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かんとこうブログ

2026.03.16

第一三共のADC技術について

近頃テレビCMで第一三共が「ADC」なる言葉が登場してきます。説明がないので新薬らしいということしかわかりませんでしたので、調べてみました。何やらすごい技術で、画期的な新薬がどんどん生まれていきそうな感じを受けました。以下にご紹介します。ますは第一三共のHPに載っていたこと(下記URL)から始めます。

https://www.daiichisankyo.co.jp/brand/adc/

    

ADCとは Antibody(抗体)、Drug(薬剤)、Conjugate(複合体)の頭文字をとったものであり、「抗体に結合させたバイオ医薬品」という意味だそうです。抗体とはコロナの時にさんざ使用された言葉ですが、ウイルスや病原など体内の異物に対し,産生されるたんぱく質で特定の構造をもち標的となる異物にだけ結合するように作られています。

ADCの構成要素は3つであり、抗体と薬物、およびその両者を結びつけるリンカーと呼ばれる3つの部品から構成されています。この3つの部品はそれぞれ役割は決まっており、それぞれの役割を果たすことで薬剤をがん細胞まで届けてがん細胞を攻撃することが意図されています。

抗体はこの場合がん細胞に対してだけ特別な結合部位をもっていますので、ADCをがん細胞だけに結合させてくれる薬剤の運び屋さんです。そしてがん細胞にとりついたADCががん細胞内に取り込まれると、それまでADCの中で抗体と薬剤を結合していたリンカーが切断され薬剤が放出されます。そして放出された薬剤ががん細胞を内側から攻撃するという仕組みになっています。

第一三共のHPに掲載されている情報は少なくとも一般向けにはここまでです。大まかには理解できましたは、化学屋の端くれとしては、具体的にどのような物質なのかわからないといまいち納得感が乏しい感じでしたので、さらに調べてみました。Reinforz Insightというサイト(下記接続先)にかなり詳しい情報が載っていました。文章を引用してご紹介します。

第一三共の未来戦略:ADC覇権とグローバル展開が切り拓く新時代の製薬モデル | Reinforz Insight

専門用語が多いのでなかなかわかりにくいところが多くあると思いますので、超意訳していきます。

①エンハーツという第一三共の薬剤は2025年のアメリカ臨床腫瘍学会でその成果が発表され一躍脚光を浴びるようになった。②さらに注目すべき点は、HER2というがん特有のタンパク質の存在が通常認められないがんについても適応が拡大されたことである。③エンハーツに続きFDAの承認審査を受けている2番目のADC「ダトロウエイ」は、承認されれば最初のTROP2を標的としたADCとして市場を開拓することになる。④第一三共の強みは、ADC全体にわたって開発を展開していることであり、多様ながん特有のタンパク質を標的として、系統的、相互補完的に開発が進められている。要すれば、すでの脚光をあびるがん治療薬が認められたおり、これまでADC治療薬が用意できていなかったがんについても効果が認められ、さらに広範囲のがんにもその応用範囲が拡大されると期待されているということです。

下表に掲げたADCの他、すでに29種類ものADCが臨床試験段階にあるそうです。

なにやら先々週に書いた中外製薬の中分子薬のような感じで、第一三共がADCに関しては他に大きく先んじているようです。

ここまで調べても具体的な物質名が出てきませんので、さらに調べるとDrug Delivery System誌に具体的なADCの組成が掲載(下記URL)されていましたので、それをご紹介します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/36/1/36_28/_pdf

   

すでに認可されたADCの一覧表がありました。これにはリンカーのタイプ(どこが切断されるのか?)がわかりました。表の右端の欄です。

リンカーのタイプはジスルフィド型、Val-Cit型、Gly-Gly-Phe-Gly型、カーボネート型と非切断型の5種類のようです。もう少し具体的なリンカーの構造図とリンカー切断部位の構成成分を示します。

さらに詳しい認可済ADCの構造図もありましたので、切断部位を書き込んでみました。

切断部位が意外に抗体から遠い場所にあることに驚きましたが、構造をみただけでなんとなくADCのイメージがわかりました。

また他の関連資料の中には、具体的な数字をあげて、こうしたADCの市場での高評価により、第一三共の業績向上に大いに貢献しているとの記述もありました。実際に売上、利益に貢献しているのです、薬剤の世界では、大変なヒット商品をブロックバスターと呼ぶのだそうです。街の一区画(ブロック)を吹き飛ばすようなすごい威力のある商品という意味だそうですが、この第一三共のADC薬品群は、前述のReinforz Insightの指摘のように、まさに「単独のブロックバスターに依存するのではなく、複数の薬剤群が相互補完的に成長を支えるポートフォリオ型の発展モデル」なのかもしれません。日本の医薬、頑張っています。

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