かんとこうブログ
2025.11.06
熊の出没状況・・環境省と都道府県データから
連日熊による人身被害が報道されています。今年は異常に出没は増えていることは疑いがないのですが、どこでどのくらい出没しているのかがわかりません。なかなか公的なデータが見つかりませんでしたが、環境省がまとめている資料が見つかりましたので、その内容を中心にご紹介したいと思います。
環境省のデータ(下記接続先)は、令和3年4月から令和7年9月までの各都道府県ごとの出没情報をまとめたもので、10月31日の日付でしたが、最新値が9月分でした。最も出没が多いと言われている10月のデータがないのが残念ですが、とりあえずこのデータを使って今年の各月の推移を、令和3年~6年まで比較してみました。

年ではなく年度(4月から翌年3月まで)のデータですが、冬季は冬眠のため出没件数が極めて少なくなるので歴年でも年度でもあまり差はありません。令和7年は9月までのデータであり、10月に多くの出没があったことから、これまでで最高だった令和5年を上回ることは間違いないと思われます。
また月別出没情報を見ても今年はこの5年間で最多レベルを継続しており、10月も全国で令和5年の約6000件を上回ることは間違いないと思われます。
熊の生息頭数については、令和7年10月30日付の環境省の「クマ被害対策等について」という資料で、”ヒグマは約1万2千頭、ツキノワグマは約4万2千頭以上と推計。 (推計の中央値。ツキノワグマは県ごとの推計値の合計値)”と書かれています。ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州、四国に生息し、九州では絶滅したとされています。
今年の4月から9月までの都道府県別の出没情報件数は下図のようになっています。これは冒頭の環境省の資料ですが、各都道府県庁からのヒアリングに基づき作成されたもので、北海道は道としての集計を行っていないため入っていません。また九州と沖縄も含まれていません。

岩手県、秋田県の出没件数が突出しています。ついで長野、新潟が続き、京都、島根と少し意外な府県が顔を出します。さのあと青森、宮城と東北地方が続き、兵庫、山形とここまでが最多10道府県です。出没件数が今年度1000を超えるのは18道府県、100を超えるのは30都道府県と意外と多くの地域で出没が報告されているのに驚きます。
その逆に千葉県で1件も報告されていないのも意外でした。熊のいない県として有名だそうです。茨城県も栃木や福島で多数の出没情報があるのにたった1件しかありません。
さて多数の出没情報のあった上位10道府県で、この5年間の月別出没情報件数を比較してみました。10月の件数が知りたかったので各道府県庁のホームぺージで資料を探し、わかる範囲でグラフに入れてあります。

これら東北4県については、傾向はほぼ同じで、2年前の令和5年は10月に大出没があったのですが、それを上回る勢いです。青森と宮城は10月のデータがありましたのでグラフに加えましたが、2年前をはるかに上回っています。岩手と秋田には出没件数のデータが見当たりませんでしたが、代わりに人的被害状況が一覧表で提供されていました。もはやそこまで深刻な状況であると理解しました。
続いて山形、新潟、長野、京都です。

この4府県はすべて今年10月の件数が判明しましたのでグラフに描き入れており、京都を除き過去5年で最も出没多数な10月となりました。山形と新潟は、上の東北4県とほぼ同じ傾向ですが、京都府は少し様子が異なり、今年は必ずしも出没件数が過去5年で最多ではありません。むしろ昨年の方が出没件数が多くなっています。

京都府の傾向は兵庫県、島根県とも共通するものがあります。すなわち同じ出没が多いと言っても東北日本と西日本では傾向が異なっているということになります。この理由として最も有力として考えられるのは、食料事情です。どんぐりやブナ、ミズナラなどの熊の食料となる実の豊凶が東北地方とは異なることが、熊の出没に大きく関わっているのではと想像されます。兵庫県のサイトでは、どんぐり、ブナ、ミズナラは今年は豊作とありました。
さて北海道についての情報がありませんでしたが、今年の夏には知床で東京の会社員の方が熊に襲われ亡くなられたことが記憶に新しいところです。前述したように北海道全体での統計がありませんので、各市町村を調べてみました。市町村の数が多いため全部を調べることは私の能力を超えていますので、出没情報件数がわかりやすく記載されているところを書きだしてみました。

この表を見ていて気が付いたことがあります。それは水色で色付けした市町村では、10月の出没件数が9月から激減しているということです。地理的にはこうした市町村はいずれも北東側に位置しており、北海道でもより寒冷な地域だと思われます。こうした地域では、10月はもう十分寒く冬眠に入る熊が多かったのではないかと想像しています。
ツキノワグマとヒグマのどちらがより出没件数が多いのかということも気になりますが、北海道全体の出没件数がわからない限り比較ができませんので、これは今後の宿題としたいと思います。