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かんとこうブログ

2022.06.20

何のためのデータ開示なのか?・・首相官邸ワクチン接種別歴別新規感染者数

 先月首相官邸ホームページのコロナワクチン特設サイトにあるワクチン接種歴別新規感染者数のデータの問題点について書かせてもらい、それまで不注意なことに大きな問題点に気付かず、そのデータを正しいものとして解析した結果をブログに書いていたことをお詫びしました。

あれから約1か月が経過しましたが、その後も首相官邸ホームページでは、全くそれまでと変わることなくデータを更新し続けていますが、現状ではこのようなデータを開示することの意義が感じられません。以下に更新されているデーについての疑問を書きたいと思います。

何はともあれ首相官邸ホームページのワクチン接種歴別新規感染者数のデータ最新版をご覧ください。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

このデータが問題であるのは赤枠で囲った接種歴不明者の数と統計上の取り扱いです。注釈の赤線部に問題である理由が書いてあります。念のために再度説明しますと、「20224月以前は調査データのワクチン接種歴欄に記入がない場合には、すべて未接種者として扱った。5月以降は未記入の場合には感染歴不明者として扱った」と言うことが書いてあるのです。ここで未記入者が極めて少ないのであれば問題にはならないのですが、実際には感染者全体の20%弱にも達すると推定されることから、未記入者を経歴不明者にするのはともかく、未記入者を未接種者として集計することは全体の結果の解釈に見る人に誤解を与えかねない、いやミスリードすることが必定だからです。また、感染者全体の中で経歴不明者が3割以上いるデータを使うことへの統計としての疑問もあります。具体的に4月以前と5月以降のデータを使って説明したいと思います。

この表は44日から10日までと523日から29日までのそれぞれ1週間の10万人あたりの新規感染者数を表にしています。それぞれの週のデータは、4月以前や5月以降の毎週のデータの中で、「?」で表したワクチンの経歴不明者の割合が極めて標準的なケースです。全体の感染者にしめる経歴不明者の割合は44日からのケースが10%台の後半であるのに対し、523日からのケースでは30%台の前半になっています。そしてこの差がすなわち、ワクチン接種歴が未記入の感染者の割合ということであり、4月以前と5月以降では、経歴不明者の割合が2倍になっているということです。

また、このことは感染者全体の20%弱の人が、実際には未接種かどうかわからないのに未接種者として集計されていたことになります。このことがどれだけ全体の結果に影響を与えるのかシミュレーションしてみました。シミュレーションは、各年代毎に計算した523日からのケースの感染歴不明者割合と44日からの感染歴不明者割合の差を、未記入者の推定%として未接種の感染者数を計算してみました。統計学的には問題があるかもしれませんが、大まかには未記入者を未接種者とすることのインパクトが想像できると思います。結果を示します。

当然ながら4月以前に集計方法では未接種者の数が大幅に増えることになります。これをグラフ化すると印象はもっと顕著に変わります。

左のグラフは523日から29日までのワクチン接種歴別年代別10万人あたりの感染者数です。冒頭に示した表の数字をそのままグラフ化しています。10万人あたりの新規感染者数について未接種者(0回)と2回接種者(2回)を比べると30代から70代の間では交錯し、どちらが多いか傾向がつかみにくい状況です。一方2回接種者と3回接種者(3回)とでは、明らかに3回接種者に方が感染者が少ないと言えそうですが、未接種者と2回目接種者の感染者が交錯している状況で果たしてこれが統計的有意と言えるか疑問が残ります。

一方右のグラフは未接種者数を上述の方法で水増しした場合です。未接種者の感染者数に推定未記入者の感染者数を上乗せして計算しグラフを書いています。上のグラフと異なり未接種と2回接種者の新規感染者数はどの年代でも交錯することなく、2回接種者の感染者は未接種者の感染者よりも少ないと言えそうです。何よりも未接種者の感染者の多さが際立ちます。

言い方を変えると、左が5月以降の集計方法によるグラフであり、右が4月以前の集計方法によるグラフということになります。二つのグラフから導かれる結論はかなり異なるものになることが理解してもらえると思います。

こんな重要な変更を注釈の1行書くだけで済ませてよいのかということもさることながら、新しい集計方法で得られるデータをどう解釈していいのかわかりません。左のグラフ(5月以降の集計方法)では、2回よりも3回の方が感染者が少ないのだから、3回目接種を推奨することの裏付けになると言うのであればそれは間違いだと言わなければなりません。未接種者と2回接種者の感染者がたとえ部分的ども逆転することの説明と統計的な誤差範囲にも言及する必要があるからです。

ワクチン接種以外さしたる感染予防対策を実施してこなかった政府の責任としても、3回目ワクチンの効果についてこうした感染者数のデータをもとに国民が納得できる説明をする義務があります。

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