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かんとこうブログ

2024.03.01

欧州のPFAS規制は塗料に波及するのか?

先日テレビのニュースでPFASが水道水に混入して大騒ぎになっているとの報道がありました。発がん性の不安があり、これまで知らずにその水を使用していた住民らは強い不安を訴えていました。このPFASですが、一体どんなもので、どのような用途に使用され、規制はどうなっているのかを調べてみました。実はこのPFASですが、塗料の原材料としても使用されています。今後このPFASは規制をうけて使用できなくなるのかどうかなどもあわせてご紹介していきたいと思います。

現在日本で話題になっているのはいくつかの自治体で水道水の中に、PFASの中でも有害性の高い、PFOS,PFOAが規制値を上回って検出されたというものです。このあたりの事情を横浜市水道局のサイトから引用して説明いたします。

PFASとはペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物のことであり、炭素に水素の代わりにフッ素が結合した化合物の総称です。10000種類以上の物質がこのPFASに該当しますが、有害性の高い代表としては、PFOS,PFOA(下図参照)が挙げられます。有害性が高いというのは、環境中で分解されにくく、生体内に蓄積されやすいという性質によるものです。

こうしたフッ素化合物がその特徴的な性質から、非常に幅広い分野で使用されていますが、水道に混入したとされるのは、泡消火器の保有や使用、こうしたフッ素化合物の製造・使用・廃棄などの実績がある場所に由来するものと考えられているようです。

こうしたことを受けて、令和2年から水道水について有害性の高いPFOSとPFOAの合算で50ng/l以下という基準値が設けられました。ngとはナノグラムで10のマイナス9乗分の一にあたり、1ng/lはppt(parts per trillion)とも表記されます。極めて薄い濃度ですが、この数値は体重50Kgの人が一日あたり2リットルの水を一生飲み続けても健康に被害を及ぼさない数値とされています。

今後各地で調査が進み、汚染源の特定がなされるとまた規制が変更になる可能性もありますが、今のところPFASに関してこれ以上の規制が行われていません。

ところでこのPFASですが、実は塗料の原材料としても使用されています。今や防食塗料分野で厳しい腐食環境に置かれる長大構造物の上塗りはほとんどフッ素樹脂塗料が使われるようになりました。一例をあげると1993年に使用が開始されたレインボーブリッジです。このレインボーブリッジは30年を経過した現在に至るまで。まだ1回も全面補修塗装が実施されていません。東京オリンピック前に部分的な補修塗装がなされただけの状態で現在に至っています。とにかく防食分野では、抜群の耐候性実績を誇るエース中のエースなのです。

ここで使用されているフッ素樹脂は下図(旭硝子のホームページから引用)のような構造を持ちポリマー鎖がフッ素で覆われます。炭素-フッ素結合は結合エネルギーが高く極めて安定であり、長期間の紫外線や風雨に暴露されても容易に分解しません。フッ素樹脂塗料はその実力が認められて、重防食塗料のISO規格の塗装使用でも指定上塗り塗料のひとつになりました。

ところが、環境先進地域である欧州で、このPKAFに対する規制が始まろうとしています。

欧州のPFASに対する規制の特徴は何と言ってもその対象がPFAS全体となっている点です。規制の対象に関する記述を英文と和文の両方で示します。

通常規制はそれぞれの物質の特徴に応じて対象とするかどうかが判断されますが、このPFASに関しては、一網打尽でひとつでもペロフルオロカーボン(完全にフッ素化された炭素:-CF3、-CF2-)があれば規制の対象にするというものです。さきほどご紹介したふっ素樹脂も、赤丸で示した部分にペロフロオロメチレンがありますので、完全に対象となります。規制の内容もまた厳しいものです。

第1項、第2項の意味は、基本的には製造も使用もできなくなるということです。混入が許される濃度は通常の不純物以下であり、これをクリヤーするためには、PFASをあらゆる製品から徹底的に排除する必要があります。医薬品などの一部には適用除外も、猶予期間の延長も盛り込まれていますが、特別な一部のものを除き使用できなくなります。フッ素樹脂は残念ながら、適用除外にも猶予期間延長にも指定されていません。

この規制の内容については、以下の日本フルオロケミカルプロダクト協議会のサイトに詳しい資料(下記URL)がありますのでご参照ください。

https://cfcpj.jp/webiner-detail_0003.html

    

この規制案は2023年1月に提出され、同年3月から9月までにパブコメが行われました。日本からも900件を超えるパブコメを提出しており、日本塗料工業会もフッ素樹脂に代わるものがないとの主張をしていますが、果たして猶予期間を延長できるかどうかは不透明です。パブコメの審議が終わると法案が確定し、18カ月の準備期間を経て規制が発効となります。

   

以上が欧州の規制(REACH)の現況です。今回の欧州規制は少し強引であるように感じます。穿った見方をすると白色人種のハロゲン嫌いが背景にあるのではとも思いますが、これも時代の趨勢であり、見守るしかありません。ただ、こうした化学物質の規制は、有害性と有用性のバランスで考えるべきものであり、一網打尽で規制することに対しては違和感を感じます。パブコメが認められることを祈ります。

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