かんとこうブログ
2020.09.29
二酸化炭素濃度の現状
9月27日の朝日新聞の1面に「温室ガス「ゼロ」中国の野心」という見出しで、中国が2060年までに温室効果ガスの実質的排出量をゼロにする」との目標を打ち出したことを報じていました。世界最大の排出国である中国のこの宣言により、各国の背中を押し、米国の「パリ協定離脱」宣言により停滞していた温暖化対策が動き出す気配があるとされています。
ところで、現在の大気中の二酸化炭素濃度はどのようになっているのでしょうか?気象庁のホームページに簡潔にまとめられたサイトがありましたので、今日はそれを中心に、二酸化炭素濃度の現状についてご紹介します。特にURLを示していないものはすべて下記サイトからの引用です。
https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html
まずは、世界の大気中の二酸化濃度の推移と気温の上昇についてです。
次に緯度ごとの二酸化炭素濃度の分布をみてみましょう。
これも興味深いデータです。手前が南半球、奥が北半球になります。1985年以降すべての年代で、南半球の高緯度地域が最も低く、北半球の高緯度地域が最も高くなっています。これは、やはり人類の活動に伴う排出量が北半球、とりわけ高緯度地域に多いからだと説明されています。つまり、排出量の多い地域の二酸化炭素濃度は他の地域よりも高くなり、それだけ温暖化の影響を受けやすいということになります。次に日本の二酸化炭素濃度を見てみましょう。
日本で正式に二酸化炭素濃度を測定しているのは、岩手県の綾里、東京都の南鳥島、沖縄県の与邦国島の3か所です。これらの地域が選択されている理由は、人間の活動による影響を受けにくいという理由によるものです。ということは大都市では二酸化炭素濃度はこれらの値よりもさらに高いものと思われます。
上の図は3地点の二酸化炭素濃度の推移を表していますが、世界の平均よりも高い値で推移しています。これは先に述べた北半球の高緯度という立地による影響が大きいものと思われます。3地点の中では綾里が最も年間の振れ幅が大きいのですが、これは他の二地点よりも人間の活動の影響を受けやすい場所にあることが理由と思われます。さらに、南鳥島と与那国島を比べると与那国島の方が冬季の上昇度合いが大きくなっています。これは、与那国島では大陸での排出の影響をうけているためと説明されています。また下の図は二酸化炭素濃度増加量を示していますが、平均すれば2-3ppm/年の上昇であり、コンスタントに上昇を続けていることがわかります。
冒頭で世界の排出量のこと書きましたが、現時点での世界各国の排出量はどのようになっているのでしょうか?
少し古いデータですが、左が2017年の世界各国の排出量で、右が排出量上位国の2013-2017の5年間の推移を表しています。日本はロシアについで5番目の排出量であり、人口を考えれば決して少なくない数字となっています。国別では中国が約3割であり、ついでアメリカとなっています。中国のゼロ宣言が出された中で、11月に選出されるアメリカの新大統領の方針が俄然注目されることになります。あと気になるところでは、上位各国は多くが横ばいの中でのインドの突出した増加ぶりです。次に日本の排出源の内訳をみてみます。
最大の排出源は、エネルギー転換部門です。エネルギー転換部門とは石油精製、コークス製造、熱供給、発電等の事業から成っており、この部門での削減には、世界から問題視されている石炭火力をはじめ将来のエネルギー政策が問われるところかと思います。また産業部門においても、ますます省エネルギー、脱炭素の概念が重要となるものと思われます。
ざっと二酸化炭素の現状を概観しました。産業革命以前に比べると現在の濃度は47%も増加しているそうです。地球の歴史の中で最も二酸化炭素濃度の高い大気の中で我々は生活しているとも言われています。業界として、塗料が実現できる二酸化炭素削減を提案していきたいと思います。