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かんとこうブログ

2022.08.18

4月-6月のGDP発表に思うこと

 8月15日に内閣府から4-6月のGDPが発表されました。報道各社が報道した内容は「4~6月GDP年率2.2%増、3期連続プラス コロナ前回復」(日経新聞)というようなものが多かったようですが、それはGDP成長率と民間消費の話であってもっと他の要素に関してはほとんど報じられないという印象があります。今日は、ダウンロードした内閣府発表資料を眺めていて気になることを書いてみたいと思います。

最初の気になることは、日本はGDP成長率がこの水準であるが外国はどうなのか?ということです。これについては日興アセットマネジメントのサイトに適当な図がありましたのでこれでご紹介します。じGDP成長率の実数値ではなくIMFの予測値ですが、2023年の予測まで載っています。


https://www.nikkoam.com/market/rakuyomi/2022/vol-1832 

実質GDP成長率の予測値の一覧表です。2022年の年間成長率予測において、日本は1.7%と世界平均3.2%の半分程度で、日本より低いのはドイツ、ロシア、中・東欧くらいしか見当たりません。米国、ユーロ圏からは水をあけられています。また2020年からの推移をみると日本は2020年こそGDP成長率の急落が欧米などより軽微であったものの、2021年以降の回復が進んでいない印象を受けます。

感染の制御と言う点では、世界でもうまくやれている日本ですが、経済を回していくという点では、バブル期以降の低成長時代がそのまま継続しているようです。

低成長時代がそのまま継続と言えば、実はこのGDP速報、官庁の統計資料には珍しく、1994年以降のデータが時系列で提供されていますので、簡単にグラフにすることができます。

このGDPには名目と実質があり、名目が物価上昇を考慮せずにそのまま集計したもの、実質が物価上昇を考慮して修正した数値となっていますが、それ以外に三面等価性といって、生産、分配、支出の3つの側面から切り分けることができます。GDPでよく報道されるのは最後の支出面(図の一番下)についての内訳であり、経済の根幹である民間需要と設備投資の動向が直接数値に現れるからと思われます。


https://www.energia.co.jp/eneso/kankoubutsu/keirepo/pdf/MR1407-2.pdf

さてこの支出ですが、いろいろと内訳が書いてありますが、単純化すると上図右下の黄色い四角の中にかいてある式で表すことができます。すなわち支出面からみたGDPは、消費と投資、政府支出さらには純輸出(輸出-輸入)を足し合わせたものということになります。これを頭においてもらって、28年間のGDPの構成項目の推移を見ていただきましょう。


上からGDP(支出側)、民間最終消費支出、民間設備、政府最終消費支出、純輸出、純受取です。このうち一番上と一番下を除く4つがGDP(支出側)の構成要素です。一応相関係数は低いながら1次の回帰式を求めました。(この式においてxは四半期数の累積)この28年間GDPはどのように成長してきたかというと次のように言うことができようかと思います。

①この28年間、GDPは3.34兆円/年(CAGR 0.68%/年)ずつ成長してきている

②その内訳は民間最終消費支出が1.70兆円/年(CAGR 0.64%/年)、民間企業設備が5500億円/年(CAGR 0.85%/年)、政府最終消費支出が1.47兆円/年(CAGR 1.75%/年)、純輸出(輸出-輸入)が5550億円/年となる。(これら4項目の合計とGDP支出側の毎年の増加額に齟齬があるのは、これ以外の項目の存在と近似式の不正確さによるものと考えられる)

数字上はこんな感じになりますが、一方でこのペースでは、28年かけてようやく100兆円増えたにすぎず、いかにも遅い成長と言わざるをえません。こうした数字を見ていて、世界の成長から取り残される日本というイメージが頭に残ります。冒頭、新聞の見出しをご紹介しましたが、はたして本当に「コロナ前回復」しているのかについても、民間最終消費支出のグラフの右端を熟視すると不安に感じます。

そんな中で、少し明るい気持ちになるのは一番下の純受取です。これは、海外から日本に送金されてくる配当金などですが、海外で生じたお金なのでGDPには含まれませんが、GNI(国民総所得)には含まれます。この純受取は年々増加し、いまでは年間20兆円を超えています。

素人が考えても意味のある結論などにはなりませんが、なまじ数字が公表されているがためその意味を考えてしまいました。なにかの参考になれば幸いです。

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