かんとこうブログ
2026.01.26
レアアースフリーのモーターは作れるのか?
中国からのレアアースが輸入できなくなるとモーター類が生産できなくなるのではないかという懸念があります。そうした懸念は、当然以前からも存在していたわけで、その対策も講じられているのではないかと思い、レアアースフリーモーターについて調べてみました。するとすでにいろいろな対策ができあがりつつある印象を受けました。
まずは、なぜ電動モーターにレアアースが必要なのかから始めたいと思います。Advanced Technology Xさんのサイト(以下の接続先)から引用させていただきました。
https://www.atx-research.co.jp/contents/rare-earth-free-motor

レアアースを使用する理由は、モーターに使用される永久磁石を強力にする(ネオジム)ためと高温環境下での磁力低下(減磁)を防ぐ(ジスプロシウム)ためです。ネットで探すと、これらレアアース類の使用を極力抑えたり、使用しなかったりしたモーターの開発例がいろいろと見つかりましたので、その中からいくつかご紹介したいと思います。
最初はネオジム、ジスプロシウムを使用しない(軽希土類のサマリウムは使用)モーターで、プラスチックやゴムなどに磁石微粒子を練り込んだボンド磁石を利用し、表面積を大きくできるU字状に磁石を埋め込んだIPMモーター(回転子内部に磁石を埋め込んだモーター)です。自動車関連部品を製造しているJtektが2019年に発表しています。ただし、その後の情報は特にありませんでした。

ここで重希土類フリーと書かれていますが、これは希土類の17元素のうち、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)とランタノイドのうちランタン(La)からユウロピウム(Eu)までの7元素を軽希土類、ガドリウム(Gd)からルテニウム(Lu)までを重希土類と定義されています。ネオジム(Nd)とサマリウム(Sm)は軽希土類、ジスプロシウム(Dy)は重希土類になります。重希土類は軽希土類に比べさらに希少性が高いとされています。
同様に重希土類フリーの磁石を使用したモーターについての発表は昨年にも株式会社PROTERIALからありました(下記接続先)。磁束密度と(高温における)保持力をジスプロシウムなしに両立させ、電気自動車に駆動用にも使用可能なモーターを開発したということですが、すでに第4世代とありますのでかなりの熟度に達しているのではと推測されます。ただし、どのようにして高温での磁力低下を防いだかという詳しい情報はありません。
株式会社PROTERIALの発表内容 https://www.proterial.com/press/2025/n0722b.html


さらにレアアースを全く使用しないモーターについても発表がありました。日立製作所、本田技研工業、JICキャピタルが共同出資しているAstemoからの発表です。(下記接続先)
https://www.astemo.com/jp/news/20251027-01/
この永久磁石を使用しないモーターの動作原理は私には難しくてうまく説明できませんが、「新型モーターでは、ローターコアの形状による磁気抵抗(リラクタンス)の差を利用して回転力を生み出す方式を採用しています。磁力を伝える経路を複数の層に分ける「多層フラックス構造」を開発し、ローターコア部分に磁極が形成されるように電流を適切に制御する」仕組みだそうです。以下は同社のサイトから転載したものですが、さしあたりEV向け駆動用モーターにはレアアースを使用したものを使用するが、パワーアシスト用途の副駆動用にはレアアースを全く使用しないものを使用する形で実用化を進めると書かれています。


これらを見ていると、当面ネオジムなどある程度の希土類は使用することになりそうですが、いずれネオジムはじめ一切の希土類も使用しないモーターの実用化を期待できるのではと感じました。