かんとこうブログ
2022.05.30
日塗工業況観測アンケート調査結果をリーマンショック時と対比してきましたが・・
先日日塗工業況観測アンケート結果の4月分をご紹介した際に、いつもご紹介していたリーマンショック時との対比を掲載しておりませんでしたので、今日は遅ればせながら結果をご紹介したいと思います。もう2年以上にわたり結果を対比してきているので、特別新しい発見があるわけではありません。むしろここらで一区切りつけるために、今日はこれまでの結果を総括して一区切りとしたいと思います。
そもそも日塗工の業況観測アンケートの結果をリーマンショック時と対比してみようと思ったきっかけは、コロナ禍が始まっていらいの需要動向が、過去のさまざまな経済停滞や不況時の動向と対比した時に、最も類似していたのがリーマンショック時の動向だったからです。リーマンショック時の需要動向の特徴を表現するとすれば、直後の1年は大きく前年同期比が落ち込み、2年目は逆に大きく前年同期比が上昇するというところでしょうか?
それでは、リーマンショック時とコロナ禍の各需要分野の動向を対比した図をご覧ください。
一分野ずつ順に見ていくことにします。
建築外装・・これはリーマンショック時もコロナ禍でも、比較的影響を受けなかった分野ですが、よく見るとコロナ禍の方がリーマンショック時よりも影響を受けており、起点(0か月)から12カ月までは前年比がマイナス幅が大、12カ月から24カ月まではプラス幅がそれぞれ大きくなっています。コロナ禍の方がより社会全般に影響を及ぼしているということでしょうか?
自動車・・これは以前に何回もご紹介しているように、コロナ禍ではリーマンショック時よりも早く回復したにもかかわらず、18カ月を経過してから半導体をはじめとする部品不足の影響で再び生産が停滞し塗料需要が低迷したことが大きな相違点です。調査しているすべての需要分野の中で、最も影響度の大きかった分野である点は、リーマンショック時もコロナ禍も共通しています。
船舶・構造物・・この分野は10年単位で見たときに、他の需要分野とは違い、どんどんと需要が低迷している分野であり、上のグラフにおいても唯一前年同月比が一貫してリーマンショック時を下回った分野です。自動車などの工業用途に比べるとアップダウンが小さかったとは言え、長期的な需要低迷は憂慮される状況にあると思われます。
電機・機械・金属・・この分野はリーマンショックに比べて、需要の落ち込みも小さく、かつ回復も早かったと言えます。自動車分野と比較しても影響度は軽微であり回復も順調と思われます。
木工・・この分野もさきほどの電気・機械・金属と同様にリーマンショック時と比べ、需要の落ち込みも経度で、回復も早かったと言えます。ただし、この分野は20年、30年というスパンで見ると最も需要が減少している分野のひとつですので、コロナ禍での影響が比較的軽微であるからと言って安泰という訳ではありません。
最後の全体です。全体を見ると最もリーマンショック時と重なるところが多いように思います。コロナ禍のインパクトは全般的にリーマンショック時よりも軽微ですが、2点特筆すべき点があります。ひとつは起点(0か月)以前の需要低迷で、これは2019年10月の消費税増税によるものです。コロナ禍による需要低迷が本格的に始まる半年前から、需要の落ち込みは始まっていたということです。二つ目は起点から18カ月以降の需要の前年割れです。これは自動車の部品不足による生産落ち込みが原因となっています。
以上各分野別に細かく状況を見てきました。以下のように総括したいと思います。
①コロナ禍における塗料需要動向は、全体的にはリーマンショック時とよく似ており、起点から12カ月までの低迷期とその反動による12カ月から24カ月までの回復期として対称をなしている。(大きく落ち込んだ翌年の前年同月比は極めて高い数値になるが、実際に前年の落ち込みを補うほどに回復していない)
②全般に、リーマンショック時の方が基点から12カ月までの需要の落ち込みは大きく、回復の開始も遅れているが、コロナ禍においては起点前の消費税増税と起点から18か月以降の自動車の生産低迷というマイナス要因による落ち込みが認められる。
③こうした大きな需要低迷とその後の回復については、コロナ禍要因によるものとしてはここまでで一段落と考えられる。ただし、ウクライナ侵攻や新たな変異株の出現などの要因により再び需要動向が影響を受ける可能性は排除できない。
リーマンショックの場合、24カ月経過後も前年同期比が100前後に長期間落ち着くことはありませんでした。今後も同様になると思われますが、それはおそらく別な要因によるものと思われますので、日塗工業況観測アンケート結果に関するリーマンショック時との対比はひとまずこれで終わりにしたいと思います。