かんとこうブログ
2020.12.25
塗料製造業は意外に健闘しているその3・・・製造業全体における立ち位置(後半)
昨日は全製造業種の規模と成長性についてご紹介しました。本日は生産性と給与についてご紹介します。最初にもう一度元データをご紹介します。昨日掲載分と同じ表です。
⑤一人あたり出荷金額は以下のようになります。
昨日述べたように、基本的には出荷金額と付加価値金額は相関していますので、それを一人あたりに換算してもこの両者は似たような傾向にあります。上位にならんでいるのは、石油(石炭)製品、化学工業、飲料・たばこ・飼料、輸送用機械、情報通信機械、鉄鋼、非鉄金属、電子部品デバイスとならびます。
次に⑦平均給与を見てみます。
以上7つの指標について見てきました。なんとなく上位に並ぶ業種はいつも同じような顔ぶれだった印象がないでしょうか?それはかなりあたっています。これら7つの指標が全産業種の平均より上回っていたかどうかという観点で整理をしてみたのが下の表です。
これら7項目すべてで平均を上回ったのは輸送用機械のみでした。やはり自動車産業はどこから見ても優良産業のようです。6項目平均以上という業種はなく、5項目平均以上という業種が、化学工業、石油石炭製品、生産用機械、電子部品・デバイス・電子回路の4業種でした。4項目が平均以上であったのは、食料品、金属製品、はん用機械、電気機械器具の4業種でした。
これらの業種のうちどの項目が平均に達しなかったかは、例えば化学工業は成長率の2項目が、石油石炭製品では、付加価値金額と出荷金額成長率が、生産用機械では一人あたりの出荷/付加価値金額が、というようにそれぞれの業種の特徴に根ざした項目が平均を下まわったようです。
上の表を眺めていると、まず多くの業種が塗料のユーザーであることと、〇が多くついている業種の中でも塗料のユーザーが多いことに気がつきます。
最後に塗料製造業の全製造業における立ち位置を確認してこの項を終わることにします。塗料製造業、化学工業、全製造業の大分類単位の平均について7項目を比較した表を示します。
出荷金額、付加価値金額については、塗料製造業は小分類ですから製造業の大分類単位の平均と比べるとはるかに及びません。これは当たり前のことです。しかしながらそれ以外の5項目は実はすべて全製造業の平均を上回っているのです。前回化学工業の中で比較したときには、化学工業自体が全産業の中では上位にあったので、塗料製造業の健闘ぶりはあまり目立ちませんでしたが、全産業でくらべると、塗料製造業は健闘していると言っていいのではないかと思います。
ただし、手放しに喜ぶにはまだ早いと注釈をつけなければなりません。それは、塗料製造業における付加価値は原油の価格に影響を受けやすいということです。今回対象とした2014年から2018年の4年間はたまたま原油価格が付加価値を増加させるように推移しました。下図はこの4年間における塗料製造業の原料費、付加価値金額の推移です。(2015年は経済センサスのデータが代用されたため除外しました)この4年間、原料費はほとんど増加しておらず、出荷金額の増加に伴い付加価値金額も増加しています。塗料製造業の宿命ともいうべきことではありますが、潜在的に原油価格の変動によって影響を受けやすい業種である点は指摘しておく必要があります。
とは言え、塗料製造業は意外に健闘しているという結論は微動だにしません。もちろん塗料製造業の中にも、いろいろな格差が存在していることも事実ですが、それはそれとして、全製造業の中の立ち位置をそれなりに評価しても良いのではないかと思います。