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かんとこうブログ

2021.07.01

メタネーションへの期待

一昨日「メタネーション」という聞き覚えのない言葉とともに、経産省が大手ガス会社や商社などと官民協議会を設立で研究開発を強化することになったという報道がありました。「メタネーション」とは、日本語に訳せば「メタン化すること」で、具体的には水素と二酸化炭素からメタンガスと水が生成する反応を利用して、エネルギー問題の解決を図ろうというものです。ネットで調べるといろいろと情報が載っていましたので、今日はこのメタネーションについて調べたことをご紹介します。

まず、水素と二酸化炭素からメタンガスと水が生成するという反応ですが、これは今から100年以上前にフランスのサバティエという化学者が発見した古い技術であると産総研のサイトで解説していました。

反応前後でモル数が減少すること、発熱反応であることから、比較的低温かつ高圧条件が有利とされています。これまでもこの反応を利用してメタンを製造することは技術的には可能でしたが、コストがネックとなり、広く普及するには至りませんでした。

今このメタネーションが注目を浴びている理由は、何といっても二酸化炭素排出問題がいよいよ緊急性を増してきているところにあります。現在構想されているメタネーション事業は以下のような形態となります。日立総研のサイトから引用しました。

左から順にまず余剰電力で、水を電気分解して水を作り、工場や発電所から回収した二酸化炭素とともにメタネーションしてメタンを作り、既存の天然ガスラインなどを使用して、ガススタンドや工場・発電所などに送って燃料として使用するというものです。工場・発電所などで使用し、それらを回収して再利用する限りにおいては、二酸化炭素は排出されないことになります。メタンは天然ガスや都市ガスの9割程度を占める成分であり、既存のエネルギーインフラ(都市ガスのパイプライン・貯蔵タンク、LNG火力発電所、タンカーなど)を有効活用することができるとされています。

このメタネーション、ヨーロッパではすでに実証プラントが始まっており、ドイツの自動車大手Audiは、太陽光・風力発電由来の水素と近隣のバイオガスプラントが排出するCO2からメタンガスを製造し、Audiが市販する天然ガス自動車の燃料として供給しているそうです。(下図は同じく日立総研のサイトより引用)

ここまでは非常に有望な感じを受けますが、問題であるコストはなかなか厳しいものがあるようです。資源エネルギー庁のサイトに以下の図がありました。

この図は以下のように解説されています。「合成メタンが都市ガスと競合できるようになるためには、メタン生成装置の稼働率が100%の場合電力単価が7円でも競合できるようになる。ただしメタネーションの設備コストが現状の1/6に低減できるという条件が必要。LNGと競合するためには、同じ条件で電力単価3円が求められる」つまりいずれにしても、設備コストは大幅にダウンしなければ、コストアップは避けられないということです。
こうしたコストの問題についての研究例が大阪ガスのサイトで見つかりました。

この図は、SOECSolid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物を用いた電気分解素子)による革新的合成プロセスにより従来のサバティエ反応装置よりも高率でメタンを生成させようとするもので、低コスト化とスケールアップに適した新型のSOECの試作に成功したとしています。このほか先にご紹介した産総研のサイトでも反応条件による生産性向上の研究事例が紹介されていました。今後官民あげての研究開発の進展に大いに期待したいところです。

同じような合成としては、二酸化炭素と水素からメタノールを合成する研究も進められています。メタノールの場合には、エチレン、プロピレンをはじめさまざまな化学物質への転換も可能です。塗料の原材料が二酸化炭素由来で合成される日がくる可能性も期待できるかもしれません。

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