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かんとこうブログ

2022.03.11

新規感染者減少にブースター接種は寄与したのか?

毎週木曜日に首相官邸ホームページにワクチン履歴別新規陽性者数の統計数値が発表されており、それをずっと報告してきました。今回発表されたデータは221日から27日までの1週間分ですが、後述するように、ワクチン履歴、年代を問わずすべての階層で新規陽性者が減少しています。

一方で気が付けば、ワクチンの3回目接種(ブースター接種)が進んできており、310日現在で国民の27.5%、65歳以上の高齢者に対しては66.1%まで接種が完了していました。そこで今日はこれまで蓄積してきたワクチン歴別、年代別感染者データとブースター接種データを比較し、果たして3回目接種がどこまで感染者減少に寄与したのかを見てみたいと思います。

まず感染者動向をワクチン歴別、年代別に整理してみたいと思います。

左がワクチン未接種者の10万人あたりの新規陽性者数の推移、右が3回接種者を含む2回以上接種者の新規陽性者数の推移です。これを見ると新規陽性者のピークは、ワクチン歴別、年代別で異なっているように見えます。

ワクチン未接種者における年代別の新規陽性者のピークは、いつであったか、というよりもいつから減少に転じたかを明確にするため、それぞれのデータを下表に示します。

黄色く色づけした欄がそれぞれのワクチン歴と年代の階層のピーク時期です。このピーク時期には、二つの大きな特徴が挙げられます。ひとつはピーク時期がワクチン歴別にはほとんど差がないこと。もう一つはピーク時期は年代によって異なっていることです。さらにもう一つ付け加えるのであれば、2回接種者のうち高齢者の10万人あたり新規陽性者は常に若年層よりも少ないことです。こうした事実は実に不思議なことだと思います。

ブースター接種を決めた際には、「2回接種しても抗体が時間とともに減少し、半年も経過すればブレークスルー感染のリスクが高まる」と言われました。事実海外のデータではそのようなデータも提示されていました。しかし、これが言われていた通りであれば、先行して実施された高齢者の2回接種者の方が、抗体量が少なく新規陽性者が若年層よりも多くなってしかるべきです。しかし、上表で明らかなようにそのようにはなっておらずむしろ若年層の2回接種者の新規陽性者の方が何倍も多いのです。

2回以上ワクチン接種歴のある若年層と高齢者層の新規陽性者数の関係を説明できるとすれば、それぞれの年代の行動をもって行うのが最も合理的であろうと思われます。感染をより恐れる高齢者は、外出を自粛してきたことは想像に難くありませんし、出勤や通学のため外出を余儀なくされる若年層の方が感染リスクに曝される機会が多いことも間違いのないことでしょう。つまりブレークスルー感染のリスクは国民に等しくあるのではなく、それぞれの個人の行動内容にも大きく依存しているということです。

それでは本題のブースター接種がどこまで感染者減少に効果があったのかに話題を移します。

これまで繰りかえしご紹介してきたように、第6波においてもワクチン2回(以上)接種者の新規陽性者は未接種者に比べて極めて低い割合でした。未接種者に比べて2回以上接種者がどれほど感染しにくいかを感染阻止率として計算して図示してきました。計算式は単純で、感染阻止率=(未接種者の10万人あたり新規陽性者数 - 2回接種者の10万人あたり新規陽性者数)/(未接種者の10万人あたり新規陽性者数)*100 です。

左が最も新しい221日から27日までの期間における感染阻止率で高齢者ほど高くなっています。理由は上述の通りです。

左は2回接種者の感染阻止率の推移です。さすがに去年の8月や9月からは低下していますが、オミクロン株という感染力のより強い変異株に対しても全体でも一貫して75%以上の感染阻止率を示しています。また高齢者の方が阻止率が高いという現象も1月以降の期間を通じてすべてに当てはまる現象となっています。

一方ワクチンのブースター接種(3回目接種)の進展状況はどうだったでしょうか?

ワクチンのブースター接種は310日時点で27.5%、上で議論した新規陽性者のデータの最新値である227日時点では17.3%に過ぎません。これでは到底今回の第6波のピークアウトや感染者減少には間にあっていません。間に合っていないとする理由を説明します。

一つはワクチンの効果に関する理論的な点です。今回のオミクロン株の基本再生産数は3.59とされています。当初の原種の効果2.5よりも1.4倍以上高い数値です。これをもとに何%の人がワクチンによって十分な抗体を有すれば感染が広がらないかを計算することができます。基本再生産数をR0、十分な抗体を有する人の割合をX%とすると感染拡大を阻止するためには以下の式が成立する必要があります。R0((100X/1001.0 ここからXを計算すると72.1%となります。つまり国民の72.1%が抗体を持たなければ免疫による感染拡大は阻止できないということになります。これはもちろん現在の27.5%も、さらに高齢者に対する3回目接種率66.1%でも及んでいません。

さらに、一番最初に確認したように、今回の感染ピークは。ワクチン歴別には依存せず、年代に依存していました。ワクチン歴に依存しないということはワクチンの効果がないということではありません。大きな差があるのです。にもかかわらずピークの時期が同じということはどういうことなのでしょうか? これまでも言われてきましたが、こうした感染拡大が波状を形成する理由というのは、ワクチンそのものの本質的な理由によるもの、例えばウイルス自壊説などによるものと考えるべきかもしれません。

これまで人流抑制が感染抑制の鍵と言われながら、今回はほとんどその話が出ませんでした。今回は感染抑止の鍵はもっぱらブースター接種であると言われていましたが、それもまた外れているように思われます。今度こそしっかかりと感染拡大と感染者減少が何によって起こっているのかを究明してもらいたいと思います。誰も説明できないまま、感染が繰り返されるのはもうたくさんです。

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