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かんとこうブログ

2024.01.09

川崎大師、くず餅とわらび餅、アミロースとアミロペクチン

1月3日に川崎大師に初詣に行ってきました。例年首都圏の参拝者ランキング3位の名刹でありながら、これまで参拝したことがありませんでした。さすがに毎年三が日に300万人もの人が訪れるだけあり、人の流れはうまくコントロールされていて、川崎大師の駅を降りてから30分ほどでお参りを済ますことができました。川崎大師の名物と言えばくず餅と聞いていた通りたくさんのお店で「久寿餅」を販売していました。ところが中に1軒だけ「わらび餅」を販売している店がありました。くず餅もわらび餅も似たようなものと思っていましたので、気になった調べてみました。くず餅とわらび餅の違いについては、いろいろなサイトで紹介されていますが、ここでは少し科学的な見地からもご紹介をしたいと思います。

くず餅とわらび餅の違いに入る前に川崎大師名物の「久寿餅」のいわれについて、大師様山門前に店を構える住吉のホームぺージから引用してご紹介します。

要すれば、久兵衛さんの納屋で偶然の産物として自然発酵した澱粉ができあがり、それを餅にして川崎大師の山主に献上したところ、久兵衛の「久」と無病長寿の「寿」を組み合わせて「久寿餅」と名付けられたということです。このいわれでもわかるように関東のくず餅は発酵食品なのです。ここで「関東の」と断ったわけは次に説明します。

それでは、いよいよわらび餅とくず餅の違いについての一般的な説明を書きます。DELISH KITCHENさんのサイト(下記接続先)から引用して整理してみました。

葛餅の特徴とは?わらび餅との違いとおすすめレシピをご紹介 | DELISH KITCHEN

わらび餅は山菜のわらびの根からとった澱粉を、くず餅は葛(くず)の根からとった澱粉をそれぞれ原料とするものです。しかしながら、「こうした原料は大変貴重で高価となるため、他の澱粉を混ぜて使用されるケースがほとんどである」と書かれています。わらび餅の場合には、わらびからとった「本わらび粉」に、芋や蓮根などからとった「わらび粉(わらび餅粉)」を混ぜたものが使用されるようです。

くず餅は関東と関西では全く異なっており、関西では葛からとった「本葛粉」に芋やトウモロコシからとった「くず粉」を混ぜたものが使用され、ある意味わらび餅に似ていますが、関東では、小麦粉からグルテンを除き、さらに乳酸発酵させたものが原料として使用されます。この発酵は1年以上の長い時間をかけて行われているようです。

ここまでは、いろいろなサイトに書いてあることですので、さらにもう少し調べてみました。興味を覚えたのは下の情報すなわち、くず餅とわらび餅で「本くず粉」や「本わらび粉」以外に代用として使用される澱粉の種類が異なっているということです。この情報は「本くず粉」を製造している前原製粉のものです。

一般的にくず粉としては甘藷、馬鈴薯、タピオカが使用され、わらび粉としては馬鈴薯は使用されず、甘藷、タピオカが使用されるようです。この違いはどうしてなのか気になります。そこで馬鈴薯澱粉と甘藷澱粉についても調べてみました。

いろいろ書いてありますが、食品の材料として使用する際に最も重要な点は、糊液になった時の挙動のようです。甘藷澱粉の記述には、くずきりやわらび餅への利用は、甘藷澱粉の糊液がゲル化しやすく、それがソフトな弾力や歯切れの良さに繫がると書かれています。一方馬鈴薯澱粉の説明では、糊液粘度、透明度、膨潤度・溶解度が高いことがあげられこれももちもち感につながっているようです。それでは、同じ澱粉でありながら、こうした糊液の性質が異なるのはなぜなのでしょうか?

その秘密は澱粉の分子構造にあります。

澱粉はアミロースとアミロペクチンの2つの混合物です。アミロースとアミロぺクチンはどちらもグルコースが縮合(OHとOHが結合し水が抜けてエーテル結合が形成される)したもので化学式で書くと全く同じになります。違いはアミロースが直線状であるのに対し、アミロアミロペクチンが枝別れしていることです。右図のイメージ図がよく構造の違いを表しています。アミロースは水に溶けますがアミロペクチンは水に溶けません。各種澱粉の性質の違いは、このアミロースとアミロペクチンの水に対する挙動によるところがほとんどです。もちもち感を重視すればアミロースが多い方がよく、弾力や歯切れを重視すればアミロペクチンが多い方がよいということになります。こうしてそれぞれに食品の好適な澱粉が選択されて使用されているものと思われます。

以上が調べてわかったことですが、最後におまけとして船橋屋のくず餅をご紹介したいと思います。この船橋屋のくず餅は食べたことはありませんが、船橋屋の名前は知っていました。なんと毎年17,000人もの大卒就職希望者押し寄せる超人気企業であると話題になっていたからです。今回調べていて船橋屋の名前が出てきて驚きましたが、操業1805年の老舗中の老舗でした(川崎大師の住吉よりも前でした)。船橋屋のサイトからは、このくず餅がいかに優れた発酵食品であるかを理解していただきたくご紹介することにしました。

発酵は、杉や檜の木製の発酵槽で15か月かけて行われるそうで、木製の発酵槽を使用するのは乳酸菌の働きを助けるためであり、使用される乳酸菌が善玉菌ラクトバチルス乳酸菌であるとのことです。和菓子には珍しい優れた発酵食品であるということはあまり認識されていないのではないかと思いましたのでご紹介に加えました。

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