かんとこうブログ
2026.01.14
レアアースについて若干の解説
中国が日本に対し、軍需利用にも転用可能なものに使用されるレアアースの日本への輸出を規制する旨の決定をしたとのニュースがありました。今やレアアースは何にでも使用されているので大変なことになるとの意見もあり、動揺が広がっているようですが、今日はこのレアアースについて調べたことをご紹介したいと思います。
レアアースと聞く度に、それはレアメタルとどう違うのかとの思いがあったのですが、今回調べてみました。レアアースとレアメタルは下図のような関係にあります。

レアメタルというのは文字通り希少な金属として選ばれたもので31種類あります。「希少な」というのはどの程度の希少さか、という基準がないようで、選ばれている理由はそこそこ希少で有用性が高いということのようです。
レアメタルの中で、最も地殻内の存在量が多いのがチタンで4400ppm(0.44%)です。塗料に使用される二酸化チタンを構成する金属です。以下、マンガン、バリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バナジウム、クロム、ニッケルという具合に存在量の多いに書き出してみるとおなじみの名前が多いことがわかります。さほど希少ではないけれど有用性が高いものはれメタルに入れておこうという意図が感じられます。因みに貴金属の代表である金の存在量は、0.004ppm、銀は0.07ppmですので、レアメタル全般は貴金属ほど希少な存在ではなさそうです。
さてレアアースは別名希土類であり、さきほどのレアメタル31種類のうちの1種類になります。希土類だけどうして単元素ではなく類なのかというと希土類は化学的性質が大変似通った一群であり、当初すべて正確に分別することすら難しかったことも要因となっているようです。17種類の元素が希土類に該当しますが、原子番号21のスカンジウム(Sc)、原子番号39のイットリウムと原子番号57~71のランタノイドがこれにあたります。ランタノイドというのは「ランタンのようなもの」という意味で、この15種類の元素は性質がよく似ているため周期律表ではひとまとめにしてランタノイドという総称で表示され、欄外に別枠で15種類の元素が一覧で示されています。なんだか元素として半人前の扱いですが、いまや人類にとって貴重な存在になっているわけです。このごろはランタノイドだけをレアアースと呼ぶ場合もあるようです。
代表的なレアアースの地殻内の存在量は、ネオジムが30ppm、ユーロピウムが6ppm、イットリウムが30ppmと決して多くはありませんが、金や銀といった貴金属からみれば2桁から3桁多い存在量であり、ほぼ銅なみの存在量です。
この希土類の用途について下表にまとめてみました。以下の3つの図表はついてはJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)の鉱物資源マテリアルフロー 2024 7.レアアース (REE) から引用させていただきました。
https://mric.jogmec.go.jp/wp-content/uploads/2025/11/material_flow2024_REE.pdf

17元素すべてが有用というわけではなく、用途がほとんどないものもあります。日本での使用量の多い4種は、セリウム、ランタン、ネオジム、イットリウムです。ネオジムは磁石に、セリウム、ランタンはガラス、触媒、電池など幅広い用途に、イットリウムは蛍光体などに使用されています。ネオジムを用いた磁石はモーターには必須な物質で、それゆえにモーターを使用するすべての商品に影響が出るのではと懸念されています。
そのほか、ユウロピウムは蛍光体と書かれていますが、昭和の時代に某メーカーが希土類蛍光体をブラウン管に使用したカラーテレビに「キドカラー」と命名して販売していました。この「キド」はもちろん「希土」から来ています。
2023年に生産されたレアアースのマテリアルフロー、すなわち国別内訳、種類別内訳です。国別では盛んに報道されているように中国が圧倒的であり、種類別では金属状態でのレアアースが48%と最多で、酸化物を中心としたセリウムが2番目、さらに酸化イットリウム、酸化ランランと続きます。

国内の需要動向ですが、世界同様、セリウム、ジジム+ネオジム、ミッシュメタルがその大半を占めます。ジジムはネオジムとプラセオジウムの混合物です。ミッシュメタルとはさまざまなレアアースの混合物です。この表からは、レアアースの最終的な用途まではわかりませんが、JOGMECのサイトでは「強力な永久磁石・モーター(電気自動車・航空機・風力発電機など)、ニッケル水素二次電池、コンデンサー・センサーなどの電子・電気製品、触媒(石油精製・自動車排ガス用)」など非常に広範かつ重要な製品群とされています。

最後に、少し技術的な話をしたいと思います。どうして希土類(レアアース)がこのように有用性が高いのかということです。その答えはレアアースの電子配置にあります。電子配置とは電子がどの軌道に何個配置されているかということで、原子の設計図のようなものだと考えてください。レアアースの電子配置を下表に示します。
レアアースの特徴は、これら17種類の化学的性質がとても似ていることですが、その理由は一番外側にある外殻電子の配置が同じであるからです。化学的性質は、ほぼ最外殻の電子配置によって決まります。それぞれの元素の最外殻の電子の入る軌道をピンクに色付けしていますが、スカンジウムは4s軌道に、イットリウムは5s軌道に、ランタノイドはすべて6s軌道に二つずつ電子が入っています。レアアースはすべて最外殻がs軌道で二つ電子が入っているため化学的性質がよく似ているのです。

上の表で3dとか4sは軌道の名前で、数字とアルファベットの組み合わせで軌道が表されます。内側から外側へ向かって左から右へ順番に並んでいます。数字は軌道の内側から外側むけての順番に1から7までつけられています。アルファベットは軌道の形を表わしs、p、d、fの4種類があります。軌道に順番は少々複雑ですのでこの表の通りにならんでいるとだけ説明しておきます。
レアアースの特徴は、最外殻からひとつ内側の軌道、黄色で色付けしたスカンジウムの3d軌道、イットリウムの4d軌道、ランタノイドの4f軌道に入っている電子に起因しています。このひとつ内側の軌道は化学反応にはほとんど関与しないのですが、電子軌道の絡みあいによって強い磁石を作るとか外部からエネルギーを与えた場合に電子が励起して起きる蛍光現象に関しては大いに関与するのです。さらに詳しい説明にはもっと複雑な電子スピンや角運動量といった話をしなければなりませんので、ここでへは触れません。
磁石を強力にする元素はネオジム、サマリウム、ジスプロジウムでした。これらの最外殻からひとつ内側の4f軌道に入っている電子の数はそれぞれ、4、6、10です。規則性がありそうな感じがしています。4f軌道に電子が8個入った元素があればこれも強力磁石を形成しそうですが、そうした元素は存在しません。
こうしたレアアースですが、日本の領土にも大きな鉱脈があることがわかっています。ただし、南鳥島沖の海底であり、採掘にはコストがかかるようですが、試験採掘がまもなく開始されるという情報もあります。明日この南鳥島沖のレアアース泥とその試掘についてご紹介したいと思います。
本稿のレアアースの電子配置や磁石、蛍光体に関する記述は下記の書籍を参考にしました。
「宇宙で一番美しい周期表入門」 青春新書 小谷太郎 2007年12月