かんとこうブログ
2020.03.11
水谷ペイントさんの「ナノコンポジットW」
昨日は「ハイブリッド塗料」に関して首をかしげざるを得ない例を書きました。今日は反対に模範となるべき優れた例を挙げたいと思います。
水谷ペイントさんの外壁用塗料に「ナノコンポジットW」という製品があります。「ナノコンポジット」と言うのは、ここでは固有名詞として使用されていますが、実は一般名称です。「ナノコンポジット」とは、「樹脂とナノ粒子」「樹脂とナノファイバー」などが、ナノスケールで複合した材料」です。「ハイブリッド」の場合有機物質と無機物質の形態は問いませんが、「ナノコンポジット」の場合、組み合わせの片方は「樹脂」と定義されています。塗料において最も一般的な有機無機複合化は、有機樹脂と無機固形物(フィラー)の形で行われるものと思います。
話を水谷ペイントさんの「ナノコンポジットW」に戻します。この製品は、「超微粒子シリカ」を「アクリルシリコン樹脂」で覆った「ナノコンポジットエマルション」が樹脂として使用されており、このエマルションの大きさが50-60nmと一般のエマルションに比べて大変小さいことも特徴です。無機物質である「シリカ粒子」を、無機成分を含む有機物質である「アクリルシリコン樹脂」で「ナノレベル」で被覆したものであり、上で述べた「ナノコンポジット」の定義にピタリと当てはまります。
この製品は、科学技術振興機構と国立京都工芸繊維大学(木村教授)と水谷ペイントの産学官の連携により生まれたものであり、栄えある井上春成賞を受賞しています。学術的にも認められた製品ということになります。
この製品の開発について共同研究者である京都工芸繊維大学の木村教授(肩書は当時)は次のように述べています。
「シリカ表面を有機の樹脂で被覆するためには、まずナノサイズの界面活性剤をいきわたらせる必要があるのですが、これが非常に難しかった。実験を繰り返した結果、通常より高い温度で重合したとき、一度濁った後にまた透明になるという発見を水谷ペイントさんの技術者が報告しました。~中略~ 界面活性剤は一定の温度以下で効果を発揮するので、こんな高温の重合は常識外れでしたが、これが上手くいきました。まさに逆転の発想と言えます。このとき開発から2年が経過していましたが、開発の山を越えた感じがしました。」
有機のエマルションに顔料としてのシリカを添加しても「ナノコンポジット」にはなりません。有機と無機の複合化による品質向上は、水谷ペイントさんの「ナノコンポジットW」が証明してくれました。さらなる技術開発によって、新しい「ナノコンポジット塗料」や「ハイブリッド塗料」がいろいろな会社から産まれることを期待しています。
本項目は、水谷ペイント株式会社のホームページより情報を引用しています。http://www.toso-nano.com/nanotechnology/index.html