かんとこうブログ
2020.04.21
原油先物が史上初のマイナス価格
今朝のニュースで、米国産のWTI原油の先物価格が史上初のマイナス価格で取引終了と報じられていました。価格がマイナスとは、お金を払うから持って行ってくれと言うことであり、行き場を失った原油を保管するタンクも満杯ということだと解説がありました。
言うまでもなく、原油価格は塗料の製造原価に大きな影響を与えるものであり、その動向は塗料製造業の採算性を左右しかねないほどのインパクトを持っています。今日は、原油価格が塗料の原材料価格に対してどのように波及するかをご紹介したいと思います。データが少し古いのですが、今でもそう変わらないと思っています。
データは2004年から2014年までの間の原油価格の変動に連れて、ナフサ価格、溶剤(キシレン、MIBK、酢酸ブチル)価格、アクリルモノマー(MMA,n-BA)価格、樹脂(アクリル樹脂、アルキド樹脂)価格がどのように変動したかを表したものです。この間、リーマンショックがあり、その前後で原油価格は大きく変動しましたので、価格変動の様子を観察するには適した期間となっています。グラフの縦軸は、原油とナフサは実勢価格、それ以外は2004年を100とした指数で表しています。また比較しやすいように、期間をそろえ、縦軸の設定を全体の変動幅に合わせて規格化しています。それでは、まず、最初は原油とナフサの関係です。
当たり前といえばそれまでですが、この両者はほぼ同じような挙動を示しています。原油価格が変動すれば、僅かなタイムラグでナフサも連動するということです。次に、ナフサ価格と溶剤価格の関係を見ます。
大まかにいえば、これもナフサ価格と溶剤価格は連動しています。しかし、よく見ると溶剤価格については、溶剤の種類によって多少ナフサ価格変動の影響度合いが異なるようです。芳香族単価水素であるキシレンに比べMIBKや酢酸ブチルはナフサ価格変動の影響が度合いが少なくなっています。これは単一溶剤製品になるまでの工程の差と考えられます。次はナフサ価格とアクリルモノマー価格です。
ここまでくると少し様相が違ってきました。ナフサ価格変動の影響がかなり緩和され、変動幅が小さく全体になだらかになってくるのがわかります。最後にナフサ価格と樹脂価格の関係をみます。
ここまでくるとナフサ価格変動の影響は、かなり緩和され随分となだらかな感じを受けます。これもナフサから溶剤やモノマーを作り、さらにそれを用いて樹脂を合成することを考えれば、工程を経るごとにナフサ価格の影響が相対的に小さくなるためと考えれば当然のことだと思われます。
石油関連原材料と一口に言っても、原油価格変動が塗料原材料価格に及ぼす影響は全く同じではありませんでした。データが少し古いので、今でも同じなのか確認の必要があるとは思いますが、なにがしかの参考になればと思い紹介させていただきました。