かんとこうブログ
2025.12.11
世界と日本の粉体塗料需要予測
先日、日本パウダーコーティング協会 の機関誌 「パウダーコーティング誌2025年秋季号」に、同協会立敏行氏による「世界の粉体塗料需要の予測と世界の塗料メーカー売り上げ規模ランキングのご紹介」という記事を見つけました。(下記URL)
https://www.powder-coating.or.jp/pc/2025at/03.pdf
出典は日本塗料工業会を通じて入手した「Orr&Boss社」の2030年までの需要予測から、粉体塗料部分を抜き出したものであると書かれていました。Orr&Boss社は、世界の塗料工業会と互恵関係にあり、工業会側からデータ提供を受け、全体を集計して予想も含め塗料工業会側へフィードバックしています。と能書はこのくらいにして実際のデータをご覧ください。

世界の粉体塗料2025年における需要見通しは416万トンであり、その内訳はアジア、なかんずく中国が圧倒的多数を占めています。金額は140億$、1$155円として2兆1700億円と推定されています。
下図数量と金額の内訳を示しますが、数量ではアジアが世界の8割以上、金額では世界の6割以上とアジアが圧倒的なシェアを誇っています。

数量、金額ともアジアについで北米、欧州と続き、これら3地域で90%以上を占めます。
次に、国別データで比較してみます。

ここでも中国が圧倒的なシェアを誇っており数量では世界の3/4弱、金額でも5割強のシェアを有しています。国別の粉体塗料需要数量と金額の図を示します。中国があまりにも多いので縦軸は対数軸にしています。

日本はというと数量、金額とも世界で5番目となっています。とここまではそんなものか、と思っていましたが、いざ金額を数量で割り算をして単価($/Kg)を計算してみたところ、驚きの結果が得られました。

アメリカが10.6$/Kg、ドイツが8.2$/Kg、日本が3¥6.6$/Kgとこのあたりはまあ当たらずとも遠からずなのですが、中国は単価が2.33$/Kgとなってしまいました。1$=155円で計算すると361円となります。平均単価361円の粉体塗料というのはあり得るのでしょうか?
また国民一人当たりの数量と金額を計算してみた結果が下図です。

数量ではやはり中国がずぬけて多いとなります。2位のイタリアや3位のポーランドの2倍以上の需要があることになります。ちなみにこれもOrr &Bossのデータで2024年の各国の塗料数量と金額の図があります。(下図)

これによると中国の塗料全体数量が9L/人です。粉体塗料をどうやって容量に換算するかという問題はあるにせよ淡々と数値だけを比較するとやはり粉体塗料の割合が他の国の2倍以上と推定されます。つまり中国においては、欧米や日本に比べて粉体塗料の全塗料に占める割合が2倍以上あり、単価がアメリカの22%、ドイツの28%、日本の35%ということになります。
これはあくまで統計数値からの計算ですので、真偽のほどはわかりません。このほか粉体塗料特有の問題が日本にはあり、なかなか需要に対する正確な統計数値が得られにくい側面がありますが、ここではそれに触れません。