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かんとこうブログ

2026.03.06

中分子とRule of 5

最近、中外製薬のTVのCMで「中分子」という言葉を聞く機会が増えたように思います。「中分子」とは文字通り分子量が小さいものと大きなものの中間という意味ですが、この中分子の薬にはどんな特徴があるのでしょうか?いろいろ覗いてみて一番わかりやすかった「AnswersNews」さんのサイト(下記URL)から引用させていただくことにしました。すでに4年以上前の記事なので、創薬自体はもっと進んでいると思われますが、ここでは中分子創の概要をご紹介することにつとめ、それに伴って「Rule of 5」についてもご紹介したいと思います。この「Rule of 5」はほんの少し塗料にも関係がある話です。

https://answers.and-pro.jp/pharmanews/22308/

  

要点を下図にまとめました。全部読むのが面倒な方のために、以下に要約を書いてみました。

既存の薬は大別して低分子(分子量500以下)医薬品と高分子量(分子量15万程度)の抗体医薬があり、中分子医薬品はこれらの中間に位置付けられます。低分子医薬品と高分子抗体でカバーできない範囲を狙って開発されました。その特徴は、細胞内で効力を発揮、標的にだけ作用、化学合成可能、経口投与可能など、低分子と高分子の「いいとこどり」をしたものになっています。(下図左上)

開発を進めているものは、ほとんどがこれまでの薬の範囲では不可能だったものであり、低分子と同様に細胞内で活性を示す場合でも標的分子への結合部位を変えて、より強力な薬効を狙っています。(下図左中)

どのような中分子化合物を研究しているかというとすべて環状ペプチド(アミノ酸がペプチド結合で多数つながれたもの)であり、すでに26の候補物質が見つかり、薬剤としての研究が進められています。(上図左下)

最も進んでいるものはすでに臨床試験が開始される段階に来ており、その他も続々と研究が進められています。(上右図)

ここまでが本当に大まかな中分子薬の説明ですが、この中分子薬の開発には克服しなければならない課題がありました。それが「薬らしい性質の規定」と「「薬らしい性質」を満たすライブラリーの構築」でした。

低分子医薬品については、「Rule of 5」というものがあり、低分子医薬品が経口薬として使用できるかどうかをあらかじめ判断できるようになっています。このおかげで創薬の効率が飛躍的に高まったとされています。中分子でも同様にこうした「薬らしい性質の条件」が決まっていないと膨大な数を試験しなければならなくなります。しかもそれだけではなく、この中分子医薬品が実際に多くの病気に対して効果を発揮するようになるためには膨大な試料群を用意しなければなりません。

これらの課題に対し、中外製薬は、膨大な環状ペプチドを合成し、その過程で「薬らしい性質」の条件を規定し、10の12乗(1兆)にもなる非天然型環状ペプチドのライブラリーを構築することに成功しました。

以上が「中分子創薬」のお話です。ですが、実は私にとっては先ほどの「Rule of 5」の方が、これまで書いてきた「中分子創薬」よりも興味深かったのです。というのも「Rule of 5」の条件がいかにも塗料の原材料の規格みたいだったからです。 分子量、オクタノール/水分配係数、OHまたはNH基数、NまたはO原子数、いずれもなじみのあるものでした。

この「Rule of 5」が何を規定しているかと言えば、経口で投与された場合に、細胞内に到達して標的に作用できるかどうかということです。分子量が大きすぎれば、細胞内まで到達できません。さらにオクタノール/水分配係数が十分大きくなければ、これも輸液から細胞質に到達するのが難しいと思われます。また水素結合供与体(OHまたはNH)及び水素結合受容体(NまたはO)が多すぎれば、標的以外のものとも相互作用する可能性が高くなります。こうしたことは塗料や塗膜で起きる相互作用に関係する要因ととても似ています。(もちろん、数値は違いますが)塗料においても水素結合の存在はさまざまな現象に関与しています。

さらに、実際に使用されている塗料原料でこの「Rule of 5」に適合するものは非常にたくさんありそうです。代表格は有機溶剤です。通常使用される有機溶剤は、すべてこの条件に適合すると思われます。オクタノール/水分配係数については自信がなかったので調べました。結果は芳香族炭化水素のキシレン3.1~3.2程度でした。

言い方を変えると、もし有機溶剤が経口投与された場合には、細胞内まで侵入する可能性が髙いということになります。私たちが日ごろ使用しているものは、生体にとっては、薬にもなりかねないほど細胞への侵入が容易であるということです。「Rule of 5」は4つの条件のうち3つ以上を満たせば薬剤としての可能性があるというものですので、有機溶剤以外でもこの条件を満たすものがありそうです。樹脂の残モノマー、低分子量成分などは該当する可能性があります。

種々のデータ:有機溶媒と水の相互溶解度・分配平衡 より引用

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