かんとこうブログ
2022.09.05
コロナ死亡者数世界一の国
久しぶりに世界の感染状況をみようと調べてみましたが、日本は人口100万人あたりの最近7日間の死亡者数で世界一の国になっていました。少し前感染者世界一ということが話題になりましたが、知らない間に日本は感染者数だけではなく、死亡者数も世界一の国になったしまっていたようです。
資料はいつものように札幌医科大学のコロナ特設サイトからの引用です。論より証拠で下のグラフをご覧ください。
過去日間の100万人あたり死者数が15.8人、1週間では日本全体で1800人程度の死者がでています。人口当たりではなく、死者数そのものではアメリカの方が多いのですが、人口100万人あたりの死亡者数では間違いなく世界一という不名誉な位置にいます。優秀な日本の医療スタッフをもってしても死亡者を出さないようにすることは難しいということなのでしょうか?一方で、累積の死者数で見ると日本はまだまだ多い方には属しません。(下図)
つまり日本が死者数世界一というのは、コロナの中でもオミクロン株、特に第7波特有の事情によるものと思われます。何が特異的なのか?それは、第7波による死亡原因が、これまでの重症化=肺炎という経過を経ているのではなく、人工呼吸器使用というこれまでの重症者の定義に当てはまらない人たちの死亡が増加していることと複数メディアで説明されています。具体的には高齢者などで基礎疾患をもつ人たちがそうした基礎疾患を重篤化させて死に至るケースが多いとされています。こうした指摘について、重症者の定義についての疑問をデータとともに見ていきたいと思います。
下のグラフはこのところずっとご紹介してきた療養者数、入院者数などについてのここ4週間の推移です。数値の出典は厚生労働省(下記URL)です。厚労省のサイトでは、週に一度各都道府県別に、療養者数(コロナで発症し療養中の人)、入院者数、重症者病床入院者数とそれぞれの病床使用率が発表されています。
療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
入院者数、重症者病床入院者数とも8月17日がピークで、そこから減少に転じていますが、ここで注目していただきたいのは重症者病床入院者数です。この数は文字通り重症者用の病床に入院している人の数なのですが、これが毎日報道されている重症者数と大きく異なっているのです。重症者用の病床に入院している人数は、最多の8月17日に1928人と報告されています。
一方、上のグラフはNHKのサイト(下記URL)に掲載されている重症者数と死者数の推移です。死者数については毎日の死者数のグラフも併せて載せています。重症者数は最多の8月24日で636人を記録し、8月31日には減少に転じていますが、先ほどの重症者病床入院者数と比べると1000人以上も少ない人数です。
新型コロナウイルス 日本国内の感染者数・死者数・重症者数データ|NHK特設サイト
毎日報道されている重症者の定義はICU収容者と人口呼吸器使用者になっています。つまり肺が重篤な症状になっている人の数ということになります。医療関係者からは、重症者の定義を見直すべきだとの意見が出されているようですが、もっともなことと思われます。つまり本当に重篤な症状の人が600人しかいないのであれば、毎日その半数が死んでいるということになります。いくらなんでもそれは考えにくく、今現在報道されている重症者数は実態を反映していないと推定されます。
ならば、厚労省の入院者数の数値を使えばもっと実態に近い指標になると思われますが、残念ながらこれは毎週水曜日の数値しか発表されていません。全数把握の議論も重要でないとは言いませんが、重症者の定義を見直さないと最も重要な死者数の動向に直結する重症者の推移が正しく把握されない事態が継続することになるのではないかと懸念します。
なぜ、このように重大なことに対し、専門家で構成されるモニタリング会議が政府に意見具申しないのか不思議でなりません。NHKのまとめた死者数のグラフをご覧ください。新規感染者は減少に転じたかもしれませんが、死者数はまだピークにあるように見えます。今からでも遅くありません。重症者の定義を見直すべきです。
追記:これを掲載しようとしていたら、愛知県の大村知事が7月15日に、政府に対し重症者数や死亡者数の定義を見直すよう要請したという記事が見つかりました。ただし、この趣旨は「他の疾患が主な死因でも新型コロナに感染していれば重症者や死亡者数に計上している」ことが問題であるので定義を変更するようにというものでした。他の疾患が直接の死因でもコロナに感染しなければそこまで悪化しなかったと考えられるのであれば、コロナ感染症による死亡者として計上すべきだと私は考えます。それともコロナに感染しなくても死んでいたはずということを医学的に証明できるとでもいうのでしょうか?