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かんとこうブログ

2023.06.23

現在の塗料出荷数量はコロナ前と比べてどんなレベルなのか?

昨日、日塗工の業況観測アンケートの重要分野別出荷金額の前年同月比の推移から解析し、販売金額としてはコロナ前の水準に戻っているのではないかと書きました。一方で、出荷数量が減少の一途でありコロナ前から見てどの程度まで落ち込んでいるのか心配であるとも書きました。今日は、経産省の確報の数値(過年度分は年報の修正値)を使ってコロナ前の2018年にくらべて、出荷数量、出荷金額がどう推移してきたのかをご紹介したいと思います。個々の数値はすでに発表されたものばかりですが、ある一点にスポットをあてて解析するとより具体的にイメージがつかめるように思います。

それでは出荷数量と出荷金額が2018年以降どう推移したのかを物語る最初のグラフです。

月別の出荷数量、出荷金額とも月ごとにかなり変動します。多いのが3月、7月、10月、逆に少ないのが12月、1月、5月、8月あたりです。3月は決算月、少い月は稼働日数の関係と推測されます。であるので、一律に平均をとるよりもそのままの数値でご覧いただければと思い、このようなグラフにしました。

10月は多い月と書きましたが、よく見ると赤線で示した2019年だけは、10月は少なく9月が多くなっています。消費増税の影響がこんなところにも表れています。

実はこのグラフは日塗工会員にはほぼ同じものが配付されています。が、あまりしげしげと全体を眺めた方は少ないのではないでしょうか?仔細に眺めれば、各年の多寡はすぐにわかります。

数量のグラフでは、上位の2か年は2018年と2019年すなわちコロナ前です。2019年は10月以降消費税増税のために落ち込んでいますが、それでも2020年以降よりは高い水準です。緑線の2020年はコロナ禍1年目であり、最も需要が落ち込んみました。次の2021年はかなり回復し、このまま回復が続けば翌年にはコロナ前に戻れるかと期待されたのですが、そうはならず、逆に翌2022年は2021年を下回ってしまいました。そして2023年は今のところその2022よりも少ない数量で推移しています。

一方金額は数量とは異なった推移を示しています。2018年から2021年までの関係は数量と同様であり、2020年は、2018年、2019年の水準から大きく落ち込み、2021年にかなりの回復を見せました。しかし違うのはここからで、2022年は2021年を上回り、2023年は2022年を上回まわっています。数量は落ち込んでいるのに金額があがるということは、単価が上がったことにほかならず、その原因が2021年頃から始まった原材料の高騰であることは周知のとおりです。

上のグラフからは、現在の出荷金額がコロナ禍前までに回復する一方で、数量が全体的には減少し続けていることが読みとれますが、各年の平均値を2018年=100とした指数で表すとより明確にイメージできます。(下図)

つまり2018年を100とすると2023年は、数量が85.6、金額が105.0となります。2023年は、まだ1-4月のデータしかありませんので正確な比較にはなりませんが、数量と金額がかなり乖離していることは明白です。

ここまでの出荷数量と出荷金額の数値は同業者向けの数字を含んでいます。念のために同業者向けを除いた純出荷について、確認しておきたいと思います。

純出荷数量の傾向は、先にご紹介した出荷数量と同じでした。指数値も極めて似通っています。

最後にこの純出荷について月ごとの指数値をグラフ化したものを示します。図中数字は黒字が2022年、青字が2023年です。1~4月までは2023年の数値があります。

2020年の落ち込みが大きかった3月~8月までは、2020年が大きな谷を形成していますが、それ以外は継続的な減少と言ってもよいのではないかと思います。すなわち数量はコロナ禍から回復していないというよりもコロナ禍を経由してなお減少し続けているとみるべきかもしれません。この背景にあるものの一つの要因は環境問題であるのは間違いありません。Scope3まで含めた削減を考えた時に、CO2の排出やエネルギーの削減以外に塗着効率の向上も大きな課題となるはずであり、すでにそうした試みが始まっているのかもしれません。

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