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かんとこうブログ

2024.05.24

実質賃金の前年同月比24カ月連続マイナスとはどういうことなのか? その2

昨日は名目賃金も実質賃金も2000年を100とした時には大きく下がっていることを明らかにしました。しかしこうしたグラフはあまりメディアに登場してきません。ネットで探すと基準年を2000年ではなく、1990年としているケースが多くなっていることがわかりました。下図は内閣府の資料で2020年の一人あたりの名目賃金(左)と実質賃金(右)を主要国と比較したものです。名目賃金、実質賃金ともおおよそ横ばいとあります。確かに2020年の指数値では100をわずかに超えています。しかし言うまでもなくこのグラフの最も重要な点は、日本以外は1990年以降大きく経済を成長させ、名目賃金では約2倍に、実質賃金でも約1.5倍になっているということです。

さらに長期にわたる実際の支給金額のデータもありました。独立行政法人労働政策調査・研修機構の図です。

この図から1990年、2000年、2023年の給与支給額がわかります。総じて言えば、2000年の支給額≧2023年の支給額≧1990年の支給額となります。つまり1990年、2000年、2023年の中では2000年が一番高いので、これを規準にとると最も現在の賃金が下がって見えるということになります。また、バブル絶頂期の1990年の給与水準は必ずしも最高値ではなく、支給額のピークは1997年頃となっています。

さて実際の支給額の推移はわかりました。つまり名目賃金の推移は理解できたということです、では実質賃金はこの名目賃金からどのような要因で変動するのでしょうか?もちろんこの差は物価変動に由来していますが、物価変動はどうして起きているのでしょうか?まず考えられるのは為替です。2000年以降の名目賃金と実質賃金の差と為替レートの関係を調べてみました。

一番上がすべての月の名目賃金と実質賃金の差、すなわち物価変動指数、上から2番目がそこからボーナス支給月6月7月12月を除いたもの、一番下が100円をドルに換算した数値です。数値が小さいほど円安ですが、円安になると実質賃金が下がる(実施賃金-名目賃金のグラフが下の方へ移動する)傾向にあります。

しかしこうした実質気賃金の変動要因は為替だけではありません、労働時間の変化も無視できないとしている人もいます。

これも独立行政法人労働政策調査・研修機構のサイトからお借りました。年間の労働時間は1990年以降、急激に減少しています。これは働き方改革というよりも非正規雇用の増加によるところが大きいいと思われますが、2022年の年間労働時間は、従業員30人以上の事業所で1990年の83%、2000年の92%、従業員5人以上の事業所では1990年の79%、2000年の88%となります。労働時間が短くなったことを考慮すれば単位時間当たりの対価で考えた時の賃金は、決して低くなったわけではないという主張がされています。しかしその論理には、生産性の向上という要素が含まれていません。通常、生産性は時代とともに向上していかなくてはなりません。生産性が向上するという前提においては、労働時間が減っているので支給される賃金も減ってもよいという考え方には必ずしもならないはずです。実質賃金の減少を労働時間短縮に原因を求めるような考え方をしている限り、国のGDPを他国なみに成長させるのは難しいでしょう。

先般、円安の影響を論じた際にも交易条件という概念が現状の理解に必要だということになりました。交易条件とは輸入品の物価指数と輸出品の物価指数の比であり、輸入品のコストアップを輸出品のコストアップに転嫁できていないことが問題だとされていました。これは交易だけでなく、国内の商売においても起きていることであり、それが実質賃金指数が連続でマイナスであることの最大要因ではないかと考えられます。

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