かんとこうブログ
2022.02.01
2024年の塗料需要は?日本ペイントHDが提示
日本ペイントホールディングスが、2019-2024の各地域別、需要分野別の需要予測を同社のホームページ上に掲載しました。こうしたデータは通常有料でしか入手できないのですが、同社のホームぺージに記載されているURLを辿っていくと、今回の内容は、もともとアメリカの塗料協会が広報・出版の一環で有料販売している「Market Analysis」つまり市場分析レポートを日本ペイントHDが購入し、その内容に自社としての周辺情報を加えて公表しているようだと推測されます。
このアメリカ塗料協会のデータは、ChemQuestという大手の化学品に強いビジネス戦略会社が、日本はじめ各国の塗料工業会から塗料売上についてのデータ提供をうけ、そこに自社で集めた様々な情報を加えてこうした需要予測を含めたパッケージ情報として提供しているデータであり、アメリカ塗料協会が一般向けに販売しているものです。販売金額がUS00なので私どものような弱小組合には手が出ない金額ですので、こうして公表してもらうと大変に助かります。(日本ペイントHDの公表内容は下記URLを参照ください)
https://www.nipponpaint-holdings.com/ir/results/market/region/
せっかく公表していただいたデータなので、本ブログでも紹介させていただくことにします。そのまま切り取って貼り付けるだけでは申し訳ないので、データだけ写し取って、グラフ化は自分でやりました。最初は世界の地域別需要予測です。2013年2019年の実績に2024年の予測と2019-2024年のCAGR(年平均成長率%)が掲載されています。
左は地域別世界シェアの推移です。2013年から2024年で見るとシェアを伸ばしていくのが中国、東南アジアで減らしていくのが欧州、日本、南米、変化なしが北米、アフリカ、オセアニアとなっています。こうした差はCAGRの差によるもので、おおざっぱに言えば4%を超える需要成長が見込まれればシェアが増加、それ以下であれば減少となります。
右下のグラフは、各地域の2019-2024年のCAGRを示していますが、今述べたことが確認できると思います。それにしても日本の成長率のなんと低いことか・・・この問題は後で触れます。
次に需要分野別の売上金額の推移を地域別と同様に見てみましょう。
世界市場において需要分野別では建築用がダントツで不動の首位ですので、左のグラフには入れていません。建築用は、2013-2024年を通して40%強のシェアを誇りほぼ横ばいでした。シェアを伸ばすと思われる分野は、(一般)工業用、防食用、木部用、粉体塗料、その他輸送機器用であり、自動車用、自動車補修用、船舶用、包装用、PCMはシェアを落とすと予測されます。
右下のグラフを見るとそうは言っても、各分野とも増加傾向であることはまちがいなく、世界の塗料使用量そのものが増加するということは揺るぎません。となると、日本の成長率だけが世界に取り残されるように低いというのがどうしても気になります。
日本ペイントHDでは、こうした世界全体の需要の動きとは別に、各地域別の需要動向についても世界とは別に紹介を行っており、当然日本市場の紹介もあります。そこでは塗料需要の推移に加えて塗料の使用先である自動車、住宅、窯業系サイディング、建設機械、工作機械の需要動向データも載せられていました。しかしこうしたデータを見るにつけても日本という国の難しい状況がわかるような感じがしました。それぞれの2013-2020年まで売上推移を示すと以下のようになります。
いずれの業種も最後は下降傾向で終わっています。これは2020年がコロナ禍の最中であったことから仕方ないとは思いますが、問題なのは赤丸を打った極大点の位置です。自動車を除き、各業界とも2019年が極大ではありません。自動車以外は2018年以前が極大となっており、業界の売上高がコロナ禍以前から減少傾向にあったことを示しているのです。これはこれらの業界の特殊事情ではなく、日本のGDPにも共通しています。
日本の実質GDPも2018年が極大で2019年についてはわずかとは言え減少に転じています。これは2019年10月の消費増税が要因となっているものと推定できます。さらに言えばこの日本の実質GDPですが、2013年以降増加傾向にあるように見えますが、この増加の主体は民間支出ではなく政府支出です。今はコロナ禍で見えなくなっていますが、日本経済の病は決して軽くはないと思います。
さて本題に戻って、2019-2024年における日本の塗料需要の成長率は世界の他の地域に比べて著しく低い数値が見こまれていました。これはここまで見てきたように塗料産業だけの問題ではなく、日本全体の問題であることは明白です。とは言え、塗料業界として何もせずに手をこまねいていてよいのか、何かできることを考えるのか、10年先、20年先の展望が問われるところではないかと思います。