かんとこうブログ
2026.01.19
帯状疱疹のワクチンが認知症に効果がある!?
最近、「帯状疱疹のワクチンが認知症に効果がある」ということをとある雑誌でみました。気になって調べてみると大変信頼性の高い情報であることがわかりましたので紹介させていただきます。
この話、2025年の4月25日発行の「Nature」にこれに関する論文が掲載しました。その後同じ研究の続編として、医学誌「Cell」の12月11日号に掲載されました。ネットを探すとこの両方の論文についてそれぞれ詳しい解説記事が載っておりましたが、「Cell」の論文の方が「Nature」の内容をも包括する印象でしたので、「Cell」の解説記事を中心にご紹介させていただくことにします。(それぞれのURL,接続先は以下です)
元の論文 「Nature」https://www.nature.com/articles/s41586-025-08800-x
元の論文「Cell」The effect of shingles vaccination at different stages of the dementia disease course: Cell
Cell誌の論文の解説は 帯状疱疹ワクチンと認知症予防|Cell最新研究と横浜市の定期接種|戸塚クリニック
この解説は大変丁寧で分かりやすかったので、そのまま引用させていただき、最低限のつけたしをさせていただくことにしました。
最初に結論を申し上げます。ウエールズ地方における大規模な調査の結果、「認知症の発症が少ない(リスクが低い)傾向、発症後も、進行や死亡リスクが低くなっている傾向が“示唆された」ということです。これだけ読むと迫力に欠ける印象かもしれませんが、大規模かつ長期間の調査結果であり、その示唆する内容の信頼性は非常に高いものがあります。さらに詳しい結論を以下に示します。

大変驚くべきことに、帯状疱疹のワクチンを接種した人は、しない人に比べて認知症を発症する確率が低いこと、さらにすでに認知症を発症している人が認知症を理由として死亡する確率が減少すること、また全ての原因による死亡の確率が減少することが判明したということです。
確率が減少すると言われても、それがどの程度減少し、どの程度信頼できるのかが気になるところですが、権威ある科学誌に掲載される論文ですから、統計的に有意であることはもちろん、相対差ではなく、9年後の絶対差としても軽度認知症と診断される確率がで3%、認知症で死亡する確率が10%、全ての原因による死亡が8~10%減少したと解説されています。
ではどうしてこのような調査ができたのか?ということですが、これも丁寧な解説があります。

その理由はウエールズのワクチン接種制度にあります。一時期、年齢を限定してワクチン接種をする制度が存在したためとされています。具体的には1933年9月2日以降に生まれた人だけを対象にワクチンを接種するという制度です。この制度により似たような年代で3種類の人たちがグループ分けされることになります。一つ目は1933年9月1日以前に生まれた人で当然誰もワクチンを接種していません。二つ目は1933年9月2日以降に生まれた人でワクチン接種対象でありながらワクチン接種をしていない人、三つ目は1933年9月2日以降に生まれた人で実際にワクチン接種をした人です。意図せずにこうした3群のグループが生じ、その後の健康調査結果から上記の結論が導かれたというわけです。自然実験とは研究者が意図的に操作せずに、自発的にあるものの因果効果を解析することであり、まさに帯状疱疹ワクチン接種と認知症発症や死亡とは意図せざる因果効果といえるでしょう。
さらに帯状疱疹ワクチン接種の認知症発症や死亡への効果については男性よりも女性において顕著であり、数字でみても明確な差があります。また冒頭述べたように、その効果は認知症発症から重篤化、死亡にいたるまですべての期間において認められるという驚くべきものでした。
ここで実際の「Cell」の論文のデータをご覧ください。細かい解説はしませんが、ワクチン接種者について軽度認知症発症者、認知症を死因とする死亡者の両方で減少方向への効果が発現していることが判ると思います。

さらに観察期間に沿ってこうした効果がどう変わっていくかを調べた結果が以下です。

図から明らかなように観察期間が長くなるほど、ワクチン接種の効果(軽度認知症発症者および認知症による死亡者割合)は大きくかつ明らかになっていきます。
とここまでで、帯状疱疹ワクチン接種による認知症への効果は明らかですが、その作用機序については下図右の囲みのように解説されています。

帯状疱疹を発症させるウイルス(VZV)は脳やせき髄の炎症、脳梗塞のリスク、アミロイドβやτタンパクの異常免疫老化へ影響しているとの研究結果もあり、ワクチン接種でVZVの再活性化を防ぐとこうしたリスクを減らすことができるのではないかという説が紹介されています。ただし、までこれも仮説段階で検証はできていません。
ここでくると気になるのは、ウエールズで使用されてワクチンと日本で接種されるワクチンの違いです。ウエールズで使用されたワクチンは日本で流通されていません。またワクチンの種類も旧来の弱毒生ワクチンであり、日本で現在使用されているワクチンとは異なります。しかし先ほどの仮説が正しければVSVの再活性化が防げれば効果があるということになります。
最後に日本での帯状疱疹ワクチ接種制度のご紹介です。地方自治体により費用などが異なっているので、詳しくは地方自治体にお問合せくださいとのことです。認知症予防に効果があるとすれば、さらにワクチン接種の意義が増すかもしれません。研究と作用機序解明が進むことを祈ります。