記録メンバーであることをご紹介しておきたいと思います。

次にPIが0.99を超えている選手、つまりシーズンベストに近い記録を残した選手たちをご紹介したいと思います。

意外に思われるかもしれませんが、男子200Mの鵜沢選手と飯塚選手、この二人はほぼ実力を出してくれたことになります。鵜沢選手は、特に決勝進出を期待されていたので期待外れ感が強いかもしれませんが、実はほぼ実力を発揮できたと言えるのではないでしょうか?110MHの野本選手は文字通り実力を遺憾なく発揮できたと思います。また男子の両リレーもほぼシーズンベストに近いタイムでしたが、こちらも事前の期待が大きすぎたために「がっかり」とお思いの方が多いと思います。残念ながらこれが実力だと認めざるを得ません。この件は最後にもう一度書きます。

フィールドは全般にPIが低く記録としても低調でした。男子長距離とマラソン競歩もPIが低い値でしたが、今回もような気温が高い中では無理もないことです。もっと気温の低い時期に開催できないのが残念です。

女子のPI値0.99越えの選手の中で、最も称賛されるべきは廣中選手です。特に10000メートルはあの高温の環境下でシーズンベストに近い記録で入賞したことは大健闘だと思います。また意外ですが走り幅跳びの秦選手もシーズンベストに近い跳躍でした。本人も周囲も全く満足していないと思いますが、不調の中で力を出し切ったと言えるのではないかと思います。また女子ロングスプリントの井戸選手、松本選手もほぼシーズンベストでした。両選手に対し混合リレーの日本新記録も含め健闘を称えたいと思います。

またPIが0.98以上の選手に中では、男子110MHの村竹選手、女子5000Mの田中選手、女子100MHの中島、福部、田中の3選手の健闘を称えたいと思います。男子200Mの美伊豆久保選手もシーズンベストでした。

次に。このPIが実際の順位を関連があるのかどうかについても検証してみました。下図をご覧ください。(横軸PI値、縦軸順位です)

男子トラック、男子フィールド・ロード、女子トラック、女子フィールド・ロードの4枚にわけて散布図を書いてみましたが、R2乗値が0.5を超えたのが男子フィールド・ロードだけでした。散布図に傾向が出にくい理由の一つとして長距離のレースの存在があります。気温が高い中での予選ではどうしてもスローペースで進み、最後のスパート合戦という形になりがちです。当然記録は遅くなりPI値が下がることになります。そうした影響で男子トラックでは、10000Mの鈴木芽選手、葛西選手、3000M障害の三浦選手のPIが谷比べて著しく低く外れています。三浦選手は入賞したにも拘らずです。この3選手を除外して散布図を描くとR2乗値が0.4を超えました。多少マシにはなりましたがその程度でした。

いずれにしてもこのPI値と順位に因果関係を求めるには、選手のレベルが極めて狭い範囲にまとまっているという前提が必要であり、他の要因として長距離種目は高温下では記録が出にくいこともありこうした結果も当然かと思います。

最後に男子の4X100Mリレーについて一言申し上げたいと思います。今回、日本陸連は37秒30を目標としていると報道がありました。そのタイムは過去に実績からみると必ずしも高望みではなく、私自身も実現可能な目標と感じていました。しかし、結果は37秒台にさえ入れず、メダルからは遠いレースとなりました。個々の力を見れば10秒00以内が5人もそろい史上最強ともいえるメンバーでした。サニブラウンの故障があったと言え、彼が外れたとしてもなお戦えると思っていました。しかし現実には、それぞれのメンバーが期待された走りには遠い状態で、バトンパスの問題ではなく走力で劣っていたためのこの順位でした。それぞれが標準記録を突破した時の走りを再現で切れていないと感じました。それでも6位になれたことは称賛すべきことかもしれませんが、今回はジャマイカ、南アフリカのいない決勝であったことも忘れてはなりません。個々にりっぱな持ちタイムがありながら、走力で敗れたことへの無念が、あのインタビューの柳田、桐生の涙になって現れたと思っています。この経験を奇貨として、2年後の世界選手権、3年後のオリンピックでの捲土重来を期してほしいと心から思います。

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