かんとこうブログ
2022.08.10
米企業に有利なCotings worldのランキングの実態
これまで2日間Coatings World誌の2022年(2021年度)世界のランキングをご紹介してきましたが、このランキング、実のところ米企業に有利にできていたことに気が付きました。ポイントは為替です。このランキング、通貨はUS$に換算して順位をつけており、所在地がアメリカ以外の国の場合には当該会計年度の最終日の為替レートでUS$に換算することになっています。このルールはある意味、仕方ないものでこうする以外に比べることができないのですが、ここ11年間の同誌のランキングに掲載されてきたUS$建ての売上金額をグラフ化していくと、すこしおかしなことになっていることに気が付きました。今日はこのことについて書きます。
まず為替レートの推移から見てもらいます。
左上がUS$と€、右上がUS$と円、左下がUS$と人民元、右下がUS$とインドルピーです。こうしてみると2010年から現在に至るまでの為替はほぼ全般にUS$高傾向が続いていると言ってもよいことがわかります。少なくともここに挙げた4つの通貨はドルに対して弱くなっており、売上金額を換US$に換算すると次第に目減りしてきていると思われます。実はこの為替問題に気付く前に、世界の各地域別にランキング入りした企業の2010年~2021年の売上金額の推移をグラフ化していたのですが、アメリカ以外どうもおかしな感じの図になってしまいました。具体的に例をあげて説明しますと・・
下の図はランクインした日本企業の9番目までの11年間の売上金額の推移です。上の段がUS$換算(Coatings World 誌掲載金額)で、中段がその金額を当該会計年度最終日(翌年3月31日)の為替で元の通貨(円)に戻した金額の推移です。下段中央は、当該年度最終日の為替レートです。
中段の3つのグラフは上段と比べて幾分右肩あがり傾向が強くなっています。事実年平均成長率もマイナスの会社はひとつもなくなりました。
なぜならこの間換算に使用された為替レートが下のグラフで示したように、ほぼ一貫して円安方向に推移していっているからです。1$=80円から120円程度になっていますので、この11年で同じ売上金額でも2/3程度になってしまっている計算です。
同じことをヨーロッパとインドの会社についてもやってみました。
いずれも年平均成長率は、現地通貨に戻した場合に大きくなり年平均成長率がマイナスの会社はなくなりました。
それではこうした為替レートの変化の影響をうけないアメリカの会社のこの11年の売上金額はどのように推移しているのでしょうか?
これまで見ていただいたように、やむを得ないとはいえ、US$がどんどん高くなっていくなかでのUS$建て金額でのランキングは、アメリカ企業の順位を押し上げていることは間違いありません。
おそらくCoatings World誌のランキングに載った各社の売上金額を過去に遡ってグラフ化するようなもの好きは、世界をさがしても私以外にはいないと思いますが、このランキングには為替の影響が反映されているということが、頭にいれておく必要があることだけは申し上げておきたいと思います。
だからどうしろということではありません。来年も同様にランキングが行われるでしょうが、冷静に為替のことも頭に入れて考察していきたいと思っています。
※Jotunはノルウエー本社であり通貨が€ではないのですが、€で計算しています。
※※日本ペイントHDの会計年度は、この間で4-3月から1月-12月に変更されていますが、すべて3月31日の為替レートで計算しています。