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かんとこうブログ

2023.09.18

ブダペスト世界陸上の裏話

2023ブダペスト世界陸上競技選手権大会は先月終了しましたが、終了後に女子やり投げで金メダルを獲得した北口選手が明かした競技前のスパイクシューズの検査における日本選手への不当な扱いが物議をかもしています。このスパイクチェックの真相と日本のお家芸ともいわれていた競歩が期待したほどの成績を上げられなかった理由について報じた週刊新潮9月14日号の記事が、ネットに掲載(下記URL)されていました。大変興味深い内容でしたのでご紹介したいと思います。

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/09101059/?all=1 

スパイクチェックの事のはじまりは、なんと競技場のトラックとフィールド競技の助走路に使用されている表面材質であるということです。日本陸連の強化委員長である山崎一彦氏の話として紹介されています。

陸上競技場のトラック部分は。もはや土ではなく合成ゴム材質が使用されています。もともとは雨によるぬかるみなどの不都合を回避するためのものでしたが、適度な弾力があり、反発をうまく利用することで好記録がでやすいこともあり、世界の主要競技会ではすべてこのタイプのトラックが使用されるようになりました。

今回のトラック材質は世界陸連のスポンサーでもあるモンド社のものでしたが、傷つきやすい欠点があり、同社からスパイクシューズに装着してあるピンについての制限条件がつけられていました。そこで日本選手が履いていたスパイクの中でミズノが採用していた2段平行ピンが競技前検査でひっかかり、異なるピンへの変更を命じられました。しかし、用意されたピンは、やり投げ選手用のスパイクには短すぎるために、不利な条件で競技せざるを得ない選手が出てしまった。これが北口選手が指摘した「日本人への不当差別」の真相です。

ここで少し陸上競技のスパイクシューズに使用されるピンについて下図で説明します。スパイクシューズのピンには多くの形状があります。今回問題となって変更を命じられた二段平行ピンは上段の左から2番目のものです。山崎委員長の話では「今回はニードルピンという先とがったピンが使えなくなった」ということなのですが、果たして下図のピンそれぞれの使用可否はわかりません。文脈で言えば「みたことがない」からダメとされたようにも思われます。

また長さについては、長距離が一番短く、短距離とフィールド用が長いとされていますが、規則上長さは9mm以下で、例外として走り高跳び、やり投げは12mmと長いピンの使用が認められています。参考までに書くと、他の投擲競技はスパイクを使用しません。また走り高跳びは踏み切る際にそれまで助走で蓄えた水平方向のスピードを垂直上方へ変換しないといけませんので、やり投げと同様に強く踏ん張る必要があるため、こうした長いピンの使用が認められているものと思われます。

因みにエネルギーリターン(どのくらい反発がうけられるか)については、クリスマスツリー(改)>ニードルピン>平行ピン=クリスマスツリー>とんがりピンであるとの研究結果があるそうです。

それではこうした今回の競技前検査に関しては、どのように対応すべきだったのでしょうか?同じく山崎委員長の話です。

日本陸連はこうした不当とも思われるピンの変更について抗議したようですが、謝罪はあっても救済はなかったようです。結論としては、検査の場面には選手本人しか立ち会えず、抗議は選手本人がやるしかないということのようです。そのためには、今回の検査でもうまく対応できた北口選手の例をみても、一にも二にも海外での国際的な競技会に参加して経験を積むことではないでしょうか?

話は変わって競歩の話です。同じデイリー新潮に今回の日本の競歩陣の不振について意外な理由が紹介されていました。それは「厚底シューズ」だというのです。マラソンなど走る方のロードレースではもはや当たり前になっている厚底シューズですが、競歩の世界ではまだ一般的ではないそうです。その理由は、ランニングと違い競歩は跳び上がることができないうえに、ひざを曲げてははいけないという規則があります。つまりランニングに比べて厚底シューズのメリットを享受しにくいことに加え、競歩で重要な歩型に乱れが生じやすくなるため採用が見送られたとのことでした。

しかし、今回海外勢は厚底シューズで成功を収めました。その一方で日本は歩型に拘り薄底シューズで臨んだというのです。歩型と調和できる厚底シューズの履きこなしに挑戦すべきとも考えられます。

以上ブダペストの世界選手権に因む話題をふたつお届けしました。

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