かんとこうブログ
2026.07.28
とらぬ狸の試算・・AXALTAの行方
7月13日の日本ペイントホールディングスのホームページに「本日の一部報道について」という記事が載っていました。内容は、その前日ブルームバーグが報道した「AKZONOBEL社を買収した」という内容が誤りであることを述べたもので、「総額75億€で買収を提案しているものの具体的に決定した事項はないという」ことでした。
これに先立つ5月27日には、その買収提案を提案したが、AKZONOBEL社が受諾しなかったとし、提案の内容が紹介されています。その内容は日本ペイントホールディングスは米国のシャーウイン・ウイリアムズ社と共に買収の共同提案を行い、AKZONOBEL社のDeco事業(建築用および工業用塗料事業)を日本ペイントホールディングスが、Coatings事業(防食用、船舶用、航空宇宙用、自動車補修用、粉体塗料事業)をシャーウイン・ウイリアムズが取得するというものです。狙いとしてはそれぞれの事業ポートフォリオの強化に合致するとしています。

しかし、6月3日には、早くもこの取り組みを終了すると発表しましたので、AKZONOBEL社は昨年11月に発表した通りにAXALTAとの株式交換による統合を進めていくと考えられます。今日はこの買収・統合について、関係する会社の売上がどのようになるのか、2025年度の売上を使って計算してみたいと思います。が、その前にAKZONOBEL社とAXALTA社(正式名称はAxalta Coating Systems)の概要についてご紹介します。
AKZONOBEL社の2025年度の売上は101億5800万€(同社の発表数字:1兆9120億円:€=188.33円(昨年末のレート))であり、Deco事業が4割、Coatings事業が6割の比率になります。2025年は通年の売上、調整後のEBITDAとも前年を下回りました。

AKZONOBEL社は、代表的なブランド名でもあるSikkens社の創立が起源とされているオランダの塗料会社です。かつては総合化学メーカーでしたが、多くの部門を売却し今では塗料を中心とした会社になりました。1994年にノルウエーのNobel Industriesと合併し、AKZONOBELとなりました。この時のNobel Industriesの塗料会社であったCasco Nobelは当時の世界のTOP10に入るほどの大きな会社でしたが、このCasco Nobelも多くの会社を買収して大きくなった会社でした。その後2008年には、かつて世界一の塗料会社であったICIを買収し、一躍世界のTOP3に入りました。ICIは1997年に船舶用塗料では世界一のInternational Marine Paintを買収するなどしてAKZOにほぼ匹敵する売上がありましたので、AKZONOBELの売上は一挙にほぼ倍増となりました。ただし、その後は大きな買収案件はなく売り上げも伸び悩んでおり、2014年にPPGに、2017年にSherwin Williamsに抜かれた上に、両社に大きく水を開けられる結果となっていました。今回のAXALTAとの合併は乾坤一滴の勝負手であったと思われます。(下図参照)

さてもう一方の当事者であるAXALTAですが、こちらは建築用や防食用塗料を販売していないユニークな会社です。会社の起源としてはドイツのHerberts社となっていますが、この会社はヘキストグループの塗料部門であった会社であり、デュポンの塗料部門によって買収されました。しばらくDupont Performance Coatingsという社名となっていましたが、2013年にカーライルグループに買収され現在のAxalta Coating Sysytemsという社名になりました。
主軸は自動車補修で、全体の4割を占めています。続いて工業用が1/4を占めており、残りが自動車用(OEM)で全体の1/3強です。このような需要構成の会社は極めて珍しいと思います。地域的には北米とEMEAが1/3強でアジアが18%、中南米が12%という構成です。欧米市場に特化した会社とも言えます。

さて、前置きが大変長くなりましたが、ここからタイトルに書いた「たらればの試算」をしてみたいと思います。試算は二通りです。一番目がAKZONOBELとAXALTAが一緒になった場合、二番目が日本ペイントホールディングスとSherwin Williamsが共同で提案した通りになった場合です。AKZONOBELは前述のようにDECO事業が4割、Coatings事業が6割の会社ですので、それぞれの日本ペイントホールディングスとSherwin Williamsに割り振って2025年の決算表を使用して計算してみました。その結果は下表のとおりです。

AKZONOBELとAXALTAが統合されれば、統合された会社の売上はPPGを上回り世界2位となります。とりわけ自動車補修の分野では強大な会社となります。反対にAKZONOBELが買収され分割された場合にはSherwin Williamsのトップは変わりありませんが、日本ペイントホールディングスがPPGを抜き世界2位となります。
実際にCASE1の場合には2026年末をめどに統合するとされていますので、この通りにはならないかもしれませんが、おおよその感じはつかめるのではないかと思います。いずれにせよAKZONOBELとAXALTAの動向しだいで世界のトップ会社の構図が大きく変わることは間違いありません。10年に一度あるかどうかの大きな変化だと思います。
参考までに計算に使用した2025年終了時のトップ4社の決算比較表を下に示します。
