かんとこうブログ
2020.04.27
PCR 検査の陽性率と死亡者数の関連性を日本の都道府県別数で検証する
先週、千葉大学のグループが、PCR陽性率が7%よりも高い国を低い国では、新型コロナウイルス感染症による死亡率が異なり、陽性率の高い国では死亡率が高いという統計解析結果を発表しました。これに呼応して、日本でも東京都のPCR検査の陽性率に連動するように、死亡者が増加してきているという報道がなされました。今日はこの点について、4月24日時点の都道府県別感染者数、PCR検査陽性率、死亡者数をもとに相関を調べてみました。データは厚生労働省のサイトから引用しました。このデータでは、民間で実施されたPCR検査の結果は反映されておらず、クルーズ船(横浜、長崎)のデータも入っていません。また同一人の重複結果も除外されています。
PCR陽性率と死亡者数、PCR陽性率と感染者数の関係を下の図に示します。それぞれ都道府県民100万人あたりの死亡者数、10万人あたりの感染者数を縦軸にとっています。
赤い線が7%のラインですが、少なくとも日本の都道府県別データでは、PCR陽性率と死亡率の間に相関関係はあるとは言えません。むしろ、PCR陽性率と感染率の方が、相関係数が高いという結果でした。また、東京についていえば、PCR検査の陽性率が突出して高いことが印象付けられます。次に、PCR陽性率と感染者の死亡率(感染者中の死亡者数)および感染率と死亡率の相関について下の図に示します。
PCR陽性率と感染者の死亡率は全く相関関係がないという結果でした。また住民数に対する感染率と死亡率の相関もそれほど高くはありませんでした。都道府県別にみたPCR陽性率と感染率、死亡率との関係は、世界の国別の解析でいうところの7%は決して、クリティカルな数字ではありませんでした。
それではPCR陽性率が高いということはどういうことを意味するのでしょうか?ひとつの解釈は、感染が非常に蔓延しているということです。仮に住民の感染率が40%であれば、PCR陽性率が40%であっても不思議はありません。しかしそれは、現在の日本において少し考えづらい仮定です。
次に、そこまで感染率は高くないが、非常に陽性と疑わしい人のみを対象にしてPCR検査が行われているケースが考えられます。すでに肺炎などの症状を起こしている人などに、感染を確認のための検査をすることが中心であるという場合です。この場合には、実際に検出される感染者以上に、無症状、軽症の感染者が多くいることは確実ですし、そうした比較的軽症の感染者を隔離し、場合によっては重症化を防ぐ処置がとられることが遅れ、死亡に至るケースも起こりうることでしょう。千葉大学の解析結果である「PCR検査の陽性率が高いと死亡率が高い」というのは、おそらくそうした非顕在感染者の検出が不十分であるため、適切な医療処置が遅れてしまうケースが多発している理由ではないかと推測します。
都道府県別の死亡者数の検証では、PCR検査の陽性率が高いことが、必ずしも直接の関係があるとは言えない結果でした。しかし、理論的には、PCR陽性率が高い上のいずれのケースにおいても高死亡率につながることは明らかです。やはりPCR検査のサンプル数をあげ、陽性率が低くなるまで検査数を増やすことが望ましいと思われます。