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かんとこうブログ

2020.04.24

フェルメールの青

フェルメールは、今さら何の説明もいらないほど有名な画家です。17世紀オランダを代表するバロック画家で、その作品数は少なく、現在確認できるのは37点と言われています。今日は、そのフェルメールが使用していた絵具に使用されていた顔料について書きます。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、外出の自粛要請が出ている中、しばらくフェルメールの世界に思いを馳せてください。


ウルトラマリン・ブルー(ラピスラズリ)が使用されている真珠の耳飾りの少女のターバン部分
(そごう美術館 フェルメール光の王国展2018の複製画より)

 2018年の7月28日から9月2日まで、横浜のそごう美術館で、フェルメールの作品37点が一挙に展示(フェルメール光の王国展2018)されました。といっても、すべて最新の技術で再現された複製画でしたが、複製といえども一挙にこれだけの作品を見るチャンスは他になく、同時にさまざまな解説文も同時に紹介されていて、とても有意義な展示会でした。解説の中には、当時の顔料についてもかなり詳しく解説されていました。

 解説に登場した顔料は全部で13種類が紹介されていました。カーマインレッド、黄鉛、イエローオーカー、レッドオーカーなど塗料でもなじみのある顔料もありましたが、何と言っても注目は、ウルトラマリン(ラピスラズリ:瑠璃)でした。フェルメールの青と呼ばれるあの印象的な青です。フェルメールの代表作である「真珠の首飾りの少女」のターバンの青といえば色が思い浮かぶ人も多いかもしれません。前置きが長くなりましたが、今日のテーマはこの「ウルトラマリン・ブルー」とその材料である「ラピスラズリ」についてです。

「ウルトラマリン」という言葉の意味は。「海を越えてきた」という意味であり、当時この材料がアフガニスタンからの輸入でしか入手できなかったことに由来しています。「ウルトラマリン」の原料となった鉱石が「ラピスラズリ」でしたが、この「ラピスラズリ」本来は宝石として用いられているものでした。人類に認知され、利用された鉱物として最古のものと言われ、エジプト、シュメール、バビロニアなどの古代から、宝石として、また顔料「ウルトラマリン」の原料として珍重されました。ラピスはラテン語で「石」 (Lapis)、ラズリはトルキスタンにあるペルシア語の地名に由来します。


ラピスラズリ(中畑顕雅氏提供)

この「ラピスラズリ」の主成分は「ラズライトLazurite、和名は青金石」であり、日本画でも使用される「群青」と同じ鉱物です。組成を化学式で書くと、(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2となるようですが、青のイメージがわくでしょうか? 「群青」の「ラズライト」が主に顔料として使用されたのに対し、「ラピスラズリ」はあくまで主用途が宝石としての使用でした。

今では「ラズライト」は人工的に合成されるようになり、「ウルトラマリン」も安価になりましたが、当時宝石を原料とした「ウルトラマリン」はとてつもなく高価でした。そんな高価な「ウルトラマリン」をフェルメールは、なぜ惜しげもなく使うことがでたのでしょうか?

今でこそフェルメールは高名な画家で、その絵の価値たるや値段が付けられないほどですが、存命中は、画家よりもむしろ画商を生業としており、第3次英蘭戦争で多額の負債を負ってしまったといわれています。そうしたフェルメールを経済的に支えたのは、彼の妻の母、すなわち義母とパトロンでした。フェルメールの画家としての価値が評価されたのは、死後200年も経過した19世紀になってからになります。

フェルメールの青に話を戻すと、この色が使われている最も有名な絵は、「真珠の耳飾りの少女」ではないでしょうか?この絵は、様々な謎めいた要素があることから、「北のモナ・リザ」あるいは「オランダのモナ・リザ」と呼ばれています。この少女が誰なのか、真珠の耳飾りは誰のものなのかわかっていません。代表作と呼ばれながら、この絵には「IVMeer」というサインがあるのみで日付もありません。謎が謎を呼び、とうとうアメリカの作家トレイシー・シュバリエによって小説が書かれ、その小説が映画化されるまでになりました。

さて最後にもう少し、今度は塗料に関係がある内容に戻します。それは、歴史的に使用されてきた青顔料についてです。 主要な歴史的青顔料を下表にまとめました。

「ラピスラズリ」についてはすでに触れましたが、これ以外にも多くの青顔料が絵画などに使用されてきました。それらのほとんどは大変高価であり、珍重されていたものでしたが、現在ではそのうちのいくつかは工業的に製造され、インキ、プラスチック、塗料の着色剤として利用されるようになっています。加えて色鮮やかな有機顔料がたくさん開発され広く使用されるようになりました。「フェルメールの青」的な色彩は今や皆が使える時代になったということです。

本項を書くにあたり、以下の資料を参考にしました。

そごう美術館 フェルメール光の王国2018の展示説明書

ミューテリウム・マガジンサイト(下記URL)

https://muterium.com/magazine/stories/vermeer-blue/

また、元関西ペイントの中畑顕雅氏より、資料の提供とア

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