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かんとこうブログ

2022.04.11

「日本ペイントグループ 中期経営計画(2021-2023 年度)」 進捗説明会 のQ&Aで気になったこと

「日本ペイントグループ 中期経営計画(2021-2023 年度)」 進捗説明会が316日に行われ、会社からの説明のあと、投資家とのQ&Aがありました。Q&Aの内容もいつものように公開されていましたので、拝読しました。多くは所謂投資家目線での質問でしたが、中に2つほど興味をひかれた質問がありましたので、それをご紹介します。(もとの資料は以下をご参照ください)

2022 3 16 「日本ペイントグループ 中期経営計画(2021-2023 年度)」 進捗説明会 説明会要旨

https://www.nipponpaint-holdings.com/assets/files/name/20220317ir02_j.pdf

日本ペイントグループ 中期経営計画(2021-2023 年度)進捗説明会 質疑応答要旨(2022 3 16 日)

https://www.nipponpaint-holdings.com/assets/files/name/20220328ir01_j.pdf

興味を惹かれた点その1は以下に質問に対する回答です。上の資料から引用します。

質問:「塗料市場は原材料高でどの地域も苦しい状況だが、競合他社と比較して貴社の競 争力は増していると捉えて良いのか?」

回答:「「アセット・アセンブラー」としての考え方のもと、本社は各パートナー会社に過干渉しません。(中略)「アセット・アセンブラー」の基本にある、各パートナー会社の 極めて優秀な経営陣が、リスクへの高い感応度も持ち合わせていることが、グローバルで見ても競合他社には無い経営体制だと考えます。また、各パートナー会 社の経営陣全員が、売上成長や市場シェアの向上だけでなく、利益成長も必達と いう意識を非常に高く認識していることが、当社の強さの一つです。」

競合他社との競争力について問われ、自分たちは「アセット・アセンブラー」だから強みがあると答えているわけです。この「アセット・アセンブラー」なる耳慣れない言葉ですが、この説明会の中で説明がされています。その2枚のスライドをお見せします。

 

1枚目にスライドについては、詳しい説明の引用は省略しますが、「アセット・アセンブラー」の概念を成功させられるための条件が、自社の市場環境や構成要素には備わっていると述べています。つまり、社内や市場の環境が、この「アセット・アセンブラー」というやり方を実行するにあたり他社よりも適していると述べているのです。

2枚目のスライドについては、説明を引用します。

「当ページでアセット・アセンブラーのイメージを図示しましたので、ご説明いたします。  このモデルのポイントは、優秀な経営陣が当社グループ傘下で自律的な成長を志向し、 同時にグループが有する技 術力、販売網、購買力、ファイナンス力などのさまざまな要素を 本社主導ではなく主体的に取り入れ、多様な専門 知識が積み上がることでシナジーを生み、 またさらに新しいパートナー会社を迎え入れることができる点です。 そして、塗料・周辺 事業という分かりやすい成長市場で、かつ高い利益・キャッシュ創出力を有する市場に特化 する ことで、M&A に伴う PMIPost Merger Integration)リスクを極力抑えながら、 加速的な成長を実現するこ とが可能なモデルとなっています。」

 

大変わかりやすくかつ説得力のある説明だと思います。これ以上の補足は必要ないと思いますが、特に後半のPMIリスクを極力回避するという点に共感します。私は塗料は基本的に地産地消であると考えています。一般にはM&Aが行われると本社主導で、スケールメリットの追及が始まりますが、塗料が多品種少量生産であること、個々の会社がそれまで培ってきたブランドを有していることなどそれを妨げる要素も多く、必ずしも期待した効果が得られない場合も多くあります。本社による中央集権的なコントロールではなく、個々の構成要素である各社の主体性に任せ、シナジー効果を目指すという考え方に無理がなく良いと思います。先代の田中社長が提唱していた「クモの巣型」経営の考え方を受け継いでいると感じました。

この「アセット・アセンブラー」は、個々の構成要因である各社に対する信頼と各社の十分な理解がないと絵に描いた餅になりかねませんが、そこは1枚目のスライドで説明されているように、十分に調査した上でMAを行ってきたとの自信があるのでしょう。

興味をひかれた二つ目の点は中国における建築塗料市場規模です。これに関しては以下のやり取りがありました。下の図をご覧ください。

「自分に会社では中国の建築市場規模は850億元だと考えているが、どう見ているか?」という質問に回答しているもので、直接には回答していませんが、丁寧に答えているので、その数字を使って計算した結果をご紹介します。

回答内容に市場規模を計算するに十分な情報がありましたので計算してみました。結果はDIYが約7000億円、Project14000億円となりました。合計で21000億円です。これを2021年の年平均為替レートで換算すると1225億元となり、質問者の数字よりは大きくなりました。

一方で、中国の塗料生産については、この図の左下に記載したように中国塗料工業会の統計があり、2017年で生産数量2000万トン、金額4172億元というのがあります。しかしこれはいかにも過大に思われます。信頼度の高い統計数値として、2020年の統計として世界全体で1520億ドル(約17兆円:1ドル=110円)という数字があります。ここでアジアパシフィックのしめる割合は45%ですから、アジアパシフィック全体で7兆円強となります。これに比べると中国塗料工業会の2017年の4172億元という数値、日本円に換算して7兆円弱というのはいかにも大きすぎる感じがします。

話が横道にそれましたが、今回の回答から出された数字はその点妥当な感じがしました。新築が補修の2倍もある建築市場・・日本からみると羨ましい気がします。

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