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かんとこうブログ

2023.03.03

MOCAについて

昨日、全国中小企業団体中央会から「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行」について周知するようにとの依頼がありました。この表題からでは何のことかわかりませんが、要するに「MOCA(3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンによる尿路系腫瘍などを職業病リストに追加する」ということなのですが、これでもよくわかりません。つくづく官公庁の文書は読む人に理解してもらおうという意識のかけらもない文章であると思いましたので、今日はこれを民間風にやさしく解説したいと思います。今日の内容はChem-Station 2021年7月5日からそのほとんどを引用しています。(下記接続先)

化学物質MOCAでがん、4人労災 | Chem-Station (ケムステ)

以下引用

そもそもMOCAの由来は、別名をMethylene-bis-ortho-chloroaniline(4,4′-メチレンビス(2-クロロアニリン)の略であり以下のような構造をしています。

用途はポリウレタンの硬化剤と説明されていますが、塗料屋からみるとイソシアネートの硬化剤ではないのかと言いたくなります。OHとイソシアネートの反応に比べ、アミンとイソシアネートの反応は硬化速度が速く、耐酸性、耐水性が向上することから防水材や床材などに利用されるウレタン樹脂の硬化剤に添加されています。MOCAを使用することで弾性をもたせることができるので、研磨パッド、搬送用機械のソリッドタイヤ、除雪車のブレードなどの製造にも使用されています。

今回、MOCAが尿路系腫瘍(膀胱がん)を発症するリスクのため職業病リストに加えられたのは以下の出来事が発端になっています。

ウレタン防水材の原料となる化学物質「MOCA(モカ)」を取り扱い、ぼうこうがんを発症したと申請した男性4人が労災と認定されたことが23日、分かった。支援する全国労働安全衛生センター連絡会議によると、モカを取り扱った労働者がぼうこうがんで労災認定されるのは初めて。 (引用:共同通信6月23日)

MOCAの安全性については古くから議論があり、1976年に特定化学物質障害予防規則(特化物)の特定第2類物質 特別管理物質に登録、1991年にはTLV-TWA 0.01ppm, 1993年には許容濃度0.005ppmと設定され、経皮吸収による健康障害が明確に判明しています。2010年にはIARCによってグループ1(ヒトに対して発がん性がある)と設定されました。古くからMOCAの危険性が指摘されていたにもかかわらず、今、初めて労災認定がなされた理由ですが、その一つに非常に長い潜伏期間が挙げられ、近年になって労災が疑われる例が報告され始めているからだと推測されます。実際認定された4名の方は、ばく露開始から膀胱がん発症まで20年から45年までかかっています。

防水材や床材の場合、イソシアネートとMOCAを混ぜて塗布して硬化させるため、製造現場だけでなく建築現場の作業員の方が被曝する可能性も高く、適切な保護具を使用して作業することが必須となります。

膀胱がん発症のメカニズムですが、オルト-トルイジンといった芳香族アミンと同様に、肝臓で代謝酵素により酸化されてヒドロキシルアミンとなり、それが膀胱内の酵素により活性化され DNA付加体を形成し、発がんを誘導すると考えられています。(下図)

芳香族アミンがDNAに付加されるまでの反応機構(引用:ケムステ過去記事

引用終わり

今回MOCAによる膀胱がんが職業病リストに追加されたことで労災補償の対象となり、MOCAの製造・取り扱い業務が健康管理手帳の交付対象に追加されました。詳しくは厚生労働省からのパンフレット(下記)をご覧ください。

厚生労働省のMOCAに関するパンフレット

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