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かんとこうブログ

2024.01.04

箱根駅伝を巡るもう一つの戦い

今年の箱根駅伝は青山学院大学の大会新記録更新の圧勝で幕を閉じました。駒澤1強と言われた戦前の予想を覆す快走には驚かされましたが、実は箱根駅伝はランニングシューズを巡る激しい戦いの場でもあります。昨年に引き続き今年の出場選手達が使用したシューズについて少しご紹介をしたいと思います。

そもそもこうしたランニングシューズに焦点があてられるようになったのは、ナイキの厚底シューズが登場して以来です。それまではひたすら軽量化を目指してきたロードレース用のシューズにカーボンプレートを使用することで反発力をもたせて革命をもたらし、記録が大幅に向上しました。ナイキに負けじと他のシューズメーカーも追随し、大きなロードレースでは熾烈なシェア争いが繰り広げられているのです。国内においていまや国民的行事とも言える箱根駅伝がロードレースとして最も認知度・注目度が高く、それゆえに広告媒体としての価値も高く、各メーカーは大学とモニター契約を結びシューズの提供をしているようです。

それでは,2024年を含むこの4年間の出場選手が履いたシューズのメーカー別シェアをご覧ください。データの引用元は昨年同様Alpen Groupのサイト(下記URL)からです。

https://media.alpen-group.jp/media/detail/running_240103_01.html

厚底シューズの元祖であるナイキの独擅場だった2021年から見ると、ますます群雄割拠の様相が強まりました。大きくシェアを伸ばしたのはアシックス、プーマ、ミズノでした。アシックスは海外のメーカーだと思われている方も多いかと思いますが、れっきとした日本企業です。今年はアディダスを抜いて2番目のシェアを確保しました。

   

また同サイトには各区間上位者の称したシューズのマーカーと商品名の表が掲載されていましたので、これもご紹介します。

   

   

メーカー別では、やはり最もシェアの高いナイキが区間上位入賞者50%を占めてトップでした。ついでアディダス、アシックスの順でした。全体では2位のシェアを獲得したアシックスですが区間上位入賞者ではアディダスの後塵を拝したようです。続いて同じく区間上位者の商品別の一覧です。

   

   

左表は見慣れない商品名の羅列ですので、これを主要な商品ごとに右表に整理してみました。左表の赤字は未発売の商品です。選手にモニター役を担ってもらう契約の中で、提供をうけた未発売シューズが適していると判断したものと思われます。

  

右表のデータはスペックの差異を明らかにしようと書き始めたのですが、特徴については定性的な表現が多く、数値で比較できるようなものが見当たりませんでしたので、定価を載せています。ここでの注目はアディダスのAdios Pro Evo1です。価格も高額であるばかりでなく、マラソン1回分の履き捨てであることです。実はこのシューズを使用した2選手は、青山学院大学往路優勝の立役者、2区の黒田選手と3区の太田選手でした。この2選手の快走にシューズがどれほど貢献したかはわかりませんが、話題にはなりそうです。

    

ところで、こうしたシューズの底の厚さに関して今年の11月1日からルールが変更されます。と言ってもロード競技についてはこれまで通り「40mm以内」は変わりません。トラックの長距離とフィールドの三段跳だけに許されていた「25mm以内」が他のトラック、フィールド種目と同様「20mm以内」に変更されます。(下記接続先参照)

世界陸連がシューズ規制の新ルール発表 24年秋より靴底の厚さは20mm、ロードは40mmまで | 月陸Online|月刊陸上競技 (rikujyokyogi.co.jp)

   

今年の箱根駅伝は9位までが11時間を切りました。こうした超高速化には厚底シューズが大いに貢献していることは間違いありません。それだけ影響の大きいシューズですので、ルールの範囲内で公平公正に競い合ってほしいものです。

   

(ここからは蛇足です)話は変わりますが、昨夜テレビで2023年の箱根で優勝を逃した青山学院チームが、翌1月4日に開いたミーティングの様子が放送されていました。このミーティングで原監督が伝えたメッセージが印象的でしたのでご紹介します。原監督は、箱根に出場した選手が一言ずつ感想や反省を述べたあとを受けて、去り行く4年生、残る3年生以下に対し以下のように語り掛けました。

   

「今、思うような成績を残せなかった選手が謝ったが、本来そこを走るべきであったのにさまざまな理由で走れなかった選手にも大いに責任を感じてほしい。成績というのは走った選手だけの問題ではなく、ここにいる全員の問題である。

今年優勝できなかったからと言って、じゃあ原監督の直接指導が復活するのか?そんなことは解決にならない。今は初めて優勝した時とは全然違って、目標とする他校は見つからない中でとんでもないプレッシャーを受けるようになった。どうすればいいのか?結局自分で悩んでもがいてこれに打ち勝つ以外に方法はない。自分で打ち破って初めて道が開ける。これを忘れないでこれから1年間優勝めざしてがんばろう。去り行く4年生は自分たちが戦った悩み苦しみを下級生に伝えて行ってほしい。下級生はそれを受けとめて自分で考えてほしい。」という趣旨の話でした。テレビに出すぎとも言われる原監督ですが、この10年間2年続けて優勝を逃したことがない強さの一端はこんなところにもあるかもしれないと思いました。

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