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かんとこうブログ

2023.11.24

昨年度から一転大増益・・・電力会社の決算内容

先日島根県知事が中国電力に対して、値下げを要求したことがニュースになりました。中国電力の今年度第二四半期の決算が史上最高の黒字であったこと黙っていては下がらないと値下げの直談判を行ったそうです。これを聞くと他の電力会社はどうだったのか気になりますので調べてみました。

下表が第2四半期終了時点(2023年9月末)の決算状況です。

左側が2023年、右側が2022年です。2022年の決算がほぼ全面赤であるのに対し、2023年はほぼ全面黒であり、営業利益率は沖縄電力を除き二桁、純利益率も同様でした。

売上高については、東京電力と四国電力の2社だけが微減となりました(下図)この理由はよくわかりません。今年の猛暑を考えれば昨年から増加していても不思議はないと思いますが、どうして減少したのでしょうか?

冒頭の島根県知事の話に戻れば、確かに中国電力の最終純利益は1230億円であり史上最高とのことですが、果たして昨年上期の営業損失、昨年通期の営業損失と金額で比較した場合にはどうなっているのでしょうか?比較してみました。

左が昨年上期利益額との対比、右側が昨年度通期営業利益額との対比です。青い2023年上期は全く同じものです。

まず気が付くのは、昨年度上期および通期の赤字金額と今年度上期の黒字金額を比較するといずれも今年度黒字金額の方が大きくなっていることです。つまり昨年度1年間の赤字分を今年度半年で取り戻しているということになります。このあたりが島根県知事をして直談判に及ばせた理由かと思われます。

さらに、昨年度上期と通期でそれほど営業赤字金額が変わらなということです。東北電力はかなり差がありますが、他の電力会社はさほど差がありません。ということは昨年度の営業赤字はほとんど上期に記録されているということです。事実火力発電用エネルギー資源の価格は、昨年の上期にピークを記録し、その後下降しています。

ただし、その下降程度はかなり差があり、最も大きく下降したのが石炭で、現時点ではピークの1/3程度まで下がっています。ついで天然ガス(LNG)で、ピーク時の半分程度、原油は最も下降程度が小さく、ピーク時の8割強となっています。

2023上期の営業利益率、純利益率(営業利益、純利益を売上高で割ったもの)は、各電力会社で差がありました。

営業利益率では、高い方から関西電力、中国電力、九州電力、北陸電力の順でした。純利益率では関西電力、中部電力、中国電力、九州電力の順番でした。また中部電力は昨年度でも通期で営業利益は黒字でした。こうした利益率の高低と電源構成の関係について考えてみました。

各電力会社の2022年の電源構成は下図のようになっています。

因果関係がありそうな要因のひとつは原子力です。関西電力、九州電力は原子力の比率がかなりありますので、これが営業利益に貢献している可能性は高いように思われます。次に昨年のピーク時から最も値段が下がった石炭については、比較的規模の小さな電力会社で石炭比率が高い傾向にあります。最も小規模な沖縄電力では今年度も営業赤字となっており、石炭価格下降の恩恵を受けられていないようですが、これは多くの離島を抱えている同社の事情によるものと思われます。沖縄電力以外の石炭比率の高い北陸電力、中国電力、四国電力、北海道電力はまずまずの営業利益率ではないかと思います。

さらにLNGに注目すると、LNG比率に高い会社が2社あります。東京電力と中部電力ですが、片や中部電力は昨年度も通期で黒字であり、今季も比較的高い営業利益率ですが、東京電力は最大手でありながら営業利益率、純利益率とも振るいません。東京電力は原発の賠償費用を特別損失に計上していますが営業利益には影響しませんので、決算短信からだけでは、両社の利益率に差がある理由はわかりませんでした。

各社の利益率に差異が生じている理由まではわかりませんが、電気料金の改訂とエネルギー資源価格下降によって、今年度決算が大増益になっていることは間違いありません。ほとんどの会社が株主への配当は復活させているようですので、一般の利用者への還元を期待したいところです。

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