かんとこうブログ
2020.12.15
日銀短観をどう見るか?
昨日、Go Toトラベルの年末年始一斉一時停止など大きなニュースがありました。これについては、日を改めて書きたいと思っているのですが、今日はその件ではなく、同じく昨日発表された日銀短観について書きます。
朝日新聞の見出しは「大企業の景況感改善 12月短観 コロナ前の水準なお遠く」でした。全国紙の視点ではこのような見出しになるのですが、以前からこのブログで書いているように、この景況感は企業規模で大きく異なっており、わざわざ「大企業の」とつけられると、では中小企業はどうなのかと聞きたくなります。
今回の日銀短観は全国の約 9500 社に対して12 月時点の景況について調査したものです。まずは実際に全規模全業種のDIの推移について見てください。
また中央左の〇をつけた大きな落ち込みはリーマンショックによる経済停滞ですが、今回のコロナ禍とDI値だけで比較するとコロナ禍の落ち込みはリーマンショックよりも小ぶりであることがわかります。もちろん、世界的な感染症の大流行という未曽有の事態であることは間違いないのですが、過去の前例が今回の対応に少しでも参考になればと思っております。
製造業と非製造業の比較では、全般に非製造業のDIの方が値が高くなっています。時系列では、9月時点よりも12月時点の実績が回復しているものの、3月時点の見込みでは、停滞や低下となっています。これまではなんとか回復してきたけれど、感染症拡大による経済の再停滞も懸念されるというところでしょうか?
さらに製造業と非製造業を規模別に見てみます。左のグラフでは、時系列の動向がより分かりやすい並びになっており、上で説明したように9月から12月へは回復傾向にあること、12月から3月へはほぼ停滞であることが見て取れます。
右のグラフでは、製造業と非製造業の対比がわかりやすい図になっており、製造業の方が、より深刻な景況感にあることがわかります。経済支援策と言えば、もっぱら旅行や飲食業の話ばかりが取り上げられていますが、実勢の景況感は製造業の方が悪いのです。各業種の景況感を次に示します。
業種別の現況の理解を深めるため、2008-2009 年のリーマンショックの際の動向と今回のコロナ禍の動向を比較しています。全業種までは掲載できませんでしたので、比較的塗料に関連の深い、または、身近な業種について起点前後の中小企業の業種別 DI 値の推移を図で示します。(あくまで中小企業中心の見方です。)起点は、リーマンショックは 2008 年 9 月調査結果を、コロナ禍は 2019 年12 月調査結果をとりました。横軸は起点からの経過月数です。コロナ禍の 15 か月後の値は今回調査における見込み(先行き)値です。グラフの縦軸はすべて同じにしてあります。
赤線がリーマンショック時、青線が今回のコロナ禍です。全般に似たような形状の推移を辿っていますが、全般的には今までのところはリーマン時のDIの方が悪い数値になっています。業種として大きな打撃をうけたのは、鉄鋼、非鉄金属、金属製品の金属関係、自動車ですが、自動車は回復が早くすでにほぼゼロに達しています。造船・重機はコロナ禍の方がDIの値が悪く、かつ回復傾向が見えません。次に非製造業を見てみます。
ここでも全般的には推移曲線の形状は、リーマン時とコロナ禍では似ているケースが多いのですが、宿泊・飲食はさすがにコロナ禍の落ち込みの方が大きくなっています。ただしここへきて回復していますが、これはGo Toキャンペーンの効果であると解説されていました。
業種別にみると、12月時点の実績値、3月時点の見込み値でみて、DI値が-40以下である業種は、ここに挙げた業種の中では宿泊・飲食のみとなりました。-20以下でみると、木材・木製品、鉄鋼、金属製品、造船・重機があります。
最後に塗料と最も関係の深いと思われる5業種のDI推移をもう少し長いスパンでリーマン時と対比した図を示します。
リーマン時においても落ち込みよりも回復の方が長時間を要しています。淡々と比較するとコロナ禍の方がダメージが少ないように見えますが、コロナ禍においては感染の再拡大という大きな不安要素があり、まだまだ予断を許さない状況であることは間違いありません。経済回復か感染防止かではなく、感染防止なくして回復はありません。