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かんとこうブログ

2023.11.08

日本のGDPが世界第4位に転落する理由?!

最近、2023年の日本のGDPがドイツにぬかれて世界第4位に転落するという話を聞きました。いずれそうした日がくるのではないかと思っていましたが、ちょっと早いのではないかとも思いました。そこで今日はこのGDPランキングについて調べたことをご紹介したいと思います。

本日ご紹介するデータは一部を除き全て「世界経済のネタ帳」(下記URL)サイトから引用して作図しました。

https://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html 

   

まず最初に日本とドイツの名目GDPの推移を調べてみました。2023年分はIMFの10月時点の推計値が使われています。下図の左は国全体の、右はひとりあたりの名目GDP(US$)です。

確かに左図において2023年の推計値では、日本とドイツの線が交錯します。一方、ひとりあたりでは、2006には追い抜かれ、超円高だった一部の期間を除きドイツが日本を上回ってきました。ですが、この図なんとなくおかしく思いませんか?日本のGDPってこんなに毎年大きな増減を繰り返してきていたでしょうか?

GDPを国別で比較する場合には必ず名目GDPのUS$換算で比較されているるようです。GDPに名目GDP以外に実質GDPというものもあります。これらがどういうものでどういう関係にあるのか下にまとめてみました。

名目GDPというのは、文字通り国内で生産販売された商品やサービスの付加価値であり、実質GDPとは名目GDPから物価変動の影響を除いたものです。そして物価変動の影響を示す指数がGDPデフレーターと呼ばれるものであり、名目GDP=実質GDP*GDPデフレーターの関係にあります。

これらを国ごとに比較する場合には、通貨を統一する必要があり、通常US$が使用されます。国際比較が名目GDPのUS$換算という形で行われるということは、このランキングには為替と物価変動が影響するということになります。これらの関係をわかりやすくするために、上図の上の枠に名目GDP(US$)をそれぞれの要素に分解した式を書いてみました。上述した通り、名目GDP(US$)の比較には、物価の影響と為替が関与します。さらに言えば単なる為替でよいのかと言う観点から購買力平価(PPP)という中長期的な為替レートも考案され、この購買力平価を用いたGDPの比較も行われています。この場合には、一時的な為替変動の影響を緩和することができるとされています。

円と$、€と$の為替変動を下図に示します(引用元のurlは図の下に示してあります)。為替変動は、GDPそのものの変動よりもはるかにダイナミックであり、ドイツ、日本の両国の名目GDP(US$)の変動のかなりの部分を為替変動が占めているのがわかります。

次に、名目GDPのUS$への換算において為替レートの代わりに購買力平価を使用した場合の比較を下図に示します。為替レート換算の図とは全く異なる図になりました。すなわち、為替レートの代わりに購買力平価を使用すると全体のGDPではまだ日本はドイツに追い抜かれていないことになります。さすがにひとりあたりのGDPでは、2006年に追い抜かれて以来次第に差がついている状況ではありますが、為替レート換算に比べると変化幅が圧倒的に小さいことは明白です。

為替レートが名目GDPの国際比較で大きな影響を与えることはわかりましたが、それでは経済成長率の影響はどうなのでしょうか?これを調べるためまず名目GDPから物価変動の影響を除いた実質GDPの推移を調べてみました。ここでは為替の影響を排除するため、自国通貨での推移を調べました。下図は両国の名目GDP、GDPデフレーター、実質GDPの比較です。

左側がドイツ、右側が日本です。ドイツの場合、この3つのグラフは相似形であり、名目GDP、GDPデフレーター、実質GDPの三者とも基本的に年を追うごとに増加していきます。日本の方はというとまず名目GDPがバブル期以降ほとんど増加していないことがわかります。いわゆる「失われた20年」などと言われている経済成長の停滞です。実質GDPではそれでも緩やかではあるものの増加しており、その傾き(44年間の平均)は、現在の為替レートで換算するとドイツとかなり似通った数字になります。

同様にひとりあたりのGDPについてもグラフにしてみるとほぼ同様な傾向(下図)になりますが、一人あたりに換算する場合には、人口で割りますので、日本の増加率(成長率)はドイツに比べて約2/3程度であり、人口に比率(日本:ドイツ≒1:1.5)の逆数になります。

実質GDPの推移(実質的な経済成長率)については、日本とドイツはこの44年間ほぼ同じ金額で増えてきたということになります。ただし、人口が違いますので、ひとりあたりでみるとドイツは日本の1.5倍程度の成長速度であったわけです。

物価の影響としては、インフレ率を調べてみました。これも結果は明らかであり、この43年間ほぼ一貫してドイツのインフレ率が日本のそれを1-2%上回り続けています。(下図左)

1980年から2023年に至る毎年のインフレ率を掛け合わせていくと、2023年の数値はドイツが1.155,日本が1.058となります。44年間でドイツが15.5%、日本が5.8%であり、いずれも低インフレ率ですが、それでもドイツの方が日本の3倍ほど物価が上昇していることがわかります。(上図右)

以上いろいろな方向から日本とドイツのGDP比較について調べてみました。国としての実質GDP成長率がほぼ同じであるのに、日本が追い抜かれそうになっている背景は、一に為替、二にインフレであると思われます。だからと言ってこれまでの経済政策が正しかったなどと言いたいわけではありません。むしろドイツも世界において経済成長率と言う点では最低のグループのひとつですので、ドイツと同じでよいとは思えません。申し上げたいのは、名目GDP(US$)という数値は、これまで述べてきたように為替やインフレ率の影響を大きく受けます。事実、購買力平価で計算したGDPでは日本はまだ3位を確保しているわけです。従って、そのような数値に一喜一憂せず、本質である実質GDP(自国貨幣)の増加(成長)に傾注すべきであるということです。

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