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かんとこうブログ

2025.10.20

塗料原材料の供給動向・・全原料が数量減少、単価上昇

毎月、経産省の確報から計算した主要な塗料原材料の価格動向についてご紹介していますが、原材料の出荷数量と出荷金額については、前月から5%以上の変動があったものしかご紹介していません。今年4月に一度動向を調べている全原料23種の出荷数量と出荷金額について2021年1月以降のデータをご紹介しましたが、今回はその半年後の経過も含め、再度23種の出荷数量と出荷金額をご紹介したいと思います。

出荷数量と出荷金額をひとつのグラフに書いていますが、2021年1月の始点が同じ位置になるように第1軸と第2軸の目盛りを調節していますので、数量と金額の増え方、減り方の大小をそのまま比較できます。それでは樹脂の原料となる樹脂材料からグラフを示します。

青線が数量、ピンク線が金額です。半年前と同様にすべての原料において、数量線よりも金額線が上にあります。つまり単価上昇となっています。ただし、数量減と単価増のバランスにより金額は増の場合と減も場合がありますが、多くは金額増となっています。これについては最後に考察します。樹脂材料で最も衝撃的なものはビスフェノールAです。エポキシ樹脂の重要な原料ですが、数量が価格ともに極端に減少し、経産省は統計数値の公開を中止しました。これほど極端な例はほかにありませんが、概ね数量減、金額増となって、青線とピンク線が乖離する傾向にあります。続いて有機溶剤です。

トルエンとキシレンは今回ご紹介する塗料原料の中で最も単価が上昇した材料ですが、2021年中に急激に数量と金額が乖離したままなかなか元に戻りません。他の有機溶剤も次第に数量と金額が乖離していく傾向にあります。続いて顔料です。

酸化チタン、カーボンといった代表的な顔料で数量、金額の乖離が続いています。アゾ顔料、フタロシアニン顔料での数量、金額の乖離が小さい理由は、この両顔料の単価がもともと高く、顔料価格に占める原材料の価格割合が低いためと推定されます。酸化亜鉛の挙動については亜鉛地金の相場の影響が考えられます。最後は塗料用樹脂です。

ここでも数量と金額の乖離が続いています。最新8月ではメタクリル樹脂に異変が起きています。一部で原料のメタクリル酸エステルモノマーが供給停止となったようですが、詳しいことは把握できておりません。

最後にこれらのグラフにおける数量の一次近似線の傾きから、出荷数量の年間減少率と単価の年間上昇率を計算してみました。冒頭述べたように23種類すべての原料で数量は減少、単価は上昇しています。(左図)さらにこの両者の散布図を書いてみました。(右図)

個々の原材料についてはいちいち説明しませんが、それぞれ数量減少率(左図の下側)と単価上昇率(左図の上側)の大小関係は異なります。右図の散布図で説明しますと、数量だけが一方的に減少し単価があまり変わらなかった例がビスフェノールAです。逆に数量の減少率は低いものの、単価上昇率が高かった例がトルエンとキシレンです。右図の斜線は数量減少率=ー(単価上昇率)で、数量の減少と単価の上昇がバランスしている線です。散布図のプロットは、この線よりも上側の分布が多く、数量減少率よりも単価上昇率が大きかった原料が多いことを示しています。可能な範囲で、それぞれのプロットに原料名の略称をつけておきましたのでご参照ください。

原材料それぞれに事情があると思われますので、画一的な解説はできませんが、これらを見て一番強く思うことは、全ての原料の出荷数量が減少傾向にあることへの不安です。こうした原料は、用途が塗料に限定されていませんので、全ての塗料原料の出荷数量が減少傾向であることは、化学製品全体の出荷数量が減少しているのではないかと思われます。いずれにせよ、長期的にはこうした原料の供給がタイトになる方向に向かうのではないかと懸念されるからです。杞憂であれば幸いです。

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