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かんとこうブログ

2022.05.24

業況観測アンケートのデータをどう評価するか?

さて、コロナ禍に入りすでに3年目に入りました。2020年における前年同月比はそのまま平年に比べていかに需要が落ち込んだかを示す目安として使えました。翌2021年は前年同月比が必ずしも平年比を意味しないと思われたので、前々年同月比と比べることで平年比を推定しようとしました。ところがこの4月からその前々年同月比も少し怪しくなってきます。というのも20204月は第1波緊急事態宣言が発出され町から人が消えた時期であり、塗料需要が大きく落ち込んだ時期だったからです。従って前々年同月比も平年比を示しているとは思えません。といってさらに遡り3年前の同月比と比べればよいのでしょうか?しかしこれも当面は良いとして10月以降は問題が出てきます。というのも201910月には消費税が10%にあがり、需要が大きく落ち込んだからです。

日塗工の業況観測アンケートにおけるデータの取り扱いが難しいのは、その数値が前年同月比というものしかないからです。つまり需要分野別データがあるのは金額が前年と比べてどのくらいの割合だったかという数値しかなく、実際の生産トン数も販売金額も一切データがありません。あくまで前年同月比というひとつの数値を頼りに、その月の景況感を判断せざるを得ないのです。

何回も書いていますが、平常時であえばそれで事足ります。しかし、コロナ禍のような事象がおきると前年同月比が平年比の目安になり得ないのです。そこで今日は、この前年同月比を使ってどうやったら平年比を推定できるかについて考えたことをご紹介したいと思います。

とにかく使えるデータは業況観測アンケートの販売金額の前年同月比だけです。とりあえず2015年まで遡って数値を一覧表にしました。その上で各年度の前年同月比の平均値と、それを累計していった数値(毎年の平均値を年度が進むごとにかけていった数値)を計算し、グラフにしてみました。後者の場合、具体的には2016年の数値は2015年の前年同月比に2016年の前年同月比を掛けた数値、2017年の数値は、いま計算した2016年の数値に2017年の前年同月比を掛けた数値、というように計算していきます。

左側は、1年間の前年度同月比の平均値を年度ごとにプロットしたものです。一見これはこれで標準になりそうですが、一方で2015年の数値と2021年の数値の間の関係はわかりません。つまりどちらの年度の方が金額が多かったのかをこの図から判断することはできないということです。

右側は年間の平均値をどんどん掛け算していったもので、これであれば2015年と2021年でどちらが金額が多かったかを比べることができます。つまり2021年度の指数と2015年度の指数を比べて金額の多寡を論じることができるのです。そして全般に2021年の指数は2015年の指数よりも低いので、2021年の販売金額は2015年の販売金額には及んでいないと言えますし、実際に2015年の指数は2014年を100としたものですから、2021年の数値が100に及んでいなければ、2014年の販売金額にも及んでいないということになります。

ということで、どうもどんどんかけていった数値でグラフを書いた方が良さそうなので、1月から12月の各月におけるどんどん掛け算をした数値をグラフにしてみました。この操作は結局2014年の各月を100とした指数を計算していることになります。1月から4月までは2015年から2022年までの数値を、5月から12月までは2015年から2021年までの数値をプロットしています。まずはざっとご覧ください。

グラフに書いてみるとあまりに月ごとで大きくことなるこことに驚きます。こうなるには主に二つの理由が考えられます。同じ年の中でも好不況の波があること・・昨年、一昨年の例をみてもその年の前半後半で大きく異なるケースが多いと理解されると思います。二つ目の理由としては基準となっている2014年の各月においても同様に好不況の波があったことです。最初の出発点の高さは全体に影響します。とはいうものの、こうしたグラフを作って比較すれば、現在の状態が過去の経過の中でどのような位置づけにあるのかは窺い知ることができるのではないかと思います。

月別に計算せずとも、毎月の前年同月比を連続して掛けていけばよいのではないかと思われるかもしれませんが、それはできません。なぜなら数値はあくまで前年同月比であり、前月比ではないからです。GDPのように前月比であれば、連続して掛け合わせていった数値が意味を持つのですが・・

話を元に戻して、ということなので当面このやり方(各年の前年同月比を掛けていったグラフで比較する)で前年同期比の数値を吟味してみたいと思います。そこでもう一度4月の前年同月比の推移のグラフをみてみましょう。


この図から20224月に立ち位置は以下のように言えます。自動車用は2020年から2021年にかけてV字回復し、現在は2014年の4月よりも売上は多いと推測できる。程度の差はあれ、電機・機械・金属も同様であり、この2分野に引っ張られ全体も同様の傾向にある。ただし全体の20224月の金額はほぼ2014年なみ。 

一方で船舶・構造物はこの間継続して減少傾向にあり回復の兆しは見えない。木工は2017年に底を打ち上昇傾向にあるが現時点の金額は2014年以下、建築外装も2020年の落ち込みから脱して回復途中であるが金額は2014年以下であると言えます。

 

5月もグラフの形としては4月に似ていますので同様になるのでしょうか?業況観測アンケートにおいて5月の予測は金額で106.7となっています。

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