かんとこうブログ
2025.12.20
電気料金と電源構成など
先日、北海道電力が泊原発の再稼働を申請する旨のニュースがありました。理由はエネルギーコスト高騰により上昇した発電コストを下げたいというものでした。主要電力10社では、発電の電源構成がそれぞれ異なっており、電気料金もバラバラになっています。各社電気料金の推移と電源構成について比較してみました。
主要電力10社の電気料金の推移を示します。ここでは、契約電流30A、消費電力370KWhの条件での電力料金の推移をグラフ化しています。ただし、横軸は、時間軸ではなく、電力料金変更の節目節目となっています。データは下記サイトから引用させていただきました。
https://sfplan.jp/npc/elect-price/price-comparison10

中央の2023年4月5月から、2023年6月以降2024年までの間で大きく料金がジャンプしていますが、これは電力量単価(1Kwhあたりの価格)が改訂されたためです。しかしながら、10社中3社は、この時点での電力量単価がほとんど変わっていませんでした。その3社とは中部電力、関西電力、九州電力です。
2025年10月時点での電気料金とKWhあたり単価を下図に示します。大幅値上げをしなかった3社は現在でも他社に比べて電気料金が安く、当然ながらKWhあたり単価も安くなっています。

どうしてこの3社だけ電力量単価を大幅にあげずにすんだのか、これは電源構成を見るとある程度想像がつきます。データは下記URLから引用させていただきました。2024年の発表で、2022年当時の電源構成となっています。
https://power-hikaku.info/column/dengen/

ここで注目してもらいたいのは、下段中央の電子力です。東日本大震災後、原発を再稼働できたのは、関西電力、四国電力、九州電力の3社です。つい最近新潟県の刈羽・柏崎原発の再稼働が決まりましたが、まだ稼働していません。
ここで先ほどの電力量単価を大幅に上げなかった3社を思い出してもらうと関西電力、四国電力、九州電力でした。大震災前、原発は最も発電単価が安くベース電源として使用されていましたので、コスト的にはこれを使えるかどうかは大きな影響があります。したがって関西電力、九州電力については原子力発電を使用できたため、電力量単価を大幅にあげずに済んだのではないかと推定できます。
残る1社は中部電力です。中部電力の電源構成の特徴は、LNG火力発電の割合が高いことです。一方で石炭火力の割合は、10社の中でも最低の部類であり、石油火力はありません。全般的に東京電力と似た構成になっていますので、電源構成だけで、大幅改定をしなかった理由はわかりません。
ところで、今の電気料金の水準は実際にどのくらい高くなったのでしょうか?これを考えるには、もう少し正確に電力料金を計算する必要があります。電力料金は複雑で、次の4つの要素からなっています。一番目は基本料金です。基本料金は最大電流量で異なっており、大きな電流量ほど高くなっています。二番目は電力量単価で、使用した電力量に単価を掛けて計算します。複雑なのはこの電力量単価がいつくかの段階に分かれており、使用量が多くなるにつれて単価が高くなります。東京電力の場合、120KWhまでが29.80円/Kwh、121~300Kwhまでが、36.40円、そして301KWh以上が40.49円/Kwhとなります。通常より多く購入した方が割安になるのですが、逆に高くなるのです。そして3番目が燃料費等調整額単価で、毎月変動する燃料費に合わせて電気料金を調整するためのもので、使用した電力量に掛けて計算されます。そして最後が再生可能エネルギー発電促進賦課金で、電気料金に加算させる理由が全く納得できませんが、とにかく3.98円一律に消費電力に掛けて加算されます。
とにかく複雑で簡単には計算できません。東京電力が発表している過去のそれぞれの単価に従って、東京電力が設定している標準世帯(契約電流30A、電力使用量260KWh/月)で計算してみました。左が電力料金、右がそこから基本料と再生可能エネルギー発電促進賦課金を差し引いたものです。

両方とも同じ形のグラフですが、その差が2000円ほどあります。基本料金と再エネ賦課金の合計がそのくらいだということです。仮に2021年1月を100とすると2025年12月の電気料金は135.5になります。一方電力料金から基本料金と再エネ賦課金を差し引いたものは140.7となりました。単純な消費電力に比例する部分の方が大きくなりますがその差はさほどでもありません。それよりもなんだかんだと言っても2022年のウクライナ侵攻後の高騰時からさほど安くなっていないということです。
それではこの電力料金を電力料金を電力量単価比例部分、燃料費調整部分、基本料貴+再エネ賦課金の3つにわけて推移を示します。

電力量単価比例部分については、2023年6月に2000円以上あがりそれが今でも続いています。燃料費調整額は、2022年の後半に調整額の上限となり、しばらく電力会社が燃料費高騰分を負担せざるを得なくなりましたが、2023年6月の電力量単価改定を機に、マイナスに転じ現在に至っています。つまり電力量改定時に想定された燃料費よりも実際の燃料費が安くなったため、いくらか割り引きをしてくれている状態が続いているということです。基本料金と再エネ賦課金の合計は、前の二つに比べればほぼ一定と言ってもよい状態です。
別な言い方をしますと2023年6月に電力量単価が改訂になって、1KWhあたり約10円上がりましたが、その後はエネルギー価格が下がり、燃料費調整額で1KWhあたりこちらも約10円さがりましたので、2023年以降はそれ以前と電力料金としてはあまり変わらないというのが結論です。ただし、2021年1月と比べれば、2023年6月の時点でみても標準世帯(260KWh)で1300円ほど上がっていますので、上がったまま下がらないというところが私たちが感じるところではないでしょうか?
また、エネルギーコストが2022年当時と比べたら下がっていることも事実です。(下図:数値は世界経済のネタ帳から引用)

2023年6月から見ればほぼ横ばいですが、2022年のピークから見れば値下がりしていることは事実ですので、こうした値下がりが電気料金に反映されていないという感じをお持ちの方も多いのかもしれません。